作品賞を含む最多7部門を『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が獲得。ここまでの独占ぶりは『スラムドッグ$ミリオネア』か『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』以来ではないか。マルチバース世界を背景にカンフーアクションと哲学的会話劇を混ぜ込み、多次元世界の果てに最後は家族愛で着地するという奇想天外な物語。狂気的なカット割りと編集力を駆使した錯乱の世界感は、米国ならではの多国籍マイノリティの象徴と移民族賛歌にもなっている。石の会話も絶妙のさじ加減で面白く、紆余曲折を経てポジティブに帰結するところも好感度が高い要因か。

後半の “石の会話” も絶妙のさじ加減で面白いし飽きない。紆余曲折を経てポジティブに帰結するところも好感度が高い要因だろう。しかし自分は鑑賞中はリズムに乗りきれなかった悔しさがある。
『スイス・アーミー・マン』が大好きなので、ダニエルズ監督作品として過剰に期待し過ぎたのが反省点。誤解を恐れず極端に比喩すると『クレヨンしんちゃん』っぽいのだ。下品な描写が多いところにも共通点あり。この作品がアカデミー賞なんてあまりにも意外過ぎるというのが正直なところ。パルム・ドールならまだわかるが。

カオスで独創的に過ぎる分、ついていけない鑑賞者が続出することも予想できるのだが、ダニエルズ監督のひとりダニエル・クワン氏がADHD(注意欠如・多動症)だという記事を読んで少しだけ合点がいく。行動制御の規則性が崩壊しているこの映画=主人公イブリンがまさにそうだからだ。その視点が最初からあれば自分はもっと上手にノリきれたかもしれない。考えないで感じるのが『エブエブ』なのだ。

主演女優賞:ミシェル・ヨー(『ポリス・ストーリー3』『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』ボンドガール)、助演男優賞:キー・ホイ・クァンは嬉しい。両者とも役者を1度引退した中国系マレーシア人とベトナム人。キー・ホイ・クァンは『グーニーズ』のアジア系少年、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でハリソン・フォードの相棒を演じたあの小生意気な男の子。まさかこんな大舞台で再会できるとは感泣モノ。アカデミー賞は近年急激に有色人種の受賞が増えて意図的なポリコレ指向も多分に感じるが、ここは素直に祝福したい。
『エブエブ』の圧勝となった今回のアカデミー賞だが、個人的には『イニシェリン島の精霊』『逆転のトライアングル』が無冠に終わったのが残念・・・いや、それより何より『トップガン マーヴェリック』の受賞が音響賞のみだったのが納得いかない。少なくとも撮影賞と編集賞は取って欲しかった。そして歌曲賞『RRR』のナートゥ・ナートゥは会場に来ていたあのふたり(ラーマ&ラーム)に踊ってもらわないとダメだろう。あとはこれから日本公開の『ザ・ホエール』『TAR(ター)』が楽しみ。
■「第95回アカデミー賞」『エブエブ』作品賞ほか最多7冠
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=7334660
米ロサンゼルス・ドルビーシアターで現地時間12日(日本時間13日)、「第95回アカデミー賞」授賞式が開催され、ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワ/『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を受賞した。同映画は、ほかに監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞の7冠を制覇した。
受賞結果は以下のとおり
★作品賞
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★監督賞
ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワ/『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★主演女優賞
ミシェル・ヨー/『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★主演男優賞
ブレンダン・フレイザー
『ザ・ホエール』
★助演男優賞
キー・ホイ・クァン/『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★助演女優賞
ジェイミー・リー・カーティス/『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★長編アニメーション映画賞
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
★国際長編映画賞
『西部戦線異状なし』 製作国:ドイツ
★脚本賞
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
★脚色賞
ウーマン・トーキング 私たちの選択
★撮影賞
『西部戦線異状なし』
★編集賞
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★歌曲賞
★『RRR』対象曲“Naatu Naatu”
★音響賞
『トップガン マーヴェリック』
★美術賞
『西部戦線異状なし』
★衣装デザイン賞
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
★メイク・ヘアスタイリング賞
『ザ・ホエール』
★作曲賞
『西部戦線異状なし』
★視覚効果賞
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
★長編ドキュメンタリー賞
『ナワリヌイ』
★短編ドキュメンタリー賞
『エレファント・ウィスパラー: 聖なる象との絆』
★短編アニメ映画賞
『ぼく モグラ キツネ 馬』
★短編実写映画賞
『アン・アイリッシュ・グッドバイ(原題)』
■『第95回アカデミー賞授賞式 字幕版』
3月13日 後10:00〜WOWOWで放送・配信
番組オフィシャルサイト:
https://www.wowow.co.jp/extra/academy/
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