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2022年10月09日19:03

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【オペラ】ジュリオ・チェーザレ(新国立劇場)

中低音の女声と高音の男声。男性を演じる女性と女性的な衣装を身にまとう男性。音域とビジュアルが中性的で不思議な感じ。
音楽はバリバリにバロッで、劇的な強弱や緩急がなく、どこまでも上品で典雅。だから、緊張感が高まるはずのシーンも何となくのんびり。
合唱や重唱は少なく、ソリストのアリアとレチタティーヴォで淡々と物語が進んでいく。

中性的な曖昧さというのは多分、「性別を超えた」という意味もあるのだろう。「宗教的な」と言い換えることもできるだろうか。ヘンデルはバッハと比べると世俗的な音楽が多いように思うが、それでもヘンデルが活躍していた18世紀は人々は今よりももっとキリスト教的規範に従っていたはずだ。
管弦楽は、弦5部、木管、通奏低音という構成。細かいパッセージや装飾音が繊細で華麗。
宗教的であること。貴族的な上質さ。これらは、雑踏、無機質な建築物、乗り物やスピーカーから流れる大きな音に囲まれ、効率化や納期に縛られる日々を送っている現代人にとって、正反対のものであり、だからこそバロック音楽の非日常性に癒される人が多いのだろう。

しかし、今回、休憩込み4時間半の長丁場のバロック・オペラを初めて体験して気づいたことなのだが、バロック音楽に癒されるのは、バロック音楽を聞き流している時だけで、バロック音楽にガチで向き合うとなると話は別だ。変化に乏しいがゆえに飽きてしまうのだ。私自身、ヘンデルの楽曲にあまり馴染みはないものの、趣味のピアノで長くバッハを弾いていることもあって、装飾音や終止のパターンが予測できてしまうことがある。繰り返しのフレーズをカットしたら半分くらいに縮められるんじゃない?などと不謹慎なことを考えてしまったりもする。
一番手っ取り早いのは、日ごろのピアノの練習でバロックにもっと真剣に取り組むことだろうか。「バロック音楽にガチで向き合う」習慣を身に付けて、またバロック・オペラ鑑賞にチャレンジしたい。



演出:ロラン・ペリー
指揮:リナルド・アレッサンドリーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ジュリオ・チェーザレ:マリアンネ・ベアーテ・キーランド
クレオパトラ:森谷真理
トロメーオ:藤木大地
コルネーリア:加納悦子
セスト:金子美香
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