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2024年03月06日17:05
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ハザール 城田俊 水声社 2023年12月25日
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■カタール航空、ドーハ〜タシケント線を開設 6月2日から週4往復
(TRAICY - 02月15日 13:21)
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p.138
サイードはバルサン市に入場し、市民二万名を徴用して兵力増強をはかり、ハザール軍と一戦を交えんと準備を怠りなく進める。
…
夜明けを前にして、アラブ軍はハザール軍を包囲し、一斉に襲いかかる。捕虜たちもただちに蜂起し、陣営内からハザール兵を襲撃する。…
…
苦杯を何度もなめたハザール軍は気を取り直し、大軍を編成し、再度サイード軍に立ち向かってくる。
p.139
惨敗したにもかかわらず、ハザール軍は、十万余の兵を再び集め、サイード軍に挑みかかる。サイード軍の兵力は僅か五万。大会戦がクラ川とアラクス川の間の平原で開始される。
…ハザール兵の一団が駆け寄り、彼を助け出すが、全軍、背中を見せて、戦場を逃げ去る(カガンの息子はここで落命し、首級がカリフのもとに届けられると記す書もある)。
サイードはハザール軍を追尾し、北へ進み、クラ川に近づいた所で、進撃を止め、カリフからの指示を待つことにする。
…
マスラマが現地に到着した時、ハザールの始末は大方ついてしまっていた。
p.140
彼はハザール軍を追って北へ兵を進めた。…彼はデルベントに到り、城塞を攻略すると、守備隊を遺して、南カフカスに帰還した。
七三二／三年、マスラマは南ダゲスタン山岳地帯の土侯と連合し、デルベント方面へと兵を進めた。…
しかし、デルベントに近づきながら、攻城戦はせず、そこを通り過ぎ、ハザール国王庭めざして攻め込み、行く先々の町を荒らし、捕虜を多数捕らえながら、さらに北へと進んだ。
ベレンジェルもその先のセメンデルももぬけの空であった。さらに進むとハザールの主力軍が迎え撃ってきた。山野に溢れるような大軍であり、カガン自らが指揮していた。マスラマは兵力の差に驚いて、退却を決意し、闇が濃くなると、以前と同じ作戦に出た。…
ハザール軍はアラブ軍を執拗に追尾しデルベントに接近する。アラブ軍は気を取り直し、城の北に陣をかまえて、迎え撃った。…この戦で一際目立つ働きをしたのは陣の右翼を守って号令していたマルワーンであった。…
p.141
マスラマは、逃げる敵を追わず、デルベント城塞を包囲した。
…
イスラム史料はイスラム兵士の勇猛さを特筆大書し、敵国奥深く進軍したと大々的に書くが、これまでの戦線の境界は常にデルベントに戻っている(ハザールの善戦の背後にはビザンツの積極的援助と中央アジアでの同族トゥルギシュの思わぬ奮戦があるのだが、それに関しては次に述べる)。…
マスラマは要塞を修復し、武器庫、兵糧庫を新たに建て、二万四千人のシリア人を移住させ、守りを固めた。
p.143
イスラム史料(タバリー)には、七二〇／一年トゥルクの可汗の将クール・スールが大軍を率いてソグディアナに現れ、サイードの苛烈な占領政策に耐えかねて反乱を起こしたソグディアナ諸勢力を助け、アラブ軍を襲撃し、散々に打ち破り、サイードはサマルカンド近くの城に籠城を余儀なくされた、とある。蘇禄はキュル・チュルという称号を持っていたので、クール・スールは蘇禄であるという説がある。
七二一／二年は、デルベント城をあとにしたジャッラーフ率いるアラブ軍をバルジル指揮下のハザール軍が白兵戦を演じ、ハザール軍がアラブ軍を撃破し、アルメニアに侵入した年に当たる。
p.144
