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2016年12月06日15:56

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映画『シークレット・オブ・モンスター』試写会いちゃもんレビュー

★☆☆☆☆
 とにかくこの邦題のつけ方だと、誰だってホラーやスリラー映画だと勘違いを起こすでしょう。でも、実際に見てみたらほとんどが主人公の少年が反抗するお話しが続く家族ドラマなんですね。そこに脈絡もなくヴェルサイユ条約締結当時の映像が挿入されてくるからわけが分からなくなるのです。政治劇としても中途半端な描き方でしょう。もし独裁者の再誕を描きたかったのなら『帰ってきたヒトラー』のほうが、面白くて、メッセージも分かりやすく伝わってきます。

 なのでこの邦題つけ方のセンスがひどいとしかいいようがありません。「モンスター」と題されて、意味深な少年がアップで写っていれば、この少年に秘密があり、どこかで「モンスター」で化けるものと思って見ていたのです。ところが何も起きなかったのでガックリ。「モンスター」というかには、このノリだったら、少年が裏では殺人鬼であったり、怪物が少年に化けていたりするものです。ところが、いろいろ親に反抗するものの、少年はいたってフツーの少年のままでした。予告編では“何が少年を独裁者にしたのか”とその変化を『謎』に挑んだ怪作”と煽り立てます。でも、どこに謎の暗示となる伏線が描かれていたのでしょうか。少年の心理の過程を描かずして、ラストで独裁者に変貌していたという描き方では、予告編の「心理パズルミステリー」としいうキャッチにならないと思います。パズルとなるパーツが描かれていないのです。
 そして秘密や謎を謳うなら、普通ならネタバレとオチをつけるでしょう。しかし本作で描かれる少年の癇癪には、全然その後どうなったのかというオチがなく、謎になっていなかったのです。
 
 「いや、独裁者になったではないか」と主張される人もいるかもしれません。それだったら、かわいい反抗を見せるシーンを長々見せつけるよりも、この少年の将来を見せつけるような奇行や残忍さを描いた方が、伏線として成立することでしょうことでしょう。
 しかも、フツーの少年が描かれる割りには、サウンドトラックのほうは、ホラー映画のノリで、やたら不安感を煽り立てる曲調だったのです。そんな曲調ほどに残酷なシーンもなく、映像と音楽のチグハグな印象を否めませんでした。
 ドキッとしたのは、少年が癇癪の余り、母親の手をフォークでいきなり刺すところぐらい。どう見ても、この少年が成人して独裁者になり得るという感じは全くありませんでした。

 余りに酷いストーリー展開のためか、試写会でも数名が途中退場してしまいました。
 
 実存哲学者サルトルから着想を得ただけに難解さというこだわりが監督の意図にあったのかもしれません。


●Introduction

ジャン=ポール・サルトルの短編「一指導者の幼年時代」を基に、政府高官を父に持つ美しい少年が狂気の独裁者へと変わるさまを描くミステリー。後に独裁者となる少年を新星トム・スウィートが演じるほか、『アーティスト』などのベレニス・ベジョ、『ニンフォマニアック』シリーズなどのステイシー・マーティン、『トワイライト』シリーズなどのロバート・パティンソンらが出演。『ファニーゲーム U.S.A.』などの俳優ブラディ・コーベットが監督を務めている。

ストーリー:ヴェルサイユ条約締結直前の1918年、フランスにやって来たアメリカ政府高官には信仰心の深い妻(ベレニス・ベジョ)と、人形のようにきれいな息子(トム・スウィート)がいた。しかし、その少年は教会へ石を投げたり部屋に閉じこもったりなど奇妙な言動を繰り返し、理由のわからない両親は当惑する。周囲の心配などどこ吹く風の彼は、ヴェルサイユ条約が調印された後のある晩に……。
[日本公開:2016年11月25日]

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