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2021年06月11日22:34

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梅雨の城定祭り

 ポレポレ東中野で「梅雨の城定祭り」。前回の城定秀夫監督特集と違い上映開始が遅いのでなかなか行けず、今のところ1本のみ。
 18年の「覗かれる人妻 シュレーディンガーの女」。仕事をクビになった主人公は、女が扇風機を捨てるのを見る。一目で惹かれた主人公は、女をストーキングする。
 この冒頭から、「悦楽交差点」のセルフリメイクかと思った。しかしヒロインは「悦楽交差点」ほど強く性格付けされていないし、主人公も演じる俳優の個性もあって、違った印象を受ける。
 向かいのアパートから見えるヒロインは、夫と認知症の義父と暮らしている。1人煙草を吸うヒロインは、閉塞感を滲ませる。ファーストシーンの主人公が競馬で負ける場面から、台詞なしで状況をわからせる場面が多いのはさすがだ。
 ある日主人公は、ヒロインが覗き部屋で働いていることを知る。マジックミラー越しに裸を見せるヒロインに恍惚とする主人公。オプションを頼むが、別の風俗嬢が部屋に入ってきてがっかり。しかしヒロインの裸を見ながらカラむのは笑った。
 さらにヒロインの部屋で起きた小火から主人公は暴走、部屋に入り込む。ベッドに下着を置いての妄想に再び笑うが、帰宅したヒロインに殴られ昏倒。以後緊縛されて押し入れに入れられる。
 しかし夫がいないときは裸でいる捉えどころのないヒロインと、主人公を息子と誤認する義父の間で、家族のような存在になっていく。
 主人公が部屋に隠れている描写は、「味見したい人妻たち」「人妻セカンドバージン 私を襲って下さい」を思わせる。また主人公の意外な特技がここで生かされる。
 劇中に出てくる「シュレーティンガーの猫」のことはわからないが、「見られることで現実になる」とのことか。ヒロインは無味乾燥な生活の中で、見られることで現実に存在するようになる。
 しかしあくまで見る、見られるだけ。2人はセックスはおろか、まともな会話もしない。もっとも楽し気なのは、義父と3人でスイカの種を飛ばす場面。それでも含みを持たせたラストまで楽しめた。やはり城定監督作は面白い。
 主演の古澤裕介さんは、なんと劇団「ポツドール」の人。そして名前は変わっているが、関根和美組常連の緒川凛さんが健在ぶりを示しているのも嬉しい。
 
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