『JUNK HEAD』(日本)
人類が遺伝子操作で長寿を得た代償として繁殖能力を失った世界。環境破壊で汚染された地上に変わり、地下開発を進めるための労働力として生み出した人工生命体マリガンが、地層処理された核廃棄物で変異し、自らクローンを増やして人類に反乱を始めて1600年が経過。地下3,000mの世界で独自に進化するマリガンの生態調査員に名乗り出たパートンは、専用ポットに乗り込んで地下深くに投下される。だが、落下途中でマリガンの警備員に撃墜され、自我が保てる頭部のみを残して身体を破壊されてしまう。意識のない状態で捕えられたパートンだが、マリガンの科学者ドクター・ルーチーによって新しい身体を与えられる。地上から落ちてきた彼を神様(マリガンの創造主)として崇めるルーチーの一派だったが、意識を戻したパートンは過去の記憶を失っていた。

SFマインドたっぷりの始まり方をするオールストップモーションアニメ『JUNK HEAD』は、1秒あたり24コマの画像で総コマ数14万、1秒撮るのに数時間を要するという気の遠くなるような製作過程を経て製作された。原案,脚本,撮影,編集の全てを堀貴秀監督が兼用し、初期は堀氏ひとりで進行。マペットフィギュアも単独の手作りで、最終的なスタッフでも全4名、製作期間は7年という果てしない経緯を持つ本作。かつて2013年にアップリンク渋谷で1日限定自主上映が行われており、当時は30分の短編だった。その後クラウドファンディングを失敗する一方で、カナダ・ファンタジア国際映画祭入選を皮切りに、ドイツ・オルデンブルク国際映画祭、イギリス・レインダンス映画祭、アメリカ・ファンタスティック映画祭とたて続けに入選。海外の評価から火が付いたムーブメントは協賛、配給獲得の経緯を辿って今回、ようやくの日本メジャー公開に至った。

まず、人形マペットのビジュアルを逆手にとった生物的世界観を取り入れているところが上手い。細やかに流れるストップモーションアニメは、シチュエーションによる演出の強弱も含め、一切の妥協なく挑んでいる作り手側の熱感が伝わる。地下廃墟で繰り広げられる独特の不条理世界は、シュールで残酷で暴力的、常識の通じない弱肉強食と食物連鎖のアングラテイスト。それなのに全体の雰囲気はコミカル色なのが面白い。言語は聞き取り不明の字幕処理。

手作りだからこそのミニチュアワークが、いい意味でのセンスオブワンダーに繋がっている。人類の行く末を皮肉るように描かれる未来像、地下都市カープバールの曖昧な秩序、次々と新手が現れる知性を持たない野獣マリガン等は、一見は行き当たりばったりの展開に見えるが、やがて程なく物語の目指すところに集約していく。主人公の目的となる人類の繁殖能力の回復に必要なマリガンの生態系システムの秘密、そこに関連していることを匂わせるヒロイン(?)の登場、クライマックスのアクション展開でエンタメ的要素もしっかり起伏として盛り込まれる。

特筆して不気味なのが、クノコという食物を採取する人間牧場のような栽培方法描写。クノコは人間(らしき生態物)から生えてくるのだ。だがそんなグロテスクな設定ですら演出的には至ってコミカル。加えてラストではちょっとだけホロっとさせるハートフルな展開も添えられる。

脚本より先に絵コンテから作り始めており、場面を描き出すことで矛盾点や改善点を見出し軌道修正するという製作手順。前記のようにその殆どが堀貴秀監督単独によるものだからこそ出来る手法でもある。パンフレットにあった監督コメントには「重要なのは世界観→キャラクター→ストーリーの順番だが、結果的に映画の面白さを決めるのは逆で、ストーリー→キャラクター→世界観だと思っている。」という言葉がある。散らばっている見せたい絵面要素それぞれのバランス配置こそが監督の手腕なのだが、現場の全てをひとりで切り盛りしていれば、絶妙の匙加減になるのはある意味必然ということなのかも知れない。



現在公開中のアップリンク渋谷の上映では、実際のプロップ展示もほぼ全キャラクターが陳列されており、その独特なディストピアムービーにどっぷり浸ることができる。
その後、口コミで評判が拡がり、大手系列の映画館でも上映が始まった。世紀末感たっぷりのカルトムービーは続編の予定があることを前提に終了するので、物語の完結まで完走することを心から期待したい。でも7年も待てないのでなるべく早く(笑)
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