これは、クジラに呑み込まれたダイバーのサバイバルを描いたピューリッツァー賞受賞作家ダニエル・クラウスの同題小説を、プレデター:バッドランド」の脚本などを手がけてきたブライアン・ダッフィールド監督が映画化したもの。原作者のダニエル・クラウスも、脚本を共著するなど協力していると言う。
主演は、「バイオハザード」のオースティン・エイブラムス。共演は、ジョシュ・ブローリンに、エリザベス・シュー。
名ダイバーだった父は、肺病で潜れなくなった事に絶望して海で自殺した――強圧的だった父に反発して家を出、一周忌に漸く帰省したジェイは、遂に遺体が揚がらなかった父の遺骨を探しに、父の死んだ海に潜る。
捜索中に、ジェイはダイオウイカを追うマッコウクジラに遭遇……イカの足に身体を絡め取られ、イカと共にクジラに呑み込まれてしまう。タイムリミットは1時間。クジラの腹の中、ジェイはダイビングの師である父親から授かった知恵を頼りに脱出を試みるが……
本作の原題は「Whalefall」……死んだクジラが海底に沈んで行く事を示す言葉だ。つまり、(海底に)落ちて行くのはクジラであり、主人公の事ではない……この邦題は、ちょっとミスマッチのように思う。
本作が描くように、獲物を追うクジラがダイバーを誤って口にしてしまう事例は、過去に数例存在し、本作は、それを参考にしているものと思われる。(ただし、現実では何れもすぐに吐き出されている)
なので、クジラに呑まれてからの描写は全て創作、と言う事になるだろう。
気になったのは、そのクジラの体内の描写が、ちょっと非現実的であった事――そこにはどこから生じたのか判らない空気があり、明かりがある……と言うのは、あまりにご都合主義が過ぎる、と思えた。
そして、物語は、クジラの体内で、ジェイが父からの教訓を思い起こし、生きる為に足掻くうち、父の想いの真意を理解して受け入れて行く……と言う展開まではよかったが、物語は、その先で、クジラと父親が同一となって行く、と言う奇妙な展開を見せるのだ。全て受け入れる大海に母、そして力強く理解不能なクジラに父を重ね、息子の目から家族を再構築すると共に、クジラに重ねて父を改めて葬る話、と理解はしたものの、いささか強引過ぎる展開であり、正直、受け入れ難いものがあった。
映像的には見るべきものがあり、特にダイオウイカ捕食シーンで、深海では墨が無意味なので発光液を目潰しに吐く、と言う描写や、深深度でのシャチの襲撃など、唸らされる映像表現もあったし、空気残存時間のタイムサスペンスありの脱出劇として面白くなる要素もあっただけに、クジラと父を同一視する、ついて行けない展開にもやもやし、物語に入り込めなかったのが残念な1本だった。
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