七二三／四年、アラブ軍がシル川を渡り、フェルガナを包囲すると、蘇禄率いる軍が長躯駆け付け、アラブ軍を散々に打ちのめした。
…
七二九／三〇年、ソグディアナ全域でアラブ占領軍に対する反乱が起こり、トゥルギシュ軍は反乱軍を助けるべく南下し、シル川を越え、アラブ軍をアム川以南まで追い払い、軍の一部はホラサンまで侵入する。
p.146
慧超は突厥と表現しているが、これがハザールのことなら『往五天竺国伝』はハザールに関する五つ目の唐代史料(44)とみなすことができる。…
…
注目したいのは、慧超がトゥルギシュも突厥といっていることである。ハザールも突厥、トゥルギシュも突厥。
p.147
カリフ、ヒシャームはマスラマを再び呼び戻し、後任としてマルワーンを指名した。…
…
着任するや、マルワーンは四万の兵を従えて、雨が降り続くにもかかわらず、ベレンジェルへと進軍した。…
マルワーンは多量の畜群を奪って、無事南カフカスに帰還した。帰還すると、総督職をサイードに譲り、首都に戻り、二年ほど留まった。…
…
かく述べた上で、マルワーンは、十二万の兵を要求し、再び南カフカスへ戻って行った。サイードが白内障をわずらい、失明したためだ。
p.148
七三四年、トカラや、サマルカンドを始め、ソグディアナ諸都市で反アラブ暴動がおこり、アラブ兵を駆逐しだした。…
七三六年になると、その暴動・反乱に呼応して、トゥルギシュ軍がシル川を越え、アム川近くまで進出してきた。…アラブ軍はバルフ方面へと敗走した。
…
蘇禄軍の中には故郷解放を熱望する吐火羅葉護もおり、蘇禄自身も旧帝国全域の回復を心に期していた。
p.149
蘇禄は三万の軍を率いてバルフにせまり、立て籠もるアラブ軍も全軍をあげて迎撃態勢をとるが、突然、蘇禄は兵を西に向け、アラブに味方するジューズジャーンに進みだした。…
荒天のハリースターンにさしかかった時、蘇禄のもとに兵は終結していなかった。そんなさなかにアラブ軍と遭遇したのだ。…七三七年の十二月のことであった。
…部下の莫賀達干と都摩支は蘇禄に見切りをつけ、謀議をめぐらし、ある夜、蘇禄の寝込みを襲い、切り殺した。
…バルジルの死ははっきりしないが、一書によると七三〇／一年頃乱戦のさなかサイードによって討ち取られ、首級がカリフのもとに届けられる。
p.150
七二〇‐三〇年代この回復・保持の戦いを、カフカスで担い、侵入軍をせき止めていた具体的人物がバルジル、中央部で担い、侵略軍に対し猛進し、獅子奮迅の戦いぶりを見せたのが蘇禄であった(彼がアブー・ムザーヒム(猪突おじさん)とあだ名されていたことはよく知られている)。
p.152
詐術を含む外交交渉から始めたのは、ハザールを油断させる意味合いもあっただろうが、トゥルギシュの猛攻から解放された中央アジアからの兵員投入をマルワーンは待っていたのではないか。
彼の征服行は定説より一年ずらし、七三八年と本書は推定する(アルタモノフも一九三六年の著作では七三八年としている(97：136)。
…
マルワーンは大軍を二手に分け、自ら指揮する主力第一軍はダリアル峠を越え、第二軍はデルベントから出撃し、両軍同時にハザール国侵入を開始した。両軍はセメンデルで合流することになっていた。
…あわを喰ったカガンは臣下を集めて対策を協議するが、これという作は思いつかず、首都アル・バイダ(どこであるか不明)を後に逃亡するほかなくなる。
p.153
カガンはハザール・タルカンに四万の兵を与え、首都防衛司令官に任じ、自身は大河の左岸伝いに北へ、上流へひたすら逃げに逃げる。タルカン軍がアラブ軍を食い止めているうちに、上流で動員を行い、侵入軍に立ち向かう心算だったようだが、マルワーンはそれを見抜き、セメンデルで合流したアラブ軍をアル・バイダでとどめず、ただ、養馬場を破壊しただけでつうかさせてしまう。…
右岸をさかのぼると、サカリバとその同類の夷狄の土地にさしかかった。…
