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2016年12月11日12:58

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『 海賊とよばれた男 』


場帰り、公開初日の『 海賊とよばれた男 』を観た。109サービスデーと土曜日が重なったこともあり、結構な観客が席を埋めていた。

 原作未読のため、冒頭、國岡商店が倒産の危機に直面する理由がわからず、少々戸惑ったが、物語は過去と現在を行きつ戻りつしながら、主人公・國岡鐵造(岡田准一)の半生を描いていくもので、中盤以降は物語の展開に理解が追い付いた。脚本が原作に忠実なのかどうかはわからないが、こういう展開はちょっと難解だと思う。映画が始まって5分で、もう目頭が熱くなるシーンがあり、その後もずっとハンカチで目をぬぐわねばならないほどの「 胸を熱くする物語 」なので、もう少しわかりやすい構造の方が良かった。それだけが残念だ。

 10代後半から90代まで、特殊メイクを施して独りで演じきった岡田准一の熱演は本当に素晴らしかった。力のこもった、迫力のある台詞回し、周囲を圧倒する存在感は正に、激動の時代を生き抜いた一代の風雲児を見事に体現している。同じ原作者、同じ脚本・監督の前作『 永遠の0 』で彼が演じた宮部久蔵より、ずっと彼にマッチしていると思う。それに、原作の保守的右翼的なカラーを巧みに脚色し、結果的に「 最も重要なエピソード 」を描くことから逃げてしまった山崎貴脚本も、今回は「 戦争 」を真正面から捉えた作品でなかったこともあってか、かなり骨太な印象を受けた。話はそれるが、原作『 永遠の0 』の主人公・宮部久蔵は決して卑怯者ではない。ただ、乱戦に巻き込まれて流れ弾に当たることを恐れるがゆえに、空戦域から少し離れたところに待機しているのである。だから、空戦域を離脱した敵戦闘機を発見すれば果敢に挑み、捕捉・撃墜するのだ。ある時、宮部が空戦で彼と互角に戦った凄腕の米軍パイロットを撃墜し、落下傘降下した敵兵を追って射殺するシーンは原作にあって、映画にはない。原作の宮部は、この敵兵を見逃せば、近い将来、味方のパイロットが撃墜されて戦死することは間違いなく、それが自分である可能性も否定できないと考えていた。だからこそ、この凄腕の敵兵を生かして帰すことができなかったのだ。敵兵を殺さない兵士は、味方を殺しているに等しい。戦争とは、そういう冷徹非情なものであり、宮部は現実主義者だった。しかし、映画で描かれた宮部久蔵は違う。天才的な技量をもつ零戦パイロットにも関わらず平和主義者で、敵を殺すシーンがなく、自分の命を惜しんで空戦から逃げているようにしか見えないのは映画版『 永遠の0 』の大きな欠点である。東京12チャンネルが開局記念作品として、向井理主演で制作したドラマ版『 永遠の0 』(全3話)の方がずっと原作に忠実で、硬派な物語になっている。

 話を『 海賊とよばれた男 』に戻す。

 原作者の百田尚樹氏は同じカテゴリーの小説は二度と書かないと公言しているそうだが、この映画は『 永遠の0 』の取材中に得た資料が基になっていると見た。『 永遠の0 』は主人公の設定に、浅田次郎『 壬生義士伝 』の吉村寛一郎から大きな影響を受けている、というのが私の持論だが、『 海賊とよばれた男 』は山崎豊子『 不毛地帯 』の影響を受けているのではないかと思う。まあ、それは勝手な想像だけど。

 原作未読で、劇場版予告編映像しか予備知識のなかった私は、エンドロールで控えめに「 資料提供 出光興産 」とクレジットされていることに驚いた。この映画は出光興産創業者 出光佐三・の半生をベースにしたものだったのだ。


★過去の日記

永遠の0
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永遠の0 原作読了
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