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2017年12月10日20:50

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【オペラ】ばらの騎士(新国立劇場)

「ばらの騎士」は今まで2度見て、2度とも泣いた。そして3度目の今回も・・・泣いた。
何と美しく、何と切ないオペラなのだろう。作品全体に漂う退廃的な華麗さと無常観。オーケストラによる硬質な不協和音はクリスタルの鋭い輝きを連想させ、女声によるアンサンブルはシルクやベルベットに身を包むときのような陶酔感がある。結果としてはハッピーエンドだし、コメディの要素も多いし、悲劇が起きるわけでもないけれど、内省的で知的な元帥夫人の生き方に心が大きく揺さぶられた。

元帥夫人役のメルベートは新国立劇場によく登場するワーグナー・ソプラノ。毅然・悠然、貫禄のあるたたずまいで、期待通りの存在感。
オクタヴィアン役のアタナソフは華奢ではかなげな外見とは裏腹で、かなりの芸達者。颯爽、はつらつとした青年らしさもよく出ていたし、女装した男性のぎこちなさも絶妙。「飲めないから」と言いつつワインをがぶがぶあおったり、つぶれた声を出したりと、コメディエンヌのセンスもありそう。
ゾフィー役のシュルツはアフリカ系だろうか、褐色の肌が健康的でチャーミング。透明感のある素晴らしい声の持ち主。
オックス男爵は小太りで小柄な男性というイメージがあったが、演じたリンは背が高く足も長く、とても舞台映えする。堂々とした体躯でありながらひたすらダメダメというギャップが良い(笑)。

3度とも異なるプロダクションを鑑賞したが、3度とも舞台演出に大きな違いはない。いずれも第1幕は華美ではないが上質な元帥夫人の寝室、第2幕は羽振りの良いブルジョアであるファーニナルの屋敷、第3幕は場末の居酒屋がセットされていた。これはつまり、「時代や文化を超えた、普遍的な人間としての在り方」的なものを問うのではなく、作品が作られた「19世紀末から20世紀初頭のウィーン」が絶対的な前提であることを示していると言えるだろう。そういえば、「こうもり」と「ばらの騎士」だけはウィーンで生活したことがある人でないと分からない部分がある、という話を聞いたことがある。



演出:ジョナサン・ミラー
指揮:ウルフ・シルマー
元帥夫人:リカルダ・メルベート
オックス男爵:ユルゲン・リン
オクタヴィアン:ステファニー・アタナソフ
ファーニナル:クレメンス・ウンターライナー
ゾフィー:ゴルダ・シュルツ
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