細かいことどころか、大筋の物語も含めて整合性を取るつもりの全くない異常な作品だった。後述するが、監督の作家性を考慮すると脚本の粗を指摘するのは馬鹿らしい類の映画でした。
物語は、過去の戦争体験によるPTSDに苦しみながらも、田舎で子育てをしつつ静かに暮らしている主人公が、かつて自分が所属していた部隊から命を狙われる、というのがざっくりした話しです。
まずは、驚愕の近接戦闘シーンに度肝を抜かれました。
特に、町中で一般人々が行き交う中で「ロック」こといしだ壱成と殺し合うシーンは圧巻の一言、他人に気づかれずにサプレッサー付の拳銃やナイフ、ボールペンなどを敵や通りすがりの人間から調達しながら闘うという、かなり特殊なアクションを観られました。
それ以外にも、ゲーム「メタルギアソリッド」のように敵をナイフで殺すシーンや、椿三十郎ばりのナイフによる抜き打ちなどアクションのアイデアは秀逸でした。
しかし、物語は滅茶苦茶で整合性を取ろうとか全く思っていないことがヒシヒシと伝わるようでした。
特にPTSDの描写は驚愕で、精神科医の先生に薬沢山処方してもらって、夜は眠れないとか過去の戦場のフラッシュバックが挿入されるなど、主人公の心の闇を描いている風なのに、先生に対して「(人殺しは)任務ですので感情は無いです。」ときっぱり宣言するあたり、どういう方向に持っていきたいのか全然分からなかった。
実際、北村龍平監督作品っぽい画作りだなとか思っていたら、後で調べてビックリしたのが、主演の坂口拓、監督の下村勇二の両氏共に映画「VERSUS」で北村監督と仕事していたということが分かり、話しうんぬんよりカッコいい画作りで映画を構成する作家性だと納得できました。
どんなにカッコいいアクションを観られても、映画はアクションの連なりで物語を紡ぐため、全体のバランスが悪くて良い映画に見えない。
もう少し分かりやすく言うと、アクションに緩急が無いため、観客が慣れるとどんどん興味を失っていくという問題点に対して目を背けていると思う。
アクション監督としての才能は折り紙付なので、どこかでしっかりとした脚本と人間ドラマに定評のある監督の指揮の元で映画作ってくれないかなとエールを送りたくなる作品でした。
最後に、この映画を観た時になぜか映画「マッドマックス怒りのデスロード」の事が頭をよぎった。
それは、あの映画も全編アクションで引っ張る物語でしたが、派手なカーアクション連発の中、感情の機微を少ない台詞や役者の顔の画一発で観客に感情移入させる手腕などすごかったなと再認識できたためです。
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