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2024年02月08日22:03

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コータン出土 8-9世紀のコータン語世俗文書に関する覚え書き吉田豊神戶市外国語大学外国学研究所, 2006

https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121059413&owner_id=5160461

p.19
Nīnaはコータンの東にある町の名前「ニヤ」の古い形式であることが知られている。これらの文書のうちHedin 59ではPhema(漢文文書の坎城)からspātaのVimlaladattaのところへ命令が来ていて、その内容をVimaladattaがVasa'ra-samgaに伝えているのだが、Nīnaに向けて(？)駄獣を1頭供出するように言っているように見える。…
…玄奘は『大唐西域記』のなかでコータンの東、Phemaに比定される媲摩から東へ二百余里のところに、尼攘城がありそこがコータンの東境の関所だと言っている。
p.22
おそらくSīdakaは、(90/6.5)×2=27.67の計算をもとにして27点の羊皮を納入すればよいと考えたが、領収する側は端数を繰り上げて28点納入すべきだと理解しており、おそらくは、羊皮をĪrvapunaのところに運び領収書をもらいに来たJapānakaに、このSīdaka宛の木簡を託したものと推測される。別の文書で見れば領収を証明する書類は、コータン語では中国語の「抄」からの借用語のksauという語で呼ばれていたことが知られている。(29)
p.23
ただ家族構成までは記録していないので、本当の意味の戸籍とは言えない。…例えばNo.11062aには「Visnadattä 27(歳)」を初めとして、30人ほどのコータン人男性の人名が見える。…しかし第三部2-1-1で紹介する月ごとの税銭徴収に関する文書であるOr. 6395/2(ibid.,p.7)などを見ると、実際に綿密に人口や家族構成の調査をしたというより、徴税者側と税収を担当する側との間に比較的に大雑把な了解があったことを推定させる。(31)
…しかし、Sīdakaがspāta職にあった780年代の後半には、唐の安西都護府はまだ機能していたから、このthaissīは漢語の「大使」の音写でコータンに駐留する中国軍のトップないしは節度使その人を指している可能性が高い。
p.24
すなわち、天宝中、唐の将軍の楊和は「武衛将軍・四鎮経略副使より雲麾将軍兼于闐軍大使を加えられた」という。(栄新江1991、p.31参照。)さらにまたチベット語で書かれたコータンの王統史では、コータンに駐留した唐の軍隊のトップをthesiと呼んでいる。(33)
　ちなみに8世紀の終わりから始まるチベット支配時代にもこの称号は存続した様子で、チベット駐留軍のトップがthaissīと呼ばれている。例えばOr.11344/3(Skjærvø2002,pp.107-109)ではthaissī bulāni rmami si'räという表現が見える。…
…
　もう1点注目されるのは、Sīdakaが徴収を担当している地域が、全体で400点のうちの28点をカバーするという事実である。SīdakaはGaysāta(傑謝)の徴収代表者であるから、傑謝の人口規模(あるいは農牧生産の規模)がコータン全体、あるいは六城地区の28/400程度であったことになる。漢文資料によれば、唐代にはコータンは10州に分かれていたという。(34)また六城質邏の刺史に言及する漢文文書(Hoernle 1:森安1984,p.52：鎮国燦pp.535-536など)が存在するので、傑謝を含む六城地区は1州を形成していたことが分かる。注(34)で紹介した敦煌出土の漢文文書では、天寶十載の頃、于闐には4,487戸あったとあるから、1戸につき1羊皮程度を納入させる命令であったとすれば、400点は六城地区全体に課された税であったかもしれない。
p.25
