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2024年05月18日10:25

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5月の詩

 5月になると、清水哲男さんの「美しい五月」という詩を思い出します。恋愛詩ですが、1960年代の激しい学生運動が背景になっています。初めて読んだのは学生運動も下火になった70年代半ば頃。自分も詩を書きはじめ、またひとりの女性に夢中で恋をしていた頃でした。

     美しい五月

  唄が火に包まれる
  楽器の浅い水が揺れる
  頬と帽子をかすめて飛ぶ
  ナイフのような希望を捨てて
  私は何処へ歩こうか
  記憶の石英を剥すために
  握った果実は投げなければ
  たった一人を呼び返すために
  声の刺青は消さなければ
  私はあきらめる
  光の中の出合いを
  私はあきらめる
  かがみこむほどの愛を
  私はあきらめる
  そして五月を。
    (『水の上衣』所収)

 僕も5月の詩はいくつか書いています。そのうちの1篇を紹介します。

    フトンの上で

五月
世界の終わり

女の子は蛇口を上に向けて水を飲む
噴き上げる水がきらきらひかる

グランドに
ポプラの陰がさらさらゆれる

空から椅子が落ちてくる
ビルや人や電話や箱が落ちてくる

女の子は手をふいて 暗い校舎へと向う
空にパラシュートがひらく

川面が映る
川べりでカバが草を食んでいる
うまそうに脇目もふらず食んでいる
水がきらきらひかる
カバって何料
カバ科 河の馬 水かきだってあるんだよ
カッパみたいね
二人
フトンの上で
しみじみと朝のアフリカに見入る
    (『キリンの洗濯』所収)  

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