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p.118
この点に関して、ボーフム大学教授のキヤーヌーシュ・レザーニヤーは、アーザル・カイヴァーンがゾロアスター教の聖典『ザンド・アヴェスター』に親灸する機会があり、それを踏まえて『ダサーティール』を構想したと主張する。これに加えて彼は、アーザル・カイヴァーンは「ヴェーダの注釈伝統」も熟知したとし、シェフィールドが指摘する「オスマン朝の思想家ムヒーゥッディーン・ギャルショニー」の影響力を低く見積もる。…
筆者もこれに賛成である。アーザル・カイヴァーン学派の内部では、ゾロアスター教の聖典の構造に関する情報が共有されていた可能性が高い。筆者は、アーザル・カイヴァーンはゾロアスター教徒では無いと考えているので、それにも拘らずゾロアスター教の聖典(レザーニヤーによればヴェーダ聖典も)の構造にまで一定の理解を有していたアーザル・カイヴァーンの学識には、やはり敬意を払わざるを得ない。
p.119
近年、スフラワルディー本人が執筆したアラビア語の祈禱文が明らかになるにつけ⁵¹、章によっては、それをそっくりペルシア語訳しただけだと判明したのである。
p.120
しかし、現在では、スフラワルディーの惑星崇拝祈禱文の翻案だと判明している。…
即ち、『ダサーティール』とは、古代ペルシアの預言者の預言集の体裁を採りつつ、構造としてはゾロアスター教の聖典『アヴェスター』を模倣し、アースマーニー語と云う人造言語で本文を執筆し、その純粋ペルシア語註釈にはスフラワルディーのアラビア語惑星祈祷文のペルシア語訳を以て充てている文献と考えられる。
p.121
即ち、前出のファルザーネ・ゴシュタースプは、「アースマーニー語はアーザル・カイヴァーン没後に第三者が偽造したものだ」と主張していたが、その論旨が必然的に赴くところ、「現行の『ダサーティール』は、アーザル・カイヴァーン没後に成立した」との結論に至っている。
…つまり、『ダサーティール』は、アースマーニー語と純粋ペルシア語を表現手段とした為に、内容はほぼ祈禱文とならざるを得なかった。実際、この言語に、それ以上複雑な表現は無理である。これに対して、バフラーム・ファルハードと「4冊」は、哲学的な内容を既述の中心に据えており、アラビア語自体かアラビア語語彙を多用する哲学的ペルシア語でなくては、これを表現し得ない。結果的に、その中に『ダサーティール』の純粋ペルシア語祈禱文を引用したにしても、全く思想書にそぐわない表現になるので、知っていながら敢えて割愛したと見る。
p.142
7世紀に土星(=カイヴァーン)と木星(=ホルムズ、ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーの近世ペルシア語形)が朔に入った時、サーサーン朝ペルシア帝国とゾロアスター教神官団が滅んでイスラーム教徒が興隆した。それから1000年近くを経た1582年(=ヒジュラ暦990年)に、再びこの天文現象が起ころうとしていた。
p.143
嘗てムハンマド・ヌールバフシュは、「土星と木星が蠍座で交わる時、救世主が出現し給う」と予言した。アーザル・カイヴァーンは、かなりの部分で、このような千年紀の救世主を待望する言説に乗っかっている。
p.186
例えば、アラビア語でイスラーム哲学上の「質料」を表すmāddahは、パフラヴィー語ではgētī(g)などと表記するのが普通だろうが、敢えてアラビア語の発音をパフラヴィー語風に改変して、(māddag)という新単語を創出している。
p.304
セム的一神教の感性からすれば、イエスたるとムハンマドたると第三者たるとを問わず、「天と地を結ぶ究極の人格」の不在は、宗教的に耐え難い事態だったのである⁹⁷⁰。
この為、殊にポスト・モンゴル期のイランでは、新たな「究極の中心軸候補」が雨後の筍の如く叢生し、これはこれで大混乱を来たし始めた。…
…
⁹⁷⁰ 日本人には馴染みの薄いこのセム的一神教特有の感性を正確に言い当てたのは、管見の及ぶ限り、アンリ・コルバンが最初である。
p.305
⁹⁷² フルーフィー教(文字神秘教)とは、Fazl Allāh Astarābādī(1339〜94年)が、1374年に開いた新宗教。聖典はJāvīdān Nāmeで、基本教義はイスラームの秘教的意味、聖者が支配する循環時間論、アラビア文字アルファベットの数秘術解釈、輪廻転生説とされる。しかし、フルーフィー教文献は校訂も出版もされていない。
⁹⁷³ ヌクタヴィー教の教祖Mahmūd Pasīkhvānīは、ギーラーン出身のフルーフィー教徒だったが、1397年に自らをマフディーと宣言して新宗教ヌクタヴィー教(点の宗教)を創始する。…