首都でアラブ軍を迎え撃とうとかまえていたのに、無視されたハザール・タルカンはカガンを救護すべく、急遽隊伍を整え、アラブ軍の後を追って大河の左岸をさかのぼった。その動きを察知したマルワーンは、川面に舟を浮べ、舟橋をつくり、タルカン指揮下の四万の兵に対抗できるだけの精兵を選び、日中左岸へと渡河させようとした。
p.154
ハザール軍は全滅。左・右両岸にいなくなった。
p.155
アルタモノフは、大河をボルガ川と見る。首都と記されるアル・バイダはボルガ下流のハザールの首都イティルの前身とする。その上で、カガンはボルガ中流域のサラトフあたりまで逃げたと推定する。
…
アルタモノフは、このサカリバ人はボルガ右岸中・下流域に住んでいたブルタス人のことだと言う。ブルタス人は現在のコミ人の祖とされるが、はっきりしているわけではない。
p.156
ノボセリツェフは、サカリバ(＝スラブ人)という語にこだわり、大河はドン川ではないかという。…彼はアル・バイダをセメンデルに見立てる。…
…
もちろん、どこかわからないのだが、マハチカラとアストラハンの間にあってカスピ海に流入するどこかの川で行われたのではないか、というのが最も妥当な推論であろう。
p.157
後の話だが、アゼルバイジャンの地方総督の嫁としてやってきたハザール王女はイスラム教を全く知らず、婚礼直前になって勉強せざるを得なかったということでもそれはわかる。
p.160
可汗になるためには近臣の手によって馬上で首を絞められ、意識を失い、人事不省のまま、問う声に答えて、自分の在位年数を答えなければならない。
p.161
唐代史料、イスラム史料、全く異なる世界からもたらされた文献ながら、突厥とハザールの可汗就位式は小道具「絹の小ぎれ」から式次第「首を絞める」「気絶寸前」「在位問答」の細部まで完全に一致する。
p.162
兄弟相続は幼主擁立を避け得るし、父子相続に潜在する叔父の反乱の怖れを除去できる(兄弟相続のシステムの中で、弟は待っていればいつか可汗になれるという望みを持ち続けられる。父子相続の場合、弟は父の地位に就く望みは絶たれる)。可汗の弟は多くの場合シャドの称号を持つ。シャドは潜在可汗であり、可汗に次ぐ権威を持って、軍事・外交・領地支配を統括する。
p.164
母パルスビトだけでなく、先代カガンも、兄弟相続は望ましくなく、父子相続が望ましいと考えていたのであろう。バルジル自身もその考えに傾いていたのだろう。
七三〇年前後にハザールでは兄弟相続が廃止され、父子相続の原則が確立したと見ていいのではないか。…
…
トルマチは「通辞」「外国語使い」を意味することは第二章1(62頁)で記した。それがバルジルに関して使われるなら、単なる通訳ではない。
p.165
パルスビトの原音はわからないが、バルス「虎」ベク「公」ではないかという説がある。これが正しいなら「カガンの母」の父親の名(称号)であったのであろう。…
ハザールはバルスィルを姻族としたことはすでに述べたが、バルス(虎)・ベク(公)とバルス・イル(国)の関係についてははっきりせず、何とも言えない。
p.168
突厥においても聖的権威だけを持ち、俗的権力に関わらない可汗がいたかもしれないという史料があることをここで付け加えておきたい。
『通典』(51)は「遺可汗」と「屋可汗」という存在があったことを伝える(43：5403)。「根拠地に残される可汗」「家にいる可汗」の意であろう。
p.171
両軍が相会したのはタラスの近く、アトラクという地点であったという。
p.173
序章で紹介したハザールがホレズムと隣接することを伝える『新唐書』の記事は杜環とは異なる情報源から出ている。ハザールを「曷薩」と表記する。杜環は「可薩」としか書かない。
また、『旧唐書』に「ペルシア国は、長安の西にあり、その距離一万五千三百里である。東ではトカラとサマルカンドに接し、北では突厥之可薩部(突厥国のハザール部)に隣りあい、西北でビザンツに境を接する。真西および南で大海に臨む」(21：5311)とあるのも、杜環からは得られない情報である。彼が身をもって味わった世界にはすでに(ササン朝)ペルシアはない。
