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俳諧師:近江不忍コミュの第五囘、莫差特(モオツアルト)  發句による

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 この作品を讀む時に、この音樂を聞きながら鑑賞して下さい。
 これは、莫差特(モオツアルト(Mozart)・1756-1791)の、

『五重奏曲(Quintet)G minor K.516』 

 といふ曲で、YAMAHAの「QY100」で作りました。
 雰圍氣を味はつて戴ければ幸ひですが、ない方が良いといふ讀者は聞かなくても構ひませんので、ご自由にどうぞ。









 莫差特(モオツアルト)の短調の音樂の中でも特に「ト短調」といふ調性は、何か運命的なものを感じさせると多くの人が思つてゐるやうだが、その中で、

 「ト短調五重奏曲(クインテツト)」

は狂氣染みてゐる。
 尋常な人間があのやうに長調と短調を入亂(いりみだ)れて書けるものではない。
 精神が我々凡人と異なつてゐるとしか言ひやうがない。


 數秒もしない内に長調が短調に、短調が長調に轉調してゐる。
 しかも、それが自然にである。
 山に登つて行くと、次第に景色が變つて行くやうなものである。
 それは眺めてゐる人間の氣持など頓着なしに、どんどん風景が變化して、鑑賞者はただ驚く事しか許されないのである。


 莫差特の音楽が他の作曲家と違つてゐる處(ところ)は、その音楽を聽(き)けば自分の意志とは別に、たとへどれ程その音樂を暗記してしまつてゐても、いつも新鮮な驚きに魂を奪はれてしまふといふ事である。
 彼の音楽はさういつた錬金術師のやうな、魔法の産物としか考へられない出來榮えを示してゐる。


 莫差特の音楽が惡魔に魂を賣渡(うりわた)した代償だと聞かされても、信じられさうなぐらゐのものである。
 その爲(ため)かどうか知らないが、彼の子供の頃の肖像畫(せうざうぐわ)などを見ても、どうかしてニヤリと口を開けば、吸血鬼(ドラキユラ)のやうに口が裂けて牙でも出て來さうな、何か惡魔の申し子のやうな顏に見える時がある。

 「ト短調五重奏曲」

 は、布刺謨茲(ブラアムス)や柴可夫斯基(チヤイコフスキイ)の交響曲などの響きに劣らない程の量感がある。
 あれが五つの樂器だけで響いて來る音樂とは思へない。
管絃樂を一齊(いつせい)に鳴らしても、追ひつけるものではない。


 さうして、その音樂は貝多芬(ベエトオベン)が浪漫派の橋渡しをした事など撃破(うちやぶ)つてしまつてゐる。
 その前に、莫差特が浪漫派への橋を架けておいたのである。
 貝多芬はただその橋を一番初めに渡る事が出來たといふ光榮に浴しただけに過ぎない。


 更に、「ト短調五重奏」には難解と言はれる現代音樂をも聞取る事が可能であらう。
 莫差特こそは音樂の化身である。
 しかし、それは彼が三歳の時から受けた音樂の教育が、音樂の錬金術師に到らしめたのである。


 もし假(かり)に、彼が醫學(いがく)の教育を三歳から受けてゐたならば、彼は人命を助ける事にその錬金術を發揮したであらう。
 さうして、彼のその目的は殆ど現代には見失はれてゐる、金を儲ければそれで良いといふやうな事ではなくて、人が助かればそれで良いといふ事ばかりであらう。


 莫差特の目的は音樂を創るといふ事以外には、恐らく何物も目に入らなかつただらう。
 彼は只管(ひたすら)それに命を費やして行く。
 その擧句(あげく)、彼の生涯は音樂よりも謎に包まれて、我々の前に殘つてゐる。


   憂愁の追ひかけて行く秋の謎




第六囘、莫差特(モオツアルト)  發句による
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=51740388&comm_id=4637715


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