コータン文のほうは簡素でpāstām hīvī ksau「羊皮の抄」とある。…ただしDx. 18927(張広達・栄新江2002, p.234)では、傑謝の百姓の個人である紇羅捺(Rruhadatta)が納入して領収書をもらっているような印象を与える。…この推定を支持するのは、連貼されたコータン語の領収書で、漢文の領収書と同様「順」のサインが見えるが、発給を受けているのは別のコータン人のVikausaである。
p.26
思略(Sīdaka)の時代の胡書典としては偏奴Phemdūka(Dx. 18925)や阿施捺(D. v. 6＝陳国燦pp.540-541＝Chavannes 4＝S 5864)が知られている。
p.27
漢字の発音から判断して勿日桑宜はVasi'rasamgaを音写したものであることは明らかで、コレクションのあり方を考慮すればコータン語木簡のVasi'rasamgaと同一人物であることは間違いない。
p.29
　第1に、このHedin 20の前半は、冒頭が破損しているため発信者の名前は回収できないものの、spāta Sudārrjāmに宛てられた命令であることが知られる。ただしSkjærvø, Studies Ⅲ, p.179が言うように、Or. 11252/18(Skjærvø 2002,pp.95-96)が関連する文書であるとすれば、そこに名前が見えるHīyaude Āmāci Sau Visnadattaが発信者であった可能性が高い。…それによれば、カシュガル(Khyesa)にHunaが攻め入ったことに言及して、人畜を坎城に避難させるようにせよということであった。…このように坎城すなわちコータン語のPhema、スタインが調査したUzun Tatiおよびその南方のUlugh Ziyārat付近には、比較的大規模な防御施設ないしは避難施設が存在した可能性が高く、筆者はUzun TatiとUlugh Ziyāratの間にあったとスタインが報告しているfortがそれではないかと考えるが確証はない。(42)
…この命令を受けたSudārrjāmはさらに彼自身が8月22日に、spāta Vidyadatta、pharsa Sādaraおよび商人たちにこの命令を伝えている。
p.30
従ってKhyesa「カシュガル」に攻めてきたとするHuna「匈奴」は、ウイグルに違いない。つまりコータン人たちは、ソグド人が突厥をxwn「(原義)匈奴」と呼んでいるのと同様に、モンゴル高原からやってくる遊牧民たちを等しくHunaと呼んでいたことになる。(45)…なおカシュガルがウイグルの影響下にあったことは、ウイグルの8代可汗(808-821)時代に書かれたマニ教文献Mahrnāmagの75行目に、クチャの支配者の傘下にある者としてカシュガルの支配者(k'šyxšyδ)があげられていることからも支持されるのである。(47)
…この文書はコータン王から六城にあるCira(質邏)のstānada(「顔役？」)と百姓に宛てた命令書だが、そのなかでコータン王はPhemaで必要とされる武具類のリストを要求して、そのことについてチベット軍にチベット語で手紙を書くと言っている。(48)
p.39
コータン語文書SI P 96.15ではka'raという称号を帯びているから、ka'raが「書記」を意味するという説が確認される。(64)
…
　注(61)で紹介した最近の発掘で見つかった木簡には「屋悉貴」と書かれたものがあり、これとの同じタイプの木簡はスタインコレクションにも何点か存在する。…筆者は主に音の類似から、コータン語文書でUstākiと表記された地名がこれに当たるのではないかと考えている。(65)
p.40
また上の2－4節の注(37)では、Hedinの漢文木簡に見える「抜伽(?)」がコータン語文献のBirgamdaraに比定できるかもしれないことも指摘した。同じ地名はスタインが発見した木簡にも見え、その発見場所はBalawasteである。しかし、漢文史料の「六城」とコータン語の対応する表現ksa auveがどこを指示するのかの問題は、かならずしも解決しているわけではない。
p.44
例：salī 1 māstä 10 hadā 22「1年10月22日」(IOL Wood 1 al, Skjærvø 2002,p.557).