p.174
タバリーによると七五二年、アッバース家と最後まで戦ったウマイヤ朝要人が、車列を組み、家臣を引き連れ、家族と共に、かつての敵ハザールの地に亡命してきた。
p.175
ヤズィードはこの命令ともとれる要請にすみやかに従い、バガトゥル(中国史書だったら莫賀咄と書く)という名のカガンに書簡を送呈し、ハトゥンという名の息女を妻として迎えたい旨伝え、婚資として十万ディルハム(銀三百九十キロ)を送った。…
p.176
ハザール側は、花嫁の死を謀略ととらえ、七六二／三年、大軍を催し、デルベント城の城壁間際までやって来て、攻め立てた。…
…二年後再びハザール軍は南カフカスになだれ込んできた。
総指揮官はホレズム出身のアス(一書ではラス)・タルカンであった。…
…
総指揮官の名の上に冠されるアスないしラスはかつてホレズムあたりに住み、後にイスラム教徒となったアルス族ないしラリス族を意味すると考えられる。
p.177
七九八年／九年、ハザール・カガンは娘スブトを南カフカス総督に嫁として送り出すが、王女は旅の途上で死んでしまう。…激怒したカガンは大軍を南カフカスにさし向ける。
p.178
妻チチャクは、華麗な衣装を身にまとい、宮廷モードの花形としてコンスタンティノープルの宮殿のモザイク美しい床の上を闊歩する一方、夫コンスタンティノスは父の路線を受け継ぎ、破壊派の先頭に立って聖画像破壊を強力に推し進めた。擁護派は彼を憎み、コプロニュモスというあだ名をたてまつった。「糞」という意味である。
二人の間に生まれた「ハザロス」レオン四世(七七五‐七八〇)は違った。…あるとしたら妻イレネの存在かもしれない。
結婚時は秘していたようだが、イレネは擁護派にくみしていた。寝室のベッドの下に聖像画を隠し持っていて、見咎められ、ひと騒動おこったことがある。
p.179
この時期、クリミアの南部山岳地帯にはゴーディアという公国があった。フンによって黒海沿岸地帯から追い出され、流れ流れてやってきたゴート人(53)が建てた国である。
p.180
ヨアンはイレネの特別のはからいで、コンスタンティノープルにやってきて滞在する。
彼はドロスに帰ると、住民に呼び掛け、ゴーティアの独立をめざし、ハザールに対して反乱をおこす。
p.181
カガンはゴート公に何らの罰を与えなかった。…ヨアンに対するハザールの処置も驚くほど寛大であった。ただ軟禁しただけであった。
p.183
しかし、八百万の神への信仰のもとでは、各部族・氏族がそれぞれ、己が神を信じることになる。
p.187
「ケンブリッジ文書」はこのように、ハザールのユダヤ教徒はユダヤ教に改宗した者ではなく、根っからのユダヤ人であることをほのめかすようにして、導入の経緯の話しを終える。
p.188
このアルディルとはアルダビールのことと考えられる。…もし、アルディルがアルダビールであり、ブランがこの戦いに参加していたなら、彼は七三〇年前後を生きた人と考えられる。
ヨセフは王といっているが、その時、彼は王ではない。バルジル、又の名をトルマチという、先代カガンの息子で現カガンの弟であるシャドが指揮するハザール軍の一翼を担って、対アラブ戦に参加した軍司令官の一人に過ぎない。
p.189
ユダ・ハレビ(295頁)は著書『クザリ』でハザールのユダヤ教受容は彼の時代をさかのぼるおと四百年と書く。彼は一一四〇年頃、著作に取り組んでいたというから、受容は七四〇年頃になる。ブランが活躍していたと目される時代にだいたいのところ一致し、時代の傍証の一つとなる。
…七九八／九年にはカガンの娘スブトが同じく嫁入りのため南カフカスへ旅立っている。…
…チチャクもハトンもスブトも結婚前はテングリハンを信じていたのだ。
ユダヤ教導入がなされたのは少なくともスブトの嫁入り以後のことと思われる。
