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2020年10月19日14:38

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最初の3ヶ月 18(作成中)

その少し前から、お昼休みにはカナコさんていう子のグループに入って食べるようになっていた。

ある日、いつものようにひとりで急いでお弁当食べていたら「こっちで一緒に食べよう」と誘われた。今だに顔と名前が一致しないくらい、地味な女の子。最初何言われたのか分からなくて止まっていると、その周りの3人が机を囲むように寄せてきた。
「ひとりで食べるよりみんなで食べた方が美味しいよ」
そうかなあ、と思いながらそのまま囲まれながら食べつづけた。その子たちが話をしているのに相槌をうつふりをしたり笑ったりした。ご飯が先に終わらないように、注意深くゆっくりお茶を飲みながら、皆が終るのを待っていた。
有り難いとは思う。ひとりだと、周りの目が気になる。グループに入ってる風だと、そこにポジションができて目立たなくなる。

そのことを帰りにヨッチンに話すと「友達できて良かったな」みたいに言われたけど、いや一回食べただけだからな?それを友達呼ばわりできないよ、と思った。

それでも次の日も「一緒に食べよう」と誘われた。断る理由は特に無いから、昨日と同じように囲まれながら食べる。次の日も。それが一週間続いた。会話する訳ではない。他の時間に声をかけられることもなく、ただお昼を食べるだけ。これでもう、お昼のレギュラーメンバー入りしたことになったんだろうか。まだまだ油断できない。

「女の子って面倒くさいよな」
帰り道、そうぶちまけてみた。前から度々言っていることだけど、その意味がよくわかった。周りの子のペースに合わせて動かなくてはいけない。食事の後トイレも自由に行けないし、トイレに行ったら雑談が終わるまで教室にも戻れない。とても不自由。でもヨッチンにそんなことわかるはずが無い。「そうなの?」と言っている。構わず続ける。「だからやっぱり男の子がいいなあ、男の子になりたい」「また言ってるよ、男も面倒だけどな?」「そうなん?なんかもっと自由で気楽そうじゃん」「入ってみないとわからないよ」「うーん、そうか…そうなんかもね」と言いつつ、わからないのだった。

「あのね、一つ聞いていい?」
「なに?」
「あたしね、じゃないや、ええと、あの…」なんて言ったらいいのか。「うーん、いや、聞くようなことじゃないか。…いや、いい。」
よほど私が神妙な顔をしていたのか、真顔にさせてしまってる。こらこら。「おい、そんなまじめに聞くとこじゃないよ、笑えよー」「言いかけて止めたら気になるし〜」「気になるし〜って、言い方面白い」「で、なんなん」
まあ、大した話じゃないよね、まあいいか。
「うん、あのね」
あかん、緊張して言葉が出ない。
「ちょっと待ってね、、えっとヨッチンて友達いっぱいいるよね」「いっぱいってことは無いけど、まあ何人かいるな」「リキコさんも友達よね?」「友達というか、腐れ縁というか。それで?」
「あのね、あたしって友達なの?」
「ええーとそれはつまりどういう、、」
「あんたのこと友達と呼んでもいい?」
やっと言えた。 

「…ともだち」2秒ほどの沈黙のあと、オウム返ししてきた。え、やっぱりダメなの?そうか、そうだよね。
笑ってそうか、なあんだ、と言おうとしたら「ええっと、元から友達だよね?」と返された。
「そうなの?」
「あの、逆に今までなんだと思っていたの?」
「今まで?うーんと、知ってる人…。」
「あ、そうなんだ。そうか…。」
「じゃあ友達と呼んでいいの?嬉しい。ありがとう」
「うん?あの、もしかして友達から、てやつじゃないよね?」「からって何よ」「いや、なんでもない、忘れて!あの、つまりただの友達なんだよね?」
「うん、ただの友達!」なんて素敵な響き。友達だけでもすごいのに、そこに「ただの」がつくなんて。まるで普通みたい。憧れていたやつ。
「あの、ただの友達だからな、知り合い言うてるようなもんだからな、分かってるよね?」

あの子にとっては友達なんて普通のことで、大したことではないんだろう。あたしは違う。受け入れられることがどんなに有り得ないことか分かる?すごく嬉しくて倒れそうだよ。
「うわ、あぶない」本当にふらついて自転車ごと倒れそうになるのを止められた。「あははは、ごめんぶつかった」「メイちゃん〜前見てないと〜」「ちゃんはやめて」頭に手を延ばしてワシワシする。
「ちょいちょい触ってくるけど、それなんなん?」
「あっダメだった?」「そうじゃなくて、何でなんかなと思って」「背が伸びるの止めてんの」「なんで」「越されたら腹立つから」「なんで」「上から見下ろされたらイヤじゃん」「そう言うても多分伸びるよ。ていうか、こっちこそ見下ろされたくないわ」「ああ、イヤだった?」と言って手を引っ込めた。
「ごめんねえ」今度から嫌がらせの時だけにしよう…と思った。

「ところで、友達って何すればいいの」「別に今まで通り、なんもせんでええよ」「そっか…。」
それって単に友達と名乗ってるだけみたいな…よくわからないけど、まあいいか。友達って言ってくれたんだから、それでいいや。
「あのさあ、メイって呼んで。それか春名さんかどっちかにして。」「なにそれ」「呼びにくかったらキャサリンとかでもいいよ」「うーん、気が向いたらな」「やった」「キャサリンは無いけどな」
この子があたしの友達。これから多分ずっと友達。こんな言葉で縛れないからあの子には言えないけれど、なるべく長く続けばいいなと願う。
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