これは「横道世之介」の沖田修一監督が、オリジナル脚本により紡ぎ出す3人の“さとこ”たちが織りなす人生模様。
出演は、石田ひかり、有村架純、姫野花春のトリプルヒロインとなる。
思わぬ場所で出会った同級生に恋する鼻炎持ちの中学3年生・中井聡子、15歳。韓流ドラマを愛し、映画配給会社の宣伝部で働きつつ、6年目になる不倫が倦怠期を迎えている西田沙都子、35歳。子育てが一段落、ようやく自分の時間ができた飯島里子、55歳。それぞれに降りかかる出来事や妄想をきっかけに、3人は、自分の人生を小説として書き始める……
映画は、トリプルヒロインによる3つのエピソードを平行には走らせず、年齢順に描き、最後に合流する、と言う構成……最後に3人が揃う事で、同じ時代を生きている、と言うのが明確にはなるのだけど、それまで各エピソードに微妙な仕掛けがしてあり、随所で「あれ?」と思わせるのが沖田修一らしい所。
そんな3つのエピソードでは、ひとつめの15歳の聡子編が抜群に面白い――耳鼻科で吸引器を鼻に刺した、ちょい恥ずかしい登場で心を掴むと、少女らしい初心さとずぼらが同居する聡子が、自分でも気づいていなかった「書く」才能を見出され、やがて没頭して行く様に引き込まれる。
聡子の「書く」才能を引き出した、吉田羊演じる国語の寺尾先生の生み出す違和感、そして、15歳が向き合う様々な“初めて”を妄想で膨らませ、それを「書く」のに試行錯誤する様など、これは自分でも(今でもこうして文章を書いてはいるが)、思い当たる事もあり、楽しいやらムズ痒いやらで、聡子と、その世界にすっかり魅了されてしまったし、SNSの広がりで、「書く」事のハードルが下がった現在だからこそ、引き込まれる人も少なくないのではないだろうか?
聡子を演じた姫野花春は、オーディションで選ばれた新人で、映画は勿論、本格的な芝居も初めて、と言う事だが、この存在感と演技力は素晴らしい。
この最初のエピソードが面白すぎて、割を食った感じもあるが、2つ目の沙都子のエピソードの、映画宣伝のリアルさを垣間見せる部分は面白いし、演じる有村架純の可愛さと図太さを同居させ、独特の間合いで見せる演技も楽しい。3つ目の里子は、がらりを雰囲気を変えてファンタジー仕立てとし、ここでは小鳥の描写に人形アニメを使うなどの工夫を凝らすなど、それぞれに趣向を変え、そして他のエピソードも絡ませていくのも楽しい。
作中で言う、「誰でも一冊なら本を書ける」と言うのは、自分の人生の事なのだ――その人の人生は、唯一無比のドラマであるのだから、と言う人生賛歌でもある――初恋、不倫、第二の人生、と言う人生の節目でそのドラマを「書いた」3人は、「書く」楽しさを知り、新たなドラマに向かって歩き出すのだ、と言うラストも心地よい。
これは沖田修一らしい、軽やかでやさしい映画……力を入れるばかりがドラマではないし、時にはこうしたふんわりとした映画もいい。
PS
最後の小説教室、そこで3人を指導するのが、中学校を辞めた寺尾先生だったらよかったのに……
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