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2016年03月01日03:50

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映画『エヴェレスト 神々の山嶺』試写会の感想

★★★★★
 『エベレスト 3D』公開直後だっただけに、少し見下していました。けれども、邦画としては、現地オールロケのスケール感がたっぷりの力作で驚きました。
 これまでの山岳映画がどちらかというと遭難を描くことが中心でした。しかし本作は、もっと根源のなぜ活きるのかということを登山にかけた主人公によって熱く語られる人間ドラマとして描かれていたのです。どんな逆境に遭遇しても、折れることはない強い意志、生還への執念をスクリーンたっぷりに見せつけてくれる作品でした。

 夢枕獏の傑作山岳小説を実写化した本作は、山岳史上最大の謎を追う山岳カメラマンの深町誠(岡田)と伝説のクライマー・羽生丈二(阿部)、羽生を愛し続ける岸涼子(尾野真千子)の三人を中心に、世界最高峰の「神々の領域」であるエヴェレストの頂きに挑む人々の姿が描かれていきました。

 特に阿部寛が演じる孤高の天才クライマー・羽生の生き様は強烈そのもの。
「お前 何の為に生きてんだ 山やらなきゃ 死んだも同じだろ」
「生きて帰らなかったやつが頂上を踏んだかどうかはどうだっていい 死ねばゴミだ」
「俺がここにいるからだ。俺がいるから、山に登るんだ」
・・・と鬼気迫る表情を見せる羽生は、かつての仲間である登山仲間をして「山屋としては完璧だった。人間としては、最低だったけどね」と評される言葉通り、常人には理解できない思いをエヴェレストに向けていたのでした。
 ストーリーが佳境に入ると「日に日に阿部さんが火のような男になっていった」と共演者の岡田が絶賛するほど羽生を体現してみせた阿部の熱演がいいのです。しかも、CGでなく、実際にエヴェレスト5,200メートル付近で本人がスタント抜きでロッククライミングに挑戦としているところにハラハラさせられました。
 撮影された迫力の映像が光る一作です。

 そこで本作に思うことは登山家はなぜ山を目指すのかということです。羽生に言わせれば、そこに俺がいるから登るのだというのです。山とそれに対峙する自分がいれば、他に言葉など要らないという、言葉をこえた境地なんですね。
 そしてなんで冬山の危険な壁面にあえて挑戦するのかというと、そういう危険を冒さないと人間は生きている実感が湧かないものかもしれないということです。生活環境の整った都会で快適に生きていると次第に、活かされている有り難みすらも感じなくなって、日々を漫然と生きています。しかし登山で遭難しかかることで、一瞬一瞬にずしんと生きる意味を思い知らされることになるわけです。その醍醐味を味わってしまうと、人はより危険を求めて、神々が阻む極寒の領域に向かおうとするものではないでしょうか。

 そんな山男たちの重い重い生きる執念に出くわした作品でした。

●Introduction
 第11回柴田錬三郎賞を受賞し、漫画版と共にベストセラーを記録している夢枕獏の小説「神々の山嶺」を実写化したドラマ。あるクラシカルなカメラを手にした写真家が、カメラの逸話を調べるうちに孤高のアルピニストとして名をとどろかせた男の人生に触れていく姿を追い掛ける。出演は岡田准一、阿部寛、尾野真千子ら。メガホンを取るのは、『愛を乞うひと』、『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』などの平山秀幸。過酷な自然にぶつかっていく男たちの思いが交錯する熱いドラマに加え、大規模ロケを敢行したヒマラヤの荘厳な風景も見もの。

 ネパールの首都カトマンズ。ヒマラヤ山脈が見えるその街で、日本人カメラマンの深町誠は古めかしいカメラを見つける。それはイギリス人登山家ジョージ・マロリーが、1942年6月8日にエベレスト登頂に初めて成功したか否かが、判断できるかもしれないカメラだった。カメラについて調べを進める深町は、羽生丈二というアルピニストの存在にたどり着く。他人に配慮しない登山をするために孤高の人物となった彼の壮絶にして崇高な人生に触れるうちに、深町の胸にある思いが生まれる。
【日本公開:2016年3月12日】
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