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2025年05月02日13:50

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「エミリア・ペレス」感想

 これは、2024年のカンヌ国際映画祭で、審査員賞・女優賞・サウンドトラック賞に輝いた異色のミュージカル。
 カンヌでは、主演を含む主要4女優が同時受賞となり、主演のカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初のトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞している。
 脚本・監督は「ディーパンの戦い」、「パリ 13区」のジャック・オディアール。

 メキシコで働く弁護士のリタは、麻薬カルテルのボス・マニタスから女性としての新たな人生を用意してほしいという極秘の依頼を受ける。
 リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、イギリスで新たな人生を歩むリタの前に現れたのは、女性として新しい人生を生きるエミリア・ペレス、かつてのマニタスだった。そして、過去と現在、罪と救済、愛と憎しみを絡め、彼女たちの人生が再び動き出す――

 これはメキシコが舞台で全編ほぼスペイン語のミュージカル映画なのだけど、これはフランス映画――キャストも当初から問題指摘されており、カルラ・ソフィア・ガスコンはスペイン人、セレーナ・ゴメスはメキシコ系アメリカ人で、特にセレーナのスペイン語は「メキシコじゃ通じない」と、散々な言われよう。止めはカルラ・ソフィア・ガスコンの過去のSNS上の差別発言で、アカデミー賞では12部門でノミネートされていたのに、2部門の受賞に終わる、と言う結果となってしまった。

 物語は、メキシコの麻薬王が、性適合手術により人生を再構築する、と言うもので、トランスジェンダーと、その“家族”の関係を問い、犯罪者としての過去に対峙するかのように贖罪的な事業に走るのだが、皮肉な事に、その“家族”が過去を引き寄せてしまう、と言うもので、オディアール監督の過去作「ディーパンの戦い」に重なる部分もある、社会的で重厚なもの。しかも、状況が二転三転とするサスペンスフルな展開で、物語の着地点を容易に予測される事がない。これは大変によく出来た話だと思う。
 異色なのは、そんな物語を本格的なミュージカル仕立てにしている事だ。
 しかも、通常、ミュージカルパートと言うと、内心を吐露してからのパラダイムシフトなど、物語を推し進め、ドラマティックに演出する場面で多用される印象があるが、本作では困惑や混乱、それと議論など、これまであまりミュージカルパートにしていない場面でも取り入れており、意欲的だ、と思わせる。
 実際、ミュージカル演出としては見るべき所も多く、冒頭、それからパーティー会場でのゾーイ・サルダナのパートでの身のこなしは素晴らしいものだし、所在のなさに心引き裂かれる様を歌うセレーナ・ゴメスのカラオケシーンの演出も見事。ただ、今までにない取り組みもあるだけに、上手く行っていない場面も散見され、「普通の演出で見せて」と思う時もあったのは事実だ。

 物語には力がある、と思うだけに、これはストレートなメロドラマにしてもよかったのでは……いささか趣向に走り過ぎて、肝心の映画の“心”が何処かに行ってしまったような印象を受けた。
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