YMOの新作ライブCDを聴く。
新作,っても2012年の録音だから,坂本氏がまだ療養前のライブ。
往年の名曲を演奏しても,常に現在の解釈を加え,決して懐メロにならないのが,彼らの凄いところだ。
ここでも坂本龍一の鮮やかな和声が冴える。マイナー13th(ハ長調だと,下からド・ミ♭・ソ・シ♭・レ・ファ・ラ)のテンションコード。
この響き,下から分散させて弾くとモダンジャズのビル・エヴァンスのI loves you,Porgy(作曲はガーシュウィン「ポーギーとベス」)のイントロと同じコードか。
で,ミ♭の♭を外してナチュラルにし,メジャーコードにすると,ラヴェルの「優雅にして感傷的なワルツ」第1曲の出だしと同じ和音であることに気付く。
どこに向かうか分からない調性の浮遊感と,ポピュラリティあふれる詩情豊かなメロディが織りなす,繊細で優美な音楽。
こうして,コード一つから,音楽の,時空や洋の東西を,そしてジャンルを超えた旅が始まる。
それは,森の中をさまようかのような,出会いと新鮮な驚きに満ちた世界だ。
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