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2024年04月21日23:18

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ゆたか会

 今月も目黒ゆたか会に参加。今回は世界最古の職業特集で、上映作品は09年の「エッチな襦袢 濡れ狂う太もも」(原題『噓つき女と下痢男』)。公開時以来の再見。野村貴浩さんのやくざが、気弱さ故金を失う。組から返済を迫られたやくざは、バーで知り合った日高ゆりあさんのお嬢様から金をだまし取ろうとする。
 この女性は登場場面からお嬢様には見えないが、自称23歳、実は31歳の風俗嬢で、子持ちの設定が意表を突く。私の知る限り映画史上最弱のやくざと、子持ち風俗嬢が噓を重ねながらも接近する様を丁寧に見せるので、気持ちが入る。だから互いのウソがばれる川辺の場面は緊張。そしてファーストシーンと同じバーでのひねりの効いた再会場面は嬉しくなり、続くカラミ場面にすんなり入れた。
 やくざがプレッシャーがかかると下痢をする設定も単なるギャグではなく、トイレから消える場面に生かされる。女の前でドアが閉まる絶望感と、その前の預金通帳がデート現場に飛ぶ特撮の高揚感と対になっている面白さ。主演2人とバーテンダーのなかみつせいじさんまで好演。子役のつぶら君もいい。初見同様楽しめた。
 「ホテトル嬢 悦楽とろけ汁」(原題『夕凪のスカイツリー』)も12年の公開時以来の再見。ホテトル嬢が若者と出会い、少しの時間を共に過ごし、別れるまでの静謐な作品。ヒロインのキャラクターが面白い。部屋には物がなく、冷蔵庫にも水しかない。この生活感のなさ。それでいて変態客にも嫌な顔をせず、行倒れの若者を助け、家に連れてくる優しさがある。
 演じる周防ゆきこさんがいい。写真で表現される「普通のデート」の楽しさ、横暴な客への無言の拒絶、結婚する仲間へのどうしようもない嫉妬心などが伝わり、泣く場面ではこちらも悲しくなった。
 若者は去り、悲しみをこらえて「こんなものか」。しかし最後の笑顔に救われ、このヒロインなら大丈夫と思わせる。世志男さんの怪演、日高ゆりあさんのハイテンション演技と脇も充実。再見に耐える快作。
 「ティファニーで朝食を」はブレイク・エドワーズ監督61年作品。ほぼ30年ぶりの再見。これを機にトルーマン・カポーティの原作を読んだが、ホリー・ゴライトリーのキャラクターの違いに驚く。日本人カメラマンのユニヨシがアフリカの村で撮った写真が雑誌に載り、その中で最近訪れた白人女性の絵が出てくる。これがホリーにそっくり。そこから主人公の回想が始まる。
 舞台は43年のニューヨーク。マーティン・バルサムの映画プロデューサーが、ホリーをオーディションにブッキングするが、その映画がセシル・B・デミル監督「軍医ワッセル大佐」なのも43年を強調する。
 鍵を繰り返し失くすホリーが呼び鈴を押すのは、主人公の部屋。ここから交流が始まる。ニューヨークの上流階級の男とのセックスで金を稼ぐも、暗さは一切ない。異人種間のセックスや同性愛を肯定。ヘイズコード時代のアメリカ映画で描くことは不可能で、オードリー・ヘプバーンではない。カポーティもヘプバーンの起用に反対したらしい。
 主人公も徴兵を恐れ、売れる確証もない小説を書く以外仕事もしない生活力のない青年で、最後まで本名は不明。ホリーに兄の名前の「フレッド・ダーリン」と呼ばれるのみ。後のアクション映画のヒーロー、私にとってはテレビ「特攻野郎Aチーム」の主演であるジョージ・ペパードではない。主人公を囲っているパトリシア・ニールの女性は登場しない。
 ラスト近くの猫を探す場面は原作にもあるが、雨は降っておらず印象は全く違う。「束縛しあうことが愛」の台詞をホリーが受け入れるはずもないし、青年が言うはずもない。しかし原作と違っているから面白くないわけではない。
 ヘプバーンだからこそ、ヘイズコードに合わせて作られたホリーは魅力的だし、名曲「ムーンリバー」を被せたラストシーンも生きる。ペパードだからこそ、青年のキャラクター変更も納得できる。
 元夫バディ・イプセンとの別れは原作に負けていない。猫も好演。今「ティファニーで朝食を」と言えば、カポーティではなくヘプバーンを思い出す人が多いだろう。だから映画はこれでいいのではないか。
 続く懇親会も含め、楽しい1日。今回も感謝です。

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