p.45
敦煌出土の文献で見れば、コータンでも10世紀になるとウイグルのことを、Hunaではなく名前通りにhve:hvu:raと呼んでいた, cf. Bailey, KT Ⅶ,pp.42-43。
…この銘文ではxwnが人名となっている。…
…ちなみにクチャの支配者の配下には、さらにprw'nc jbgw「撥換(＝アクス)の葉護」が数えられており、クチャにいたウイグルがタクラマカンの北西方面を支配下に置いていたことが推測される。ところでHedin 20は、コータンに進軍しようとしている中国人Lä thihä tcyenäに言及しているが、このLäが漢語の姓「李」に対応するなら、Mahrnāmagでカシュガル王と呼ばれているlyfwtwšyと同一人物であろうか？その場合、fwtwšyは「副」を冠した何らかの称号であろうか。…
…ちなみに玄奘の報告の中のカシュガルの地名「佉沙」はコータン語のKhyesaという名称に近く、同じ名称の音写であると考えられる。
…なおhiyaudiは「主人」の意味であるが、hiyaudä āmācä ssau sattum(Hedin 2)の例から知られるように、高い身分の人が帯びる称号であった。
p.47
熊本がysārru「千」と読む語は、ysācaと読むこともできる。(ysāの下のフックの有無は確認できない。)この語に関してEmmerickは、通常のコインの1000倍に対応する単位だろうと結論したが、それにぴったり対応するのは、銅銭1000枚分を意味する漢語の「緡」ないしは「貫文」である。…一方、mūräは銅銭を意味する常用コータン語で、提出された写真で見る限りこの読みに矛盾はない。…
…
(66)　張広達・栄新江 1987は次の6つの地域が「六城」を構成するとした：
　　　　1) Cira；2) Phema；3) Phamna；4) Birgamdara；5) Āskvīra
　　　　6) Gayseta
　これに対してVorob'ëva-Desjatovskajaは次の6つだとしている。彼女の説は、張広達・栄新江と異なり、ksa auve自体は、50戸ほどの村であり、一州を形成するような規模ではなかったという点が重要である：
　　　　1) Phamna；2) Pa'；3) Tcina；4) Vīmgulā～Vemgulām；5) Jīva
　　　　6) Ysāda
…
　この点で興味深いのはDx. 01461で、最近発表されたテキストに拠れば、ĀskuīraにいるSīgūが、配下のBirgamdara、Pa'、Phanya、Gaysātaのspātaやpharsaたちに、「ここ」すなわちĀskuīraに来るように命令している。この5つの地名に、有名なCira(質邏)を加えれば確かに6個の村になる。
p.48
「六城質羅」や「質羅六城」という表現は、Ciraが主邑であったことと関連しているのではないだろうか。…Phemaは通常kamtha「城郭、町」と呼ばれ、別格であったらしい。…
…そこに記されたsau Sīlāからの命令では、6日以内に徴収した銭をもってCiraに参上することになっている。
p.52
　残された文書で見る限りアーカイブ1に属する文書の多くがspāta Vimaladdataからの命令であるが、そのVimaladattaへはさらにāmāca「大臣」(Hedin 48, 66, 67, 69)、ssū-ksuha「守捉」(Hedin 56)、Phema「坎城」(Hedin 59, 60)、Spāta Devaka(Hedin 61; メッセージはparmäcaと呼ばれている)(5)、hadira prūvāsta「内城(6)」(Hedin 51)、Sau Sīlām(Hedin 71)から命令ないし伝言が届いていて、それをVasi'rasamgaに伝達していることが知られる。ちなみにspāta Devakaがauva-hamdasta Sīdakaへ出した命令が別に知られている(SI P 103.12)ので、類似の命令がVimaladattaにも届いていたのであろう。(71)Vasi'rasamgaへの命令はしばしばspāta Budadattaからも来ている。そしてそのBudadattaへはspāta Sīlā(Hedin 36, 39, 41, 53, 68；メッセージはparmäcaと呼ばれている)、Phema「坎城」(Hedin 47, 54)などから命令が来ている。
p.53
　ところで筆者はかつて、末端の徴税者を指すコータン語の称号がchaupam(叱半)であると主張したことがあった、cf. 吉田『西南アジア研究』48, 1998, p.45.。…Ustākajāna bisa chau-pam「Ustākaのすべての(？)chau pam」という表現がOr. 12637/13(Skjærvø 2002,p.123)に現れ、「屋悉貴𠮟半」という表現がChavannesの発表した木簡に見えるから、両者は同じものを指していて、屋悉貴はUstākaを写したものであろう。(10)
p.54
この年が一般に考えられているようにVisa Vāham＝尉遅曜の年であり、そして尉遅曜の登位年が後にも論じるように767年であれば、771年に対応することになる。
p.55
この文献は首尾完結した文書で、spāta Ssanīrakaからauva-hamdasta Sīdakaと彼と同じ立場のArrtaiへの命令である。
p.59
すなわち、コータン語のヘディン文書と同じときに入手されたチベット語文書のHedin 1は、チベット語でmen-driと呼ばれる絹織物をSodarが借りる契約文書である。(19)Sodar(=Sāmdara)が自分では納入しきれない布を、書類上はチベット人から借りていることにしたのではないかろうか。…
…
　ところで問題の布は、Hedin 15, etc.などでは単にthauとあるが、Hedein 1ではpe'mīnai thauと呼ばれている。…従ってコータン語文書で単にthau(pl. thauna)とあるのは、すべてコータンの特産品の絹織物であった可能性が高い。
p.60
アーカイブ3の人名表に顕著なのは、目的としてspasana「見張り」とsapāna「給仕(Bailey, Dict.:"Cook"; Skjærvø 2002, "canteen duty")」があげられているものが多いことであろう。…
…
　コータンには前漢から後漢にかけての西域都護府時代に漢字漢文が、そしてその後はクシャーン朝の影響で、ガンダーラからカローシュティー文字表記のガンダーラ語が導入され、文書行政の言語となっていたらしい。
p.61
　その後、カローシュティー文字の伝統は途絶え、かわってブラーフミー文字が使われるようになった。…比較的古い書体で書かれたコータン語の資料が知られており、5世紀頃にはその伝統が確立していたと考えられるかもしれない。…もちろん文字は変わってもガンダーラ語の伝統が消え去ったわけではなく、古い借用語に多くのガンダーラ語の要素が見られることはよく知られている。…
…
　(a)　ksuna「支配王の統治年」~Niya Prakrit chuna＜Bactrian xšono
　(b)　gūni「嚢、袋」~Niya Prakrit goni, cf. Bailey, BSOAS 11, 1946, p.765; idem. KT Ⅳ, p.161.
