シダネルの回顧展は2012年にSOMPO美術館で鑑賞して以来、2回目。マルタンの作品をまとまって鑑賞するのは今回が初めて。あまり馴染みがない画家なので、飽きずに見られるかどうかという不安があったが、クセが強いわけでもなく、絵の意味を深く考える必要もなく、さらりと気軽に、穏やかな気持ちで作品を眺めていられる展覧会だった。
シダネルとマルタンの絵が並んで展示されて、作者名が伏せられていたら、どちらの作品だか私には区別はできない。だが、北フランスで活躍していたシダネル、南フランスで活躍していたマルタンということを頭に入れて、「これはくすんだ色の空だから北仏のシダネルかな」「これは明るい色だから南仏のマルタンかな」と考えながら絵を見比べるのは楽しかった。
ルノワール、ムンク、シャヴァンヌ、ルドン、ゴッホ、シニャックなどの作品を思わせる色使いや筆致があるのも興味深い。様々な技法を消化して自分なりの表現方法を確立していったことが伺える。
シダネルとマルタン、印象的だった作品を1点ずつ挙げておく。
ヴェルサイユ、月夜(アンリ・ル・シダネル):
噴水の上に満月が輝く。雲が多いので、光は鋭くない。そこが良い。暖かな春の夜を感じさせる作品。BGMにドビュッシーの「月の光」が似合いそう。
マルケロルの池(アンリ・マルタン):
遠くの山々を借景にした広い庭。白い彫刻がしつらえられている半円形の池。池の周りにはゼラニウムと思われる花が咲いた植木鉢が並ぶ。奥に広がる庭も花が咲き乱れている。こういう庭が私の理想!・・・なのだけれど、手入れが大変そう(笑)。強い日差しと、やや冷涼な風を感じる作品。
美術館を出たら、「マルケロルの池」を見ていた時に連想したのと同じ強い日差しで、からりとしつつ少し肌寒い風が吹いていた。今の季節にぴったりの展覧会を見ることができたと思った。
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