これは、国際的な児童誘拐と人身売買から、被害児童の救出に尽力した実在の捜査官を「パッション」のジム・カヴィーゼルが演じた社会派サスペンス。
監督は、「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」のアレハンドロ・モンテベルデ。「パッション」で監督として、ジム・カヴィーゼルと組んだメル・ギブソンが製作総指揮として参加している。
アメリカ国土安全保障省の捜査官ティム・バラードは、児童ポルノと人身売買の摘発を担当していたが、ある事件で、囮捜査により被害児童を救出する事に成功。助け出した8歳の少年から、11歳の姉も人身売買組織に捕らえられている事を知る。
ティムは、少年の話から、事件の温床となっている南米コロンビアに飛び、地元警察をはじめ、資金提供を申し出てきた資産家、訳ありの前科者などの協力の元、大規模な囮作戦を計画するが――
これは、児童誘拐&人身売買の実態を描く映画。
20世紀に奴隷制度がなくなった現在、皮肉な事に奴隷的立場におかれる人々の数は19世紀よりも多く、その多くが性奴隷で、うち未成年者だけでも数百万人になる、と言う現実に唖然とする。
その“市場規模”は1500億ドルとも言われる。また、近年問題となっているのは児童ポルノや、児童を性対象とする事で、映画が製作された2018年の時点で、そのスケールは5年前の5000倍に膨れ上がっているのだ、と……
これは、そんな現実で、職務を超えて誘拐自動奪還を行ったひとりの男の物語で、これを実名で描いている。(最後は本人の写真と、実際の奪還作戦時の写真にモーフィングする)
映画でも描かれる、職務を超えて、子供たちの救出に尽力したティム・バラードの行為は正に賞賛すべきものではあるのだが、彼が奪還し、親元に帰る事の出来た児童は120名……その背後にある、数百万人と言う数字の前には言葉を失う。
正に、社会派映画として、この現実を知らしめる為にも、本作は意義ある映画と思う。
それでも、気になったのは、この映画が、“児童ポルノ”として消費されるものであってはならない為、醜悪な犯罪行為そのものを直接描写せず、インパクトに欠ける部分がある事……まぁ、これはやむを得ないだろう、だが、その結果、描写は、子供たちではなく、捜査官視点に偏り、結果として、潜入捜査もののサスペンス映画として、普通にエンターテイメントしている事……これも商業映画としてはやむを得ないだろうが、それでも、割り切れないものが残った。
尚、映画はエンドロールに、ジム・カヴィーゼルのメッセージと共に、QRコードを掲載。このQRコードを撮影、映画館で提示すれば無料鑑賞出来るので、広く拡散して欲しいと訴える。
この映画を、「21世紀の『アンクル・トムの小屋』」とし、現在の奴隷たちを解放するのだ、と――これは、さすがに映画会社と映画館もよくやった、と思う。(尚、日本公開では非対応)
また、この映画、製作から公開まで5年を要し、それは、未成年者の性奴隷の最大消費地がアメリカであり、それ故に様々な方面から本作の公開に際して妨害があったからだ、と言う……そんな現実にも考えさせられてしまう映画だった。
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