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2024年04月28日06:04

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木星の第1衛星イオの火山活動、太陽系初期から続いていたことが判明

 木星の第1衛星「イオ」は、全球を覆うほどの活発な火山活動で知られるが、イオの火山活動に関する研究は半世紀前の1979年に始まった。この年、NASAの探査機ボイジャー1号が木星系を通過し、この時撮られた写真にイオ表面から噴き上げる巨大な火山噴出物(写真)に研究者が初めて気がついたのだ。

◎地球の都市域よりも広大な溶岩の海
 その後のNASAの様々な探査機で、イオの活発な火山活動が明らかになった(写真=イオの北極域の火山と流れ出た溶岩〔2023年10月15日、NASAの探査機「ジュノー」によって撮影された〕と全球での火山活動)。
 イオは、全球が降り注いだ硫黄と火山噴出物で褐色に染まっている(写真)。
 太陽系の衛星でもイオほどの活発な火山活動は知られていない(写真=イオの火山活動を示した合成画像。ジュノーがイオの近くを通過した際に可視光と赤外線で観測したデータを使って作成された)。表面のあちこちに地球の都市域よりも広大な溶岩の海が広がり、空には火山が吐き出す噴煙が地獄の傘のように広がっている。
 では、イオはいつからこのような天体になったのだろうか。

◎イオの外側の2大衛星による軌道共鳴
 科学者たちはこれまで、イオがたどってきた歴史についてはほとんど何も知らなかったが、アメリカの科学誌『サイエンス』2024年4月18日号に発表された論文で、イオは何十億年も、ことによると太陽系が誕生して間もない45億年前からずっとこのような大規模噴火を繰り返してきたらしいと推定された。近年の研究で、土星の環が形成されたのはわずか数億年前だと示された。しかしイオの活発な火山活動は、太陽が輝き始めた頃からずっと続いてきたのだ。
 この予測は、イオと、木星の第2衛星エウロパと第3衛星ガニメデの奇妙な軌道運動から導き出された。ガニメデが木星の周りを1周するたびに、エウロパは2周し、イオは4周する。「軌道共鳴」として知られるこのリズムは、イオの公転軌道を変化させ、円ではなく楕円の軌道をとらせている。

◎楕円軌道で100メートルも球体が動いて生じる大きな潮汐過熱
 楕円軌道をめぐるイオが木星から受ける引力は、木星に近い所ではさらに強くなり、遠い所ではやや弱くなる。そのためイオは周期的に変形していて、軌道を1周する間にその表面は約100メートルも上下している。
 この変形により大きな摩擦が生じ、恐ろしいほどの熱が発生する。「潮汐加熱」と呼ばれる現象だ。イオの内部では、この熱が大量の岩石を溶かし、おそらくマグマの海を作り出している。それにより、イオの地表で激しい噴火が起こり、地球の多くの川よりも長い溶岩の川が流れ、硫黄を多く含む溶岩が空高く噴き上げられ、地下世界への入り口のような火口が出来ていると考えられている。

◎イオから毎秒3トンもの物質が宇宙空間に逃げ出す
 では、イオの潮汐加熱がいつ始まったのだろうか。表面からはうかがえない。イオの火山活動は非常に活発だから、表面は溶岩流で繰り返し更新されているため、古代の地質学的過程の証拠は埋もれてしまっている。
 では、科学者たちはどうしたか。カリフォルニア工科大学の惑星科学者で、今回論文の筆頭著者キャサリン・デ・クレア准教授らは、イオの大気中に含まれる火山噴出物に注目した。
 イオの火山から噴出した物質の多くは、薄い大気を通り抜けて宇宙空間に逃げ出す。失われる大気も合わせると、イオからは毎秒3トンもの物質が宇宙空間に放出されていると見積もられている。

◎硫黄の同位体比を推定
 その結果、イオの大気中に含まれる火山噴出物は、重い同位体が多くなっているはずだ。なぜなら、大気の上層部にある軽い同位体は宇宙空間に逃げ出しやすいからだ。
 そこで、現在の大気中の火山噴出物と、原初の状態を保っている物質でそれぞれの同位体の比率を測定できれば、現在のような状態になるまでにどのくらいの時間がかかるかを計算できる。
 デ・クレア准教授らのチームは、チリのアルマ望遠鏡を使って、イオの大気中のガス、特に硫黄を含む物質を観測した。彼らはまた、太陽系が誕生した当初の平均的な化学組成を保存している古い隕石などを利用して、イオの「本来」の同位体比も推定した。

◎本来の硫黄の95%前後が失われ、45億年かかった
 その結果、イオは本来持っていた硫黄の94〜99%を失っていることが分かった。イオを含む木星の内側の衛星の進化に関する既存のモデルと合うように、この数字を説明するには、イオの噴火がおそらく45億年前からずっと続いていると解釈するしかないという結果になった。
 同様に潮汐作用を受ける第2衛星エウロパの海も同じくらい古い可能性が考えられるという。もしエウロパの海の起源がこれほど古ければ、海中での生命進化に十分な時間があったかもしれず、今後のエウロパでの生命探査活動に期待される。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202404280000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「函館の旅(1):北海道新幹線終着の新函館北斗駅で考えたこと」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202304280000/

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