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2024年02月20日15:15

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スタンフォードのビジネススクールで 一番人気の授業は人間関係の作り方

入山章栄、加藤雅俊、清水和彦、牧兼充



牧 起業教育と言っていること自体が古いと思っています。
多様なキャリアを認め、自分とは違うタイプの人とチームを組むとか
そういったカルチャーがあればすべての職業が今よりもうまく回ると思います。

スタンフォードのビジネススクールで一番人気の授業は
経営関連のものではありません。
選択科目で人間関係の作り方を教える授業が一番人気なのです。
日本の大学にはそういうカリキュラムがありません。
こうしたカリキュラムを小学校、中学校、高校も含めてやるといいのではと思います。

入山 いいですね。そういうことをきちんと教育するのですね。

先日、参加したパネルセッションで、米国と日本のトップエグゼクティブに
「なぜ自分は成功したと思うか」という質問をした調査結果を見ました。
米国で一番多かった理由は人脈です。日本は1位が頑張ったから、2位は運です。
米国人は運なんて考えていません。

個人的な意見ですが、日本人が言う運というのは実は人脈だと思います。
あの人に助けられた、苦しいときに支えてくれたとか、
人脈から得られたものを運が良かったと受けとめているのだと思います。

米国のエグゼクティブは、戦略的に対人関係を作ることの大切さ、
対人関係が仕事もキャリアも豊かにするということがわかっているのでしょう。

私と牧さんのいる早稲田のビジネススクールも
こうした授業をほとんど設定していませんよね。作らなきゃ。

牧 日本人全般が対人関係を作るといったソフトスキルを軽視している気がします。
ファイナンスのようなハードスキルの授業を取った方がお金を払った気になる、
学んだ気になるというのはあるのでしょうが。

入山 日本の大企業の人たちは同質性が高いから、
同調圧力があるし、暗黙の空気があります。
それゆえ、異質な人ときちんと交渉していい関係を作るということが苦手です。
米国は、多様性があるから異質な人と交渉していかざるを得ません。

牧 高校の部活のメンバーに多様性があったらいい教育になるでしょう。
起業家教育の前に、本質的な部分でこういう教育の場を
もっと増やさないといけないです。

入山 私も米国に行ったときにソフトスキル能力が低かったから
泣きそうになりました
(苦笑)。パーティーとかで一言もしゃべれないから。

加藤 初めて入山さんとあったのはイタリアのミラノのコンファレンスでしたが、
入山さん、静かでしたね。黙って壁にもたれて。

入山 恥ずかしい。

清水 面白いですね。通常、ビジネススクールでは
ハードスキルが大切と思っている人が多いと思いますが、
実はそれよりも対人関係を作るようなソフトスキルの方が大切だということですね。

日本人はソフトスキルにたけているように思われますが、
それは同質性の高い場における話であって、
異質な人が集まる多様性のある場での話ではありません。
日本で大企業とスタートアップの間で連携が進まないのも
そのあたりが原因かもしれません。
両社の間で理解し合えるようになると動くスピードがアップするのではと思います。

こういうことはこれまであまり議論されてきませんでした。

牧 ハードスキルは今やオンラインで学べるので
ビジネススクールとかに行って対面で学ぶ必要もないかもしれません。
でも、対人関係は、実際に会っていろいろな失敗をして
交流して学んでいかないといけないところもあります。
そういうところが大学に残されていた役割かと思います。

入山 早稲田のビジネススクールの学生を、留学生の多い早稲田の国際教養学部で
一時的に学ばせようかな。

牧 そうするとソフトスキルがかなり上がると思います。

一方、経産省の施策にも多いのですが、
すぐ日本人を海外に送ろうとすることの効果を疑問視しています。
1週間ぐらい、もしくは1年でも海外に行くのは旅行です。
それでマインドセットが大きく変わるでしょうか。

20年前にアジアの他の国が学生を米国の博士課程に多数送り込んで、
博士号を取得した後にシリコンバレーのスタートアップで働いて出身国に戻りました。
こうしたことで人材の層が厚くなりました。

海外に行かせるならそれぐらいの期間を与えないと
エコシステムに資するようにはなりません。
今であれば海外にいる人材を東京に引っ張ってくることを考えた方が
いいような気がします。

