マーダーボット・ダイアリー 上@読書感想文

星5つ。本書が上巻であり1巻でないのが残念なほどだ。主人公一人称の「弊機」が名訳なのに異論はない。この初めて見る一人称から連想されるのは「弊社」だが、これは英語だとweでしかない。日本語の人称代名詞の語彙の豊富さは多くの人が述べているだろうから、くだくだ書かない。むしろ日本人としては他の言語の人がたった１つの人称代名詞で満足できることが理解できない。

それはさておき本書の2話目に一人称「本船」が現れる。私の推測だが訳者は、この愛すべきサブキャラクターの一人称を本船と訳した時に閃いて、それまで普通に「 私」と訳していた主人公の一人称を｢弊機｣に変更したのではないだろうか？
この「本船」が好きだ。「弊機」を簡単にひねりつぶすことが出来るほどのスーパーボットのくせに連続ドラマの怖い部分は「弊機 」と仮想的に手を繋いでいないと観れない。お節介焼きで「弊機」が 調べ事をしていると肩越しに覗きこんでくる。「弊機」は不平たらたらだ。解る。はたから見てると好ましいが実際に関わったらそうなるだろう。結局「弊機 」は「本船」に籠絡される。籠絡されるのが正しい。私はきちんと籠絡されるだろうか？
こんなにキャラの立ったキャラクターを使い捨てにする手はない。下巻にも登場することを期待する。その伏線もあるし。この「弊機」と「本船」のタッグは使い勝手良かろう。しゃばけみたいに16巻以上まで延ばしても良いのだよ？