今週のオークラ

　上野オークラで「女詐欺師と美人シンガー　お熱いのはどっち？」を見る。浜野佐知監督エクセスの新作。この映画最大の売りは、真梨邑ケイ主演であることだろう。成人向けＶシネにも出演しているので、ピンク映画に出ても不思議はないのだが、テレビで見ていた人が、ピンク映画常連俳優たちと同一画面にいるのは不思議な気分になる。
　真梨邑ケイがどんな経緯で出演したかは知らないが、それが映画の内容に影響したのだろうか、浜野監督としては異色作。人格が入れ替わる話はよくあるが、行き詰まった女詐欺師の人格が、別世界の自分であるジャズシンガーに入ってしまうのは珍しい。ジャズシンガーの人格は、入れ替わるのではなく眠っていて、時々本来の体に戻ったりする不思議さ。女詐欺師が安心した途端、元の世界に戻って危機に陥る面白さがある。
　山崎邦紀監督の脚本は、時に客を置き去りにすることがあるが、今回は不思議さがエンターテイメントとして成立している。終盤はパラレルワールドか胡蝶の夢か、それもわからなくなるが、いっそ気持ちいい。なんと真梨邑ケイが劇場に来ていた。他社作品なのにありがたい。
　浜野監督の演出も、この前の旧作と同じくフェミニズム要素を抑え、ミュージカルのように真梨邑ケイに歌わせ、娯楽性が高い。人格が移動するきっかけになる「野ばら」がよかった。楽しめる作品。
　同時上映の田尻裕司監督「ＯＬの愛汁　ラブジュース」を久しぶりに見ようと思ったが、画質の悪さ、さらにＤＶＤ上映のせいか椎名林檎の曲が使われておらず、すぐに退出。