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2026年09月13日07:47

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クイズ番組と解答者の守備範囲

かつて『Qダービー』という番組があった。
解答者の席は枠でほぼ固定されていて、1枠がゲスト、2枠がベテラン女優M、3枠が大学教授S、4枠が美人女優T、5枠が漫画家H、といった具合である。司会者はK。視聴者代表は、その中の誰が正解しそうかを見てポイントを賭ける。

誰も貶すつもりはないので実名でも構わないのだが、ここでは構造として考えたいのでアルファベットにしておく。

この番組の面白さは、司会者が問題ごとにオッズをつけるところだった。
たとえばS教授は仏文学が専門だから、フランス関係の問題では低倍率になる。賭けても当たった時の戻りは少ない。つまり出題者の側が、「この問題ならこの人がどれくらい当てそうか」という期待値を、露骨に数字にして見せているわけである。

これはなかなかすごい仕組みだったと思う。
単に「誰が物知りか」を競うのではなく、「知識には守備範囲がある」ことを、ゲームの形で可視化していたからだ。

とくに最終問題には、その感じがよく出ていた。
記憶が確かなら、S教授の専門ど真ん中や、ベテラン女優Mの得意そうな映画・演劇の分野からは、ほとんど出題されなかった。そこで2枠や3枠には高オッズがつき、4枠・5枠は低オッズ、ことに5枠は「1倍」などと言われることも多かった。もっとも最終問題なので、オッズ全体にはサービスで一律に2倍がかかっていたはずである。

視聴者代表は、それまでに獲得したポイントとの兼ね合いも見ながら、誰に賭けるかを決める。たしか「何ポイント以上必要」といった設計もあった筈だが、そこはもう曖昧だ。

結果としては、漫画家や美人女優の4枠・5枠が正解することが多く、だいたいオッズの期待通りに収まっていた印象がある。あまりに期待通りすぎて、少しぐらいは番組的な調整があったのでは、と疑いたくもなる。

とはいえ、ここで大事なのは、視聴者が最終問題を外しがちなS教授やベテラン女優Mを見て、「この人たちは知識がない」とは思っていなかっただろう、ということである。
むしろ、知識には偏りがあり、専門が深い人ほど守備範囲は狭くなりうるし、逆に広く対応できる人は、そのぶん別の種類の強さを持っている、ということを皆なんとなく了解していたのではないか。

知には、少なくとも「深さ」と「広がり」という違った尺度がある。
深く掘れば、そのぶん届く範囲は狭くなる。
広く覆えば、そのぶん一か所の深さは薄くなる。
『Qダービー』は、そのことをオッズという形で、妙に分かりやすく見せてくれるクイズ番組だったように思う。


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