清水 実地で学ぶということですね。来てもらうにして行くにしても。
そこまで体験しないとマインドの変化までいかないのでしょうね。

大企業によるスタートアップ買収や
スピンオフとカーブアウトを増やしていく

加藤 起業しようという人材が出てこない場合、どうするかと考えたときに、
大企業の従業員の独立、スピンオフ(編集部注:社内から独立させその後も支援を続ける形態)を増やすという方法があります。
税制上の支援措置もありますが、他に活性化させる方策はあるでしょうか。

入山 私は経団連と一緒にスタートアップフレンドリースコアリングという
指数を作りました。
経団連がスタートアップを盛り上げるための指数を作りたいということで
私にお鉢が回ってきました。

そのときに大企業を評価する上での三つの段階を挙げました。
第一段階はスタートアップに投資をする、スタートアップの製品を購入するということ。これは今、多くの会社がやり始めています。

第二段階は、スタートアップを買収することです。
現在の日本ではスタートアップのエグジットが株式公開しかありません。
その結果、公開したのはいいのですが
その後パフォーマンスの上がらないスタートアップが多数あります。

大企業が買収することでそれがエグジットの選択肢の一つになります。
買収して買収先の資源を使ってイノベーションを起こすことが大事です。


第三段階は、大企業のリソースを外に切り出すことです。
人材の輩出、スピンオフ、カーブアウト
(編集部注:独立させた後は一切支援をしない形態)です。

第一段階では経団連加盟会社はそこそこスコアを上げています。
第二段階を実践しているのはKDDIなど数社です。第三段階に至ってはゼロです。

第二、第三段階の企業を増やしていくことが重要です。

デロイト トーマツベンチャーサポートが日本の大企業から
300人ぐらい社長を出すというプロジェクトを進めています。
大企業とスタートアップでジョイントベンチャーを作り、
大企業の優秀な人材を社長にします。
スタートアップのスピード感と大企業のリソースがうまくかみ合っているようです。

大企業から社長を出すため失敗する可能性も高いです。
ただ、社長になった人にとっては経営者としてものすごくいい経験になります。
失敗してもいい経験になるということで大企業の社内では稟議が通りやすいそうです。
さらに、社長になった大企業の若手は
会社へのロイヤルティーが高まって辞めなくなるそうです。

こうした企業を成長させる鍵になるのはストックオプションです。
頑張っても自分の給料の範囲でしかお金がもらえないのではやる気になりません。
うまくいけばお金持ちになれるから頑張るわけです。
そのためのインセンティブとしてストックオプションが必要です。

清水 本社の役員よりも報酬を手にする可能性にもなるため、
ストックオプションを付けることでも議論になることがあるそうです。
私自身もカーブアウトしたときに、出身元の会社でも議論があったようです。

ただ、オーナー社長の一存で付けることが決まるのですが。
人材を出す側にそうしたカーブアウト先の判断を尊重してくれる
創業者や志のある人がいないと
カーブアウト先やジョイントベンチャーの社長も頑張り切れないです。

「日本は対人関係を作るスキルを軽視」
牧 日本のエコシステムや日本の大企業に適した
スタートアップの立ち上げ方があるのだと思います。
シリコンバレーでベンチャーキャピタルをやっていた大澤弘治さんが今、
日本でグローバルカタリストパートナーズ(GCPJ)というベンチャーキャピタルを
設立しストラクチャースピンとして仕組みを実践しています。

私も、早稲田大学ビジネススクールで
そういった起業家予備軍を育成するプログラムをGCPJと共同で開発し、
担当しています。

スピンオフした先にグローバルカタリストパートナーズが出資し、
その会社がうまくいったらスピンオフ元が買い戻す権利を持っているというものです。
うまくいって買い戻されるケースが4社ほど出ています。

最大の課題はそんな人材を大企業がスピンオフ先に出すかですが、
失敗してもMBA(経営学修士)を取得したのと同じような評価をしてくれるよう
人事にお願いしているようです。
こうしたやり方は日本に合うやり方かと思います。

清水 面白いですね。いろいろな成功者が出てくれば、
それを見た親の子供たちへの教育姿勢も変わっていくでしょう。
リスクリターンの管理ができればスタートアップで挑戦した方がいい
というようになっていくとみています。

牧 日本のお役所や作るスタートアップの資料は、
日本のエコシステムがあまりうまくいっていない前提で書かれていると思います。
そうではなくて、うまくいっているものをもっと取り上げて
まとめて発表していく必要があります。
そうしないとエコシステムがうまく回るための人が集まりません。




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