今日はラッキーゾーンの日ということです。
ラッキーゾーンというのは、野球場でホームランを出やすくするために意図的に外野フィールドの内側に施した柵と、その柵から本来のフェンスの間の空間のことです(上掲写真左)。
野球場の広さというものは、プロが使う野球場でも、サッカーのピッチのように、そのサイズが決まっているわけではないので、広い球場もあれば、狭い球場もあり、したがって、ホームランが出やすい球場もあれば、出にくい球場もあります。
中でも、甲子園はホームランが出にくい球場として有名でした。同球場は両翼が95メートルと短いものの、左中間、右中間のふくらみが中堅と同じ118メートルと極端に深く、それに加えて、ライトからレフトへ吹く独特の浜風によって、とくに左打者にはいわゆるサク越えが難しい球場となっています。そのため、昔は、甲子園で記録されたホームランはランニングホームランの方がサク越えよりも多いとまで云われたほどでした。
なんぼなんでもこれでは野球を楽しめないということで、1947年の今日、設けられたのがラッキーゾーンだったというわけです。
ただ、その後の選手の体力・技術の向上や、ボール等の道具の発達もあって、スタンド入りするホームランも頻繁に見られるようになったので、ラッキーゾーンは1992年のシーズン開始前に撤去されました。
ところが、昨年あたりから、甲子園球場にこのラッキーゾーンを復活させるべきではないかという議論が出てきたようです。
同球場をフランチャイズとする阪神タイガースは、まだラッキーゾーンがあった1985年には、バース、掛布、岡田の強力クリーンアップと1番バッターの真弓を中心に当時のリーグ記録を更新する219本塁打をマークし、日本一に輝きました。圧倒的な猛打で虎ファンを熱狂の渦に巻き込んだわけですが、ラッキーゾーン撤去の影響は顕著でした。
撤去後最初のシーズンとなった92年から昨季までの27年で、チーム本塁打が100本に届かなかったことが16度もあります。シーズン30本塁打以上の生え抜き打者も85年の掛布、岡田を最後に出ておらず、野手のスター誕生には厳しい環境となっていると言えるのです。ラッキーゾーン復活の議論も、そこから出てきたものと思われます。ヤフオクドームのホームランテラス(上掲写真右)のような構想もあると聞きます。
まぁラッキーゾーンのない甲子園球場で開催される高校野球でもホームランが量産されている最近の傾向に照らせば、一見何ともみみっちい話にも見えるかもしれませんが、高校野球ではボールを飛ばしやすい金属バットの使用が許されていることを考えれば、一概にみみっちいとばかりも言ってられません。それに、ラッキーゾーン(テラス)が復活しても、増えるのは阪神タイガースのホームラン数だけでなく、相手チームのそれの方がより増える可能性だってあるわけで、復活の是非は当然そのあたりのことも念頭に置いて議論されることでしょうから、ひとまずその議論に任せておいてよいでしょう。
ただ、もしラッキーゾーンが復活し、それがテラス席の形をとるのであれば、そこには、是非、障碍者用の席も用意してほしいと思います。
もともと、甲子園球場には、“佐野シート”とも言うべき障碍者用の席があったと聞いています。これは、現在、阪神球団の統括スカウトとして活躍されている佐野仙好(さののりよし)さんが始めた、障害者を甲子園に招待する活動に端を発したものです。
佐野氏は、現役時代、阪神一筋で6番バッターとして、あるいは代打の切り札として、ガッツ溢れる非常に勝負強い活躍をされた人ですが(←今のタイガースに一番ほしいタイプ)、77年4月29日の川崎球場での対大洋(現DeNA)戦において、大変な悲劇に見舞われました。守っていたレフトに飛んできた大飛球を追って、これを好捕したもののフェンス(当時はコンクリートがむき出しだった)に激突し、頭蓋骨陥没骨折の重傷を負ってしまったのです。その場で血の泡を吹いて気を失った同氏は、直ちに担架で担ぎ出され、死線をさまよいました。幸い、意識は戻り、復帰に向けた治療、リハビリが始まったのですが、そのときに、心配した身体障害者からもらった手紙に感激したことから、交流が始まり、以来毎年、障害者を甲子園に招待してきたそうです。その篤い志を、今度出来るかもしれないテラス席の形をとったラッキーゾーンにも是非とも承継してほしいと思うのです。
なお、順調に回復した佐野氏は、上記事故から65日後には早くも一軍公式戦に復帰し、その第一打席をホームランで鮮やかに飾りました。そのホームランはレフトのラッキーゾーンに吸い込まれていったということです。
※佐野氏がどんな選手であったかもっと知りたい人は、こちらのサイトをご参照ください→
http://aigawa2007.hatenablog.com/entry/20120620/1340190082
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