�［慍�転生説：生前の徳と学識によって転生先が決まる。マフムード本人は、預言者ムハンマドとイマーム・アリーの転生体とされる。
�⊇于伴�(ワーヒド)階級の独身主義・禁欲主義。
��循環する時間論：世界時間は64,000年から成り、16,000年ごとの外面期(zohūr)、内面期(butūn)、秘密期(sirr)、顕現期('alānīye)に分かれる。
�ぢ�2期は更に8,000年ずつ、アラブの8人の預言者が支配する「アラブの時代」と、ペルシアの8人の開示者が指導する「ペルシアの時代」に分かれる。
�ゥ泪奪�とマディーナよりも、Mahmūd Pasīkhvānīの故郷ギーラーンが聖地とされる。
p.312
⁹⁹⁷ カンテーラ教授から伺ったところでは(2013年1月13日ナヴサーリー)、「冗談で」twitter上にアヴェスター写本所蔵に関する問い合わせを発信したところ、1時間以内にヤズド近郊のゾロアスター教徒から「それと同じものが土蔵にある」との返信があり、それが突破口になったとのことである。尤も、これにはカンテーラ教授の座興の含まれていたようで、実際にはテヘラン大学図書館、マレク図書館、アースターネ・ゴドセ・ラザヴィー図書館などの公的機関に「秘蔵」されていた写本も相当あったようである。筆者も同時期にイラン国内の写本図書館でゾロアスター教写本を探していたのだが、そのようなアヴェスター写本は1点しか発見できず、大変残念な思いをした。
p.316
⁹⁹⁹ アーザル・カイヴァーン学派は、マフムード・パスィーハーニーが樹立した宗教をヌクタヴィー教とは呼ばず、ワーヒド教と称している。Dabestān-e Mazāhebによると、彼らの用語でVāhedとは「隠遁者」(或いは、一種の聖職者階級か出家者)を指すので、直訳すれば「隠遁者たちの教え」と呼ばれていたことになる(本章稿末の補遺参照)。
p.341
これらに対して、vakhshūrはイスラーム以前のゾロアスター教に特有の語で「vakhsh＝言霊¹⁰⁶⁷」＋「war＝守るもの」で「言霊の守護者」を意味する。
p.355
但し、筆者が知る限り、存在の無限遡行(tasalsul)は通常「鎖」を例として論じられるのだが、ここでは敢えて「小さな黒い丸つまり点(dahāghakī ya'nī noqte)」が例として持ち出されており、ヌクタヴィー教の教義との関係を想定させる。しかし、純粋に数学的な意味で「点(noqte)」を持ちだしている可能性も排除し切れない。
p.362
この部分は、アーザル・カイヴァーン学派をヌクタヴィー教の一派と捉える研究者からは「ヌクタヴィー教に関する第一級の内部資料」として高く評価されている。だが、筆者が読んだ限りでは、モーベド・シャー自身は明らかに「ワーヒド教」を自分たちとは別の何者かと認識している。
p.363
¹⁰⁷⁵ つまり、諸元素は、�々枴�⇒�⊃∧�⇒�Ｆ以�⇒�た祐屏有ゴ袷歓祐屏�➅ムハンマド的位階⇒�Ш任盍袷瓦悩任盻秧茲淵泪侫燹璽匹反焚修垢襦�
p.397
しかし、筆者が読み取る限りでは、師アーザル・カイヴァーンと高弟ホダージューイが暗黙の前提としている「第0段階」がある。…
…しかしホダージューイによって「ペルシアの照明学派の方法論(tarīq-e Hokamā-ye Eshrāqīye-ye Pārs)」と注釈されている(p.44)。この「ペルシアの」部分は不可解である。
■イラン大統領のひつぎが故郷に埋葬される 葬儀が終わり来月28日に大統領選挙へ
(TBS NEWS DIG - 05月24日 10:11)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=7873918
墜落事故で死亡したイランのライシ大統領のひつぎが23日、故郷に埋葬されました。
イラン国営通信などによりますと、ヘリコプターの墜落事故で死亡したライシ大統領のひつぎは23日、出身地の北東部マシュハドに運ばれ、イスラム教シーア派の聖地ともされる霊廟に納められました。
これで、21日から3日間にわたって行われた葬儀は終わり、来月28日には新しい大統領を決める選挙が行われます。
ただ、大統領選への立候補には事前審査があり、ライシ氏と同じ保守強硬派の候補に有利な審査が行われる可能性が高く、反米の強硬路線は継続するとみられます。
現時点で有力候補はおらず、イラン国内では今後、政治的な駆け引きが活発化する見込みです。
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