p.190
ユダヤ教国教化(支配層の大挙しての入信)はどうやらスブトの嫁入りの七九九年からハールーン・アッラシード(56)の死にあたる八〇九年までの十年の間に起ったと推定してよさそうだ。
p.191
ちかし、ハザールのユダヤ教選択は、このような思索の結果行われたわけではない。本章2で述べるようにブランの子孫が主導する権力闘争の勝利の結果である。
p.192
内戦の原因にもユダヤ教への反発があったと想像される。滅亡に瀕した時、ホレズムからの援助がすぐ受けられなかったのも、ユダヤ教国だったがためである。キーウ(キエフ)国家や後のロシアによって継承の事実が完全に否定され、継承を示す痕跡がことさら消され、年代記に名を残すのみで、幻の如き存在にされてしまったのもユダヤ教が問題視されたためである。
…
ユダヤ教は宮廷とその周囲、流入ユダヤ人の間で信じられていたとしても、国教として威をふるっていた様子はない。
p.196
以下、聖王カガンの対になる俗王(通常ベク、コンスタンティノス七世『帝国統治論』ではペフ、イブン・ファドラーンの旅行記ではバフ)を将軍と呼ぶことにする。…
…
この無知は彼の氏が西突厥に出自を持たず、トンヤブグ可汗の栄光とは無縁の、ダゲスタン地方土着豪族を出自とすることを示唆する。
ヨセフは家門の始祖としてブラン(トルコ系言語で「へら鹿」)の名をあげること、ブランはアルダビールの戦闘に参加したらしいこと、この推定が正しいならハザール将軍家の始祖は八世紀前半バルジル(トルマチ)麾下の一武将として働いた人物であり、カガン家とは無関係の一領主(公)だったと推定されること、などはすでに本章1で記した。
このような一領主に過ぎなかったブランやその子孫が、カガンの血縁であるシャドを圧倒し、オバディアに到って、完全に権力を掌握し、国政の改新を断行できるようになったのはなぜか。
p.198
「ヨセフ書簡」で語られるブランを「ケンブリッジ文書」に登場するサブリエルに同一視する意見がある。…ブラン(トルコ系名)改めサブリエル(ユダヤ名)となったと見るのである。
この考えが正しいなら、武人ブランは富裕なユダヤ娘と結婚し、義父と妻の影響のもとユダヤ教に入信し、ユダヤ勢力を背景にして、智力・武力・財力を発揮し、地位を固め、勢力を拡大した人物と見られることになる。
p.202
皇帝が伝えるのは、内戦の原因とか、推移ではなく、もともとハザールであるカバル族がマジャールと一緒にいるのはなぜかということの説明である。…
…『統治論』を読む限り、マジャール王統の開祖であるアルパドはどうみてもカバルの統領であり、ハザール出身である。
p.203
内戦が発生する条件は多数あるといったが、この時期、オバディア一統(コンスタンティノスのいう政権側)に対し反乱をおこす必要が最もあったのは、政権から追われたアシナ家出身のシャド一門であろう。しかし、皇帝は反乱をおこしたのはカバル族だという。彼の記述によると、カバル族はハザール族であるが、マジャール八部族中首位に立って統率する武勇にすぐれる高貴な部族だという。…
プリツァク(一九一九‐二〇〇六．ウクライナの東洋学者、東欧史研究家。主に欧米で活動)は、カバル族が中国史料に見出される阿拔(跋)â-b'uât(カールグレン(スウェーデンの中国学者。中国語音韻史に優れた業績を残す)による再構音)が西移して形成されたと断定する(77：36)。
p.204
カバル族はバルスィル族同様、突厥帝国から移動してきた部族と見ていいかと思われるが、はっきりした証拠はない。
…
あくまで想像であるが、反乱をおこしたシャドはカバル族を主る設であったのではなかろうか。
p.217
フランク王国年代記のこの記事で特に興味を引くのは、ロス(ルシ)が自分たちの王をカガンと言ったことである。…ルシが、隣国ハザールの威容、文化の高さに憧憬を抱き、国家の仕組みを取り入れハザールと同等であることを示すためにカガンという名も着用した、というふうに通常説明される。
