明石スタジオで清水大敬監督主宰の劇団ザ・スラップスティック「過ぎ去って行く日々はやがて・・・切ない想い出に」を観る。原作は清水邦夫の「楽屋」で、何度か見ている芝居だが、大きく改変されている。
地方の高校演劇部から、東京の劇団に入る少女。皆に祝福されて旅立つのだが、この少女が10年後、枕を抱いた女優となる。楽屋の幽霊も、演出家の男が入り3人。フレッド・アステアへのあこがれを語る男は、演劇青年がそのまま年を重ねた感じ。女優も自らのキャリアを誇示しない。以前この役を演じた佐々木基子さんが、朗々とマクベス夫人の台詞を暗誦したのはしびれたが、この場面はない。代わりに火事から男を助けようとして死んだことを、後悔しないと言う。
冒頭で心を病む前のヒロインのはつらつのした姿を見ているし、役者の仕事にとりつかれたと感じるのはベテラン女優のみであり、彼らの純粋さが残る。だからこれまで新たな地獄と思われた「三人姉妹」も、希望に思えてくる。
そして10年ぶりに再会した演劇部員たちは、「一生懸命だった」ヒロインを回顧する、このエピローグでは、題名通り「切ない想い出」が生まれる。「君の瞳に恋してる」の群舞もあったり、原作とは違った味わいがある。原作との違いに驚かされるが、この感傷は悪くない。こんな解釈があってもいいと思わせた。
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