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2017年03月02日01:08

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宇宙の意志

物質は、階層構造を成している。

宇宙は、物質の構成要素の最小単位である素粒子が原子を構成しないままてんでバラバラに散らかっている「素粒子スープ」でもなく、物質が重力で一点に押し潰されて構造を成さない「ブラックホールの塊」でもない。

素粒子がひとりでに組み上がって原子を形成し、原子がひとりでに組み上がって分子を形成し、タンパク質のような生体高分子を形作り、ついで細胞内小器官を、細胞内小器官が寄り集まって細胞を、単細胞生物が寄り集まって多細胞生物を、個体が種社会を、種社会が地球生態系を、地球をはじめとする惑星が太陽の周囲を周回する太陽系を、そして銀河系を、銀河系が銀河団を、銀河団が超銀河団を、作っている。

なぜ素粒子は散り散りバラバラに存在するのでなく原子として構造化されているのか。

そのような問題に対して物理学は、物理定数がファインチューニングされているからだと答える。

物理法則を表す計算式の中に出て来る「万有引力定数」や「光速度」や「プランク定数」などと呼ばれる物理定数の値がもし十の何十乗分の一でも違っていたら宇宙は「素粒子スープ」か「ブラックホールの塊」の段階に留まっていたに違いないとのことである。

しかし、果たして本当に、物質の階層構造が成り立っているという現象は、物理定数の値がどんぴしゃりであることのみによって説明できるのだろうか。

素粒子が原子という構造を構築する場合は、最も単純な構造である水素原子ですら、「クオーク」と呼ばれる素粒子が三つと「レプトン」と呼ばれる素粒子が一つで合計四つが力を及ぼし合うことによって出来上がっているのだけど、「三体問題」と言って、二つの惑星が万有引力を及ぼし合っている場合は軌道計算できるのに対して、三つ以上の惑星が万有引力を及ぼし合っている場合は複雑すぎて計算できない、ということが原理的に分かっている。

素粒子たちが力を及ぼし合っている「多体問題」である原子の振る舞いですら物理定数の値が与えられても計算し尽くせないのに、ミクロの素粒子からマクロの宇宙までの階層構造は、物理定数の値の設定だけで説明し尽くせるなどとなぜ断定できるのだろうか。

やはり、ひとりでにどんどん組み上がっていくという不可能なことを可能にする、目に見えない何かが、存在するのではないか。

目に見えないダークエネルギーやダークマターの正体がそれかもしれない。

プラトンのイデア論は、原子という個物は原子のイデアという抽象概念が具体化したものだ、とする哲学的議論である。

イデアとは目に見えない理想的な形で、たとえば、純粋な二次元の平面に幅のない直線で書かれた三角形にお目にかかったことがある人はいないのにもかかわらず、黒板にチョークで書かれた三角形の似姿を似姿として識別できるのは、三角形のイデアが心の中に存在してそれと現実を照合させているからだ、とプラトンは論じた。

プラトンのイデア論をキリスト教神学に取り入れたアウグスティヌスはイデアは神の心の中に存在すると言って、イデアの個物化とは霊の受肉のことであると言った。

物理法則に従っているだけでは組み上がらない階層構造が霊の関与によって組み上げられたのではないか。

ショーペンハウアーは、イデアの客観化の諸段階として、物質の階層構造を、説明しているのだけど、法則の支配に従っているだけでは組み上がっていくことが不可能な組成を神が段階的に組み上げていったと考えられはしないだろうか。

今から起きる事は今まで起きた事のみに起因するのでなく、因果法則という必然性に縛られない、原因なしに事を起こす能力が、すなわち自由意志が、存在するのではなかろうか。
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