　(c)　pramāna「有効、権威を有する」~Niya Prakrit pramana＜Skt. pramāna.(27)
p.62
　(d)　pravanai「名簿、リスト」~Niya Prakrit pravamnaga, cf. Bailey, KT Ⅳ, p.70; Kumamoto 1996, p.49.
　(e)　vīnatta「報告」~Niya Prakrit vinati＜vijnapti, cf. Bailey, KT Ⅳ, p.84, Skjærvø 2002, p. lxxiv.
　(f)　spasara, spasana「見張り」~Niya Prakrit spasa, cf. Bailey, ZDMG 1937, p.576.(28)
p.67
それによれば、尉遅曜の登位年は彼の兄であった尉遅勝が、755年に始まった安史の乱を鎮圧するために、自ら軍を率いてコータンを去った年であるとして、755年を初年と考えられていた。
p.68
筆者は、熊本が唐の支配時代(つまり8世紀終わりまでの時代)の公式の漢文文書であるとするHedin 24に見える判官の富惟[勤]と、Hedin 15, 16などに見える判官富惟勤は同一人物に違いないので、やはり熊本の説は成立しにくいのではないか、そして尉遅曜の登位年が、なにか分からない理由で755年よりちょうど12年遅い年になったのではないかと指摘しておいた。…そうして764年に起こった尉遅曜のコータン王任命の知らせも、ようやく767年にコータン本土に届いた。…
…Skjærvøは尉遅曜はyauvarāya「皇太子」の称号で支配していたと考えた。筆者はこの説は正しいと考えるが、皇太子として摂政に就任したのは757年(酉年)であったのではないかと考えている。…その初年は酉年になるはずだが、757年は酉年であり、兄の尉遅勝が国を去った756年に摂政に就任し、その年は尉遅勝の年号で数え、その翌年から起年したと考えるのである。(41)
p.73
また33年の文書(Or. 11344/3, Skjærvø 2002, pp.107-109)にはすでに、チベットの「大使」であるBulāni Rmami Si'räからの命令が見られる。…Hedin 24は賊の侵攻に対する対策を指示する内容であるが、第一部2‐5でも見たように、この時期チベットおよびコータンが攻撃に備えていたのは、北から来るウイグルであったと考えられる。(47)Visa Vāhamの年号を持つとみられるコータン語文書でみると23年(SI P96.7: SDTV Ⅲ, pp.110-111)、漢文では貞元五年(789年：Balawaste 0163)ないし貞元六年(790年＝曜の24年、陳国燦1995, pp.507,556)からコータン語文書の32年(＝798年)および貞元14年(＝798年)の間に10年ほどおｎブランクがあり、この空白地代こそが、唐からチベットへの支配者の移行が起こった時代だとみなされよう。…
…かつて筆者が明らかにしたように、9世紀のはじめのマニ教文献Mahrnāmagでも北庭とクチャの支配者は、唐の北庭都護府と安西都護府に置かれた節度使の伝統に従ってsyrtwšyy(＜「節度使」)と呼ばれていた。(49)
p.74
アーカイブ3が800年頃の文書であるという前提で、漢文史料を検索すると、802年の正月に南詔戦線で虜になった論莽熱(Blon Mang-bsher)がいたことが分かった。
p.75
もしそうならば、彼は先に西域支配に従事し、後に賛普の命令で東方戦線に回されたということになるでしょう。異皐との戦いに投入された吐蕃軍には、霊州あたり(すなわち吐蕃支配下の河西地方東部)から回された軍もあったといわれていますから、彼がとても有能な武将であったため、わざわざ西域から回されたと推測するのは、あながち無理とはいえますまい。