…
ハザールの内戦でベク側に敗れたカガンが、命からがらボルガ川をさかのぼって上流まで逃げ、ヤロスラブリ、ロストフあたりに根をはるバリャギの首領(王)のもとに駆け込み、保護を受けるようになったのではないか。カガンの息子たちは、バリャギの王の娘たちと結婚した。亡命地でカガンが死ぬと、息子はカガン位を継ぎ、ここにルシ・カガンが立ち現れる。ユーラシアの平原で威を振るうカガン号を無断借用したのでなく、婚姻によって正当に名乗れるようになると、当地のバリャギの格は他のバイキングの入植地の首領たちより上になり、次第に他を畏怖させ、従わせるようになって、ルシ・カガン国が成立する。
p.218
このイゴリ�△了丗垢�カガンを名乗り、キーウ(キエフ)国家を創出し、統括し、王朝は一五九八年まで続くとされる。…
支配された東スラブ人は彼らをルシроУсЬと呼んだ。詳細は省くが、このルシという語はゲルマン諸語で「漕ぐ」とか「櫂」を表す語を写したものといわれる。
…
イブン・ファドラーンの旅行記には、ルシが二重王権の体制をとっていたと語るくだりがある。
p.219
『ノブゴロド第一年代記』というものが今に伝わる。…
…
ルシの開祖はリュリク� �後継者である二代目はイゴリ�◆ゥぅ乾蠅砲話侶耽爾�、勇敢な軍事指導者オレグがついていた、というのである。…ここに二重王権の痕跡を認めることは容易であろう。
この見地から見ると『原初年代記』の先の引用部分、「イゴリは成長し、オレグと行を共にし、言うことを聞いていた」も二重王権の文脈の中に納めることができるように思われる。
p.220
双頭王権制度は一時期あったとしても状況にそぐわず、長続きしなかったのだろう。
p.221
『原初年代記』に頻出する従士団である。…
四百人という少人数である。…
…オトロキないしチャディ(子飼いの従者、侍)の語で示されるのもこれらの集団である(現代のロシア語で「みんな！」と呼びかける時、レビャタ(レビュノク「赤ん坊、子供」の複数形)が用いられるが、この用法の背後には深い歴史が隠されているに違いない)。
p.222
曳落河(67)という子飼い兵士団をもった安禄山などはその好例であろう。従士団ドルジナは友ドルグを語根とすることは明白である。
p.227
(今から)五十年前、ハザールはオグズ(オグルとも)と同盟し、ボルガ川とウラル川の間にいたペチェネグを攻撃し、追い出した。…
マジャールはハザールと隣り合ってレベディアに住んでいた。レベディアとはマジャールの首長レベディアスの名からつけられた地名である。マジャールはそこでハザールと一緒に三年暮らした。…
…
そんな時、故地を追われたペチェネグ(当時カンガルと呼ばれていた)がやって来て、マジャールに攻め掛かり、撃ち破った。マジャールは仕方なく、レベディアを後にしてアテルクズへと移り住んだ。アテルクズとは「川の間」を意味する。
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■カタール航空、ドーハ〜タシケント線を開設 6月2日から週4往復
(TRAICY - 02月15日 13:21)
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カタール航空は、ドーハ〜タシケント線を、6月2日に開設する。
タシケントは、ウズベキスタンの首都。月・水・金・日曜の週4往復を運航する。すでに航空券の販売を開始している。
カタール航空の中央アジアの乗り入れ都市は、カザフスタンのアルマトイに次いで2都市目となる。
■ダイヤ
QR377 ドーハ（19：50）〜タシケント（01：20+1）／月・水・金・日
QR378 タシケント（03：20）〜ドーハ（05：20）／月・水・金・日
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