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2018年02月27日22:30

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カーリングのことなど

オリンピックが終わってしまった。
メダルの数だけで言えることではないが、日本にとってはいいオリンピックだったように思う。
印象に残る場面がいくつもある。
中でもやはりカーリング女子だ。トリノでこの競技に魅せられて以来、オリンピックで観るのを楽しみにしている。
決勝トーナメントの2試合はいずれもピンと張り詰めた緊張感が途切れない名勝負だった。そんな中でも笑顔を絶やさない彼女たちが注目されるのは必然だと言えよう。
帰国後のメダリストを集めた会見でも、緊張した面持ちの多い中で彼女たちはみんな笑顔だった。
本当に素晴らしい銅メダルだと思う。

ただ能天気に明るいというわけではない。
藤澤選手も吉田知那美選手も挫折を経験してのLS北見加入だった。ことに吉田選手は前回オリンピックで5位入賞に大きく貢献しながら、帰国前の選手村で戦力外を告げられ、帰国後はチームの会見に出席させられるという、酷い仕打ちをされている。
それだけに弾けるような笑顔に心打たれる。

カーリングはスポーツではない、という意見もネット上では少なくないようだ。
私も最初はそう思った。まるでレレレのおじさんだな、とバカにしていたことを告白する。
しかし、トリノ大会で何気に見たら、これはすごい競技だと思い知らされた。
カーリングの試合を見て、それでもなおカーリングはスポーツではないという人は、おそらく真剣にスポーツに取り組んだことのない人か、頭まで筋肉でできている人なのだろう。
少しでもスポーツに取り組んだことのある人ならすぐにわかるはずだ。
スイープにはとてつもない体力を使うこと。一試合で一人がスイープする距離は2キロにも及ぶという。
体幹が鍛えられていなければストーンを投げられないこと。
5分間のもぐもぐタイムを除けばほぼ3時間氷の上に立ちっぱなしなこと。
その間集中力を保つ持久力と忍耐力が必要なこと。
さらに状況に応じて戦略を決める頭脳がなくてはならないこと。
ざっとそれだけ考えたってスポーツでないと捉えることの方が難しい。
確かに他の競技に比べてフィジカル面での要求は大きくないかもしれないが、その代わりメンタル面で求められるものは大きい。過酷なスポーツだと思う。

先日私はカーリングとアメリカンフットボールは似たところがあるとTwitter上でつぶやいた。
氷上のチェスと言われるカーリングとボールを使った格闘技と言われるアメフトでは共通するところなど全くなさそうに思われるだろう。確かに両極端にあるものだと思う。
ただ、戦略性の高さという点では相通じるものがある。もちろん戦略のないスポーツなどないであろう。それは承知している。
言いたいのはプレーが細切れでその都度作戦を練ることができるという点なのだ。
つまり、プレーをしていない時間があり、その時間でプレーのプランが決まるということは、プレーが始まるまでプレッシャーがかかるということでもある。
たとえばサッカーならペナルティーキックの場面、野球なら1点ビハインドの9回裏2死ランナー3塁で打席に向かう場面、を思い浮かべてほしい。はかりしれないほどのプレッシャーがかかる。そんな状況が試合中続くのだ。
メンタル面が相当強くないと務まらない。
なので彼女たちが笑顔で臨んでいるというのは理に適っていると思う。ポジティブ思考でなければ笑顔など出てこない。

そして、彼女たちは否定をしない。
スキップが出した戦略に対し、否定はしない。こういうのもあるけど、どうかな? そういう提案の仕方をする。代案を出すのではなく、選択肢を並べる、と言えばいいだろうか。そんなところにもポジティブ思考を見て取れる。
そもそもチーム全員で話し合うというチームは珍しいらしい。独裁ではなく、民主的。もしかしたら、日本の中でも珍しいのかもしれない。
藤澤選手の笑顔の多さにそう思った。
かつての彼女はいつも表情が硬かった。非常に冷たい印象だった。責任を全て背負い込んでいたのかもしれない。表情に出さないようにポーカーフェイスを通していたのかもしれない。

銅メダルを取ったからというのではなく、間違いなく日本史上最強のチームだろう。
笑う門には福来る、ではないが、笑顔は良きことをもたらすのだ。

ところで、カーリングの吉田姉妹もすごいが、スケートの高木姉妹もすごい。
妹の美帆は金銀銅のメダルコレクターだし、姉の菜那は日本女子初のダブル金だ。見事すぎて眩暈がする。

この両方の姉妹、どちらも姉の名前に「那」の文字が入っている。
偶然にすぎないだろうが、名前に頻繁に使われるとは言えない文字が使われているというのはおもしろい。

しかし、片や年間300日を合宿できる環境、片や別の仕事を持ちつつ競技を続けている状況、という違いがあることは覚えておくべきだ。
カーリングの置かれた環境は恵まれていない。
この銅メダルが状況を変えるきっかけとなれば良いと願う。

最後に、3位決定戦の最後のミュアヘッド選手の一投について触れておきたい。
あの場面で逆転勝利を狙って2点を取りに行ったのは正解である。仮に確実に1点を取り同点で延長に入ったとしたら、11エンドは日本の後攻になり点を取られる可能性が高い。つまり負ける可能性が高い。だとすればあそこで2点狙いは当然だと思うのだ。その方が確度が高い。
いつものミュアヘッドなら。
そう、いつものミュアヘッドなら確実に決めただろう。
しかし、試合の後半からミュアヘッドのショットが微妙に精度を欠いてきていたのだ。それは息詰まるような接戦だったからということもあったろうし、日本がプレッシャーをかけ続けたからということもあったろう。
いずれにせよ、ミュアヘッドは果敢に勝負に出て、敗れた。
日本にとっては運が良かった。しかし、偶然ではない。やるべきことをやり、プレッシャーをかけたことが、勝利を呼び込んだ。
あるいはその前の藤澤選手の僅かに狂ったショットが、ミュアヘッドにチャンスとともに動揺をもたらしたのかもしれない。
なんにせよ、あの名勝負は好敵手なくしてはありえなかった。英国の戦いぶりは賞賛すべきである。そしてミュアヘッドがとても優秀なスキップであることは誰もが知っているのだ。
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