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2016年11月22日18:37

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【映画】フランコフォニア ルーヴルの記憶

難解な映画だった。
まず、タイトル「フランコフォニア」の意味が分からない。
美術館の荷物を乗せた貨物船のダーク船長は、荒れた海の中で結局どうなってしまうのだろう?
ルーヴルの収蔵品を前に「これも私が集めたのだ」と得意気に語るナポレオン・ボナパルトの亡霊も微妙な感じだが、「自由・平等・博愛」とつぶやくだけの女性の存在は理解不能(まさかドラクロアの「民衆を導く自由の女神」ってことはないわよね?)。
美術館の貴重なコレクションや豪華な内装をゆっくりじっくり見られるわけではない。最後に「モナ・リザ」が映し出されるのも何となく気に入らない。
監督はきっとルーヴル美術館が大好きで、伝えたいことがありすぎるのだろう、という印象だ。

興味深かったのは、第二次世界大戦中のルーヴル美術館長ジョジャールと、パリで芸術品管理を統括するナチス将校メッテルニヒ伯爵との交流。2人は最後までお互いに心を開くことはなかったようだが、メッテルニヒはルーヴルの収蔵品がベルリンへ流出するのを防ぎ、ジョジャールは戦後にメッテルニヒの非ナチ化を支援し、ドライで事務的ながらもお互いのために尽力していたとのこと。戦争がなければ彼らは親友になれただろうか。

映画のチラシの裏面に「ルーヴルとはなんだ?」と書かれている。この問いに対する答えを自分なりに考えてみた。
ルーヴル美術館には古代文明の遺物から最新のセキュリティシステムまで、ありとあらゆるものが存在する。
ナポレオンが遠征先から美術品や遺跡の断片をパリに運んだ当時と比べて、今は梱包材や輸送手段が格段に進化している。(ダーク船長の貨物船は大しけに飲み込まれそうで、人間は自然には絶対に勝てないのだけれど、それでもいずれ、さらに進化した梱包材ができるだろう。)
ジョジャールたちのように戦争から作品を守る努力をした人々もいれば、映画には出てこないが時間による劣化からも作品を守るべく修復や研究に打ち込む人々もいる。
この映画における「ルーヴル」とは、ルーヴル美術館の建物並びにその所蔵品というよりも、人間の知恵と努力そのものを指しているのではないだろうか。ルーヴルとは何か。それはおそらく、人類の進歩の歴史なのだと思う。



監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:ルイ=ド・ドゥ・ランクザン、ベンヤミン・ウッツェラート ほか
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