最初の3ヶ月 3 （作成中）

次の日の朝。歩きざまに3組をのぞく。まだ来てないのかな。昨日借りたの返したいんだけどな。困ったな。
たまたま会えない限り返せないなんて不便。どこにいるか知っていれば良いんだけど。
ちょっと待っていよう。
「あれっ、春名さん、おはよう。」うちのクラスのリキコさんとかいう子が声を掛けてきた。「何してるの？あっマキハラくんに用事？」うんうん、とうなづいた。「あ、まだ来てないんかな。そのペン？あたしから返しとこうか？」ううん、と首をふる。
「あ…なんかごめんな」ううんとまた首を横に振った。「良かった、ちょうど来たわ。おおいマキハラー！この子がなんか用事なんだって！」
顔をあげられない。じゃあね、と戻っていくのをうつむいたまま見送る。
「メイちゃん、、なに？」下を向いたままでいると、横から覗き込まれた。びっくりして思わず顔を上げた。なんちゅう見方をするの。「これ、返しに来た」「えーと、あそっか、そういえば貸してたな。って、どうした？」「…」「…？」「リキコさんて友達？」「あー幼なじみだよー」幼なじみ…。「いいなあ」「ん？」「そういうことで返したから、もう戻るね、」

うーん、これはどういう状況なんだろう。昼休み、クラスの女子が日替わりで隣に来て黙ってただ弁当を食べていく。何これ？罰ゲーム？？あまりにも訳がわからなくて気味が悪い。食べている間落ち着かなくてぎこちない動きになってしまう。ロボットみたいに。

気まずい昼食から解放されて、急いで3組に向かう。何かあれば来ていいって言ったよな？本当に行ってやるけど、お前が言ったんだからな。まえの入り口から覗くと、見つけた。けれど、男子のグループで話していて気付いてもらえない。
扉に近い席の生徒が私に気がついて、ヨッチンに声をかけてくれた。（ていうか私の顔覚えられちゃってる？）
「困ったらいつでも来ていいって言ったよね？」「何かあった？」「うん。困った。だから来た」
「なに？」「えっとね、ポンポンタイって何？」「ポンポン隊知らない？」「うーん知ってるかもしれないけど、聞いたことない」「なんだそれ、、あっ、そういうことね」「そうだよ。」「あの、体育祭の時の女子の応援団みたいなやつ？ポンポン持って踊るやつ」「あー！ボンボンのことかあ。あの、ビニールひも割いて作るやつ」「そうなん？まあ分かって良かった。で、それがどうかしたの」「いやわかんなかったから」「それだけ？って、…どうした？」「は？なに？」「ちょっと待って」
教室の中に入って友達に何か話してから戻ってきた。
「行こう。ここ売店あるの知ってた？」「あーなんか聞いた気がする」「ついて来て」
階段を下りて校舎を出る。渡り廊下を通りながら「外の別な建物にあるんよ、初めてだったらわかりにくいかもな」「んー、最初の説明の時に先生と一緒に回った」「でも覚えてないでしょ」うん。「文房具とか売ってるから、忘れたら買いに来ればいいよ。あと、うち給食ないでしょ」「うん、」「お昼だけパン屋さんが来るんよ、本当はジュースとか置いてほしいんだけどな」
そう言いながら、購買に着いて菓子パンを3個買った。
「…あのさあ、なんでここに連れてきたの」「へっ？パン買いたかったから」「え…あっ、そういうこと？」「うん。あと、泣かれたら困るし」「なに？あたしが？泣かないよー」「本当に？」「泣きそうに見えた？」「違ったらええんよ」
「お昼休みにご飯食べてるとね、」「うん？」「クラスの女子がお弁当持って隣に来るの。」「一緒に食べるの？」「一緒にっていうか、ただ黙って食べて、終わったら自分のグループに戻るの。何だと思う？」「えっといつもひとりで食べてるの？」「うーん、一人っていうか、そうなんだけど、」「聞いてみたらいいじゃん」「食べてる時に？」「そう」「なんて聞くの？何しに来たっていうの？」「うーんだから、何？て聞いたら？」「変じゃない？」「そう？」「だって話したこともないのに、いきなり聞いたら変でしょ？友達でもないのに」「変じゃないよ」「変だよ。それにね、毎日違う人なんだよ。同じグループで一人ずつチャレンジしてるみたい」「チャレンジ、はは、友達になりたいんじゃないの」「そうかな」そういう感じじゃないんだけどな。後でどうせ、せっかく仲良くしようとしてあげているのにこたえてくれません、みたいに言うんだよ。
「メイちゃん、今でもその感じなんだ？」「どの感じよ？…そうよその感じだよ悪かったよ」「いや別に悪くはない」「でも何も喋らない訳じゃないよ？聞かれたら答えるし、本読みだってするし！なんでちょっと嬉しそうなんよ」「嬉しそうにはしてないけど」「弱みを掴んだみたいな？」「ちがうよ。よく喋るなーと思って」「えっ」
階段を上るときクラスの誰かとすれ違いざまにチラッと見られた。「あっ、パン待たしてるから、先に行くな。じゃあな〜」ササッと走って行ってしまった。