…さらにこの当時、中央アジアから南詔方面に部隊が移動したことは、南詔で捕虜になった者たちの中にサマルカンドなどの出身者がいたことからも明らかである：Ch. Beckwith, 1987, opt. cit., pp.157-158；森安孝夫「中央アジア史のなかのチベット」長野泰彦・立川武蔵(編)『チベットの言語と文化』東京 1987,p.56参照。
p.76
またその同じ理由で、Skjærvø 2002, p.96が「節度」の音写と考え"military governor"と訳しているOr. 11252/19のtcirrtūは、同じ武将を指していたと考える。…ちなみにこの文書ではtcirrtūが来ることになったので、小麦粉を徴収せよという命令がSudārrjāmから伝えられている。
p.77
実際P5538でも、コータン王Visa' Sūraの年号である「天尊」が用いられていたのである。…
…上記のことを総合すれば、おそらくは漢語の「開運」に対応すると考えられるP4091のkhayi-gvinäは、于闐国の年号であったと推定するほうが自然である。
p.79
Vijaya Sangrāmaの直前のコータン王Vijaya Kīrti(Ⅲ)の時代、コータンを支配したというチベットの大臣Mgar Bcan-nen Gun-stonは、敦煌出土のチベット語の年代記で695年に殺害されたという記録があるMgar Bcan-nen Gun-rtonと同一人物であることを証拠としていた。…そしてVijaya Vikrama(＝尉遅瑕)が、高僧のDevendraのために寺院を建てたとあることに注目して、その僧侶こそは689年に中国にやってきて、691/2年に中国で没したコータン出身の僧侶提雲(陀)般若その人で、二人が中国にいたときに親交があったのではないかとしている。
p.80
　(1)　尉遅屋密(632)
　(2)　伏闍信(648‐649)
　　　　子　葉護玷
　　　　　　　　　　　　　Vijaya Kīrti Ⅲ(Li yul)(670‐673)
　(3)　伏闍雄(674‐692)　Vijaya Sangrāma(Li yul)(674/5)
　(4)　尉遅瑕(王敬)(692)　Visya Vikrram=Vijaya Vikrama(Li yul)(692-706+)
　(5)　尉遅眺(725)　　　　Vijaya Dharma(Li yul)
p.81
　(6)　尉遅伏師戦(728)　　Vijaya Sambhava(Li yul)
　(7)　伏闍達(736)　　　　Vijaya Vāhana(Li yul)
　(8)　尉遅珪(740)　　　　Visya Sīhya=Bcan-bzan Bcan-la Brtan(Li yul)
　(9)　尉遅勝(746?-)　　　Visa' Dharma
　(10)　尉遅曜　　　　　　yauvarāya＞Visa' Vāham
　　　　　　　　　　　　　Visa' Kīrrta
…彼に拠れば、Vijaya DharmaとともにByams-pa Maitri寺を建立したとされる中国人の大臣Ser-the siは、開元十六年(726年)の「四鎮節度等副大使謝知信」であり、また次の王Vijaya Sambhavaとともに、Khe-gan-rceを建立した大臣のKa-the-siとは、開元二十六年(736年)に安西都護になった蓋嘉運であり、その寺は開元寺であるとする：栄新江 1993, pp.412-413参照。
p.82
そしてこの文書にはsau hvimdū salya「sau Hvimdūの年」とも記されているから、その同じ文言をもつゲタ型木簡Or. 9268A(Skjærvø 2002, pp.66-68)も同じ時代であるとする。
p.83
Kumamoto 1996はVisa' Dharmaからyauvarāyaへの形象関係を証明する根拠が、sau hvimdū salyaの同一性だけであることに懸念を示している。
p.86
この二人が同一人物であるとすると、s(s)auという称号は州の刺史に相当していることになる。またこの同じサインは上記のSi P 93.3(