mixiユーザー(id:124952)

2026年10月10日08:07

48 view

「さとこはいつも」感想

 これは「横道世之介」の沖田修一監督が、オリジナル脚本により紡ぎ出す3人の“さとこ”たちが織りなす人生模様。
 出演は、石田ひかり、有村架純、姫野花春のトリプルヒロインとなる。

 思わぬ場所で出会った同級生に恋する鼻炎持ちの中学3年生・中井聡子、15歳。韓流ドラマを愛し、映画配給会社の宣伝部で働きつつ、6年目になる不倫が倦怠期を迎えている西田沙都子、35歳。子育てが一段落、ようやく自分の時間ができた飯島里子、55歳。それぞれに降りかかる出来事や妄想をきっかけに、3人は、自分の人生を小説として書き始める……

 映画は、トリプルヒロインによる3つのエピソードを平行には走らせず、年齢順に描き、最後に合流する、と言う構成……最後に3人が揃う事で、同じ時代を生きている、と言うのが明確にはなるのだけど、それまで各エピソードに微妙な仕掛けがしてあり、随所で「あれ?」と思わせるのが沖田修一らしい所。

 そんな3つのエピソードでは、ひとつめの15歳の聡子編が抜群に面白い――耳鼻科で吸引器を鼻に刺した、ちょい恥ずかしい登場で心を掴むと、少女らしい初心さとずぼらが同居する聡子が、自分でも気づいていなかった「書く」才能を見出され、やがて没頭して行く様に引き込まれる。
 聡子の「書く」才能を引き出した、吉田羊演じる国語の寺尾先生の生み出す違和感、そして、15歳が向き合う様々な“初めて”を妄想で膨らませ、それを「書く」のに試行錯誤する様など、これは自分でも(今でもこうして文章を書いてはいるが)、思い当たる事もあり、楽しいやらムズ痒いやらで、聡子と、その世界にすっかり魅了されてしまったし、SNSの広がりで、「書く」事のハードルが下がった現在だからこそ、引き込まれる人も少なくないのではないだろうか?
 聡子を演じた姫野花春は、オーディションで選ばれた新人で、映画は勿論、本格的な芝居も初めて、と言う事だが、この存在感と演技力は素晴らしい。

 この最初のエピソードが面白すぎて、割を食った感じもあるが、2つ目の沙都子のエピソードの、映画宣伝のリアルさを垣間見せる部分は面白いし、演じる有村架純の可愛さと図太さを同居させ、独特の間合いで見せる演技も楽しい。3つ目の里子は、がらりを雰囲気を変えてファンタジー仕立てとし、ここでは小鳥の描写に人形アニメを使うなどの工夫を凝らすなど、それぞれに趣向を変え、そして他のエピソードも絡ませていくのも楽しい。

 作中で言う、「誰でも一冊なら本を書ける」と言うのは、自分の人生の事なのだ――その人の人生は、唯一無比のドラマであるのだから、と言う人生賛歌でもある――初恋、不倫、第二の人生、と言う人生の節目でそのドラマを「書いた」3人は、「書く」楽しさを知り、新たなドラマに向かって歩き出すのだ、と言うラストも心地よい。
 これは沖田修一らしい、軽やかでやさしい映画……力を入れるばかりがドラマではないし、時にはこうしたふんわりとした映画もいい。


PS
 最後の小説教室、そこで3人を指導するのが、中学校を辞めた寺尾先生だったらよかったのに……
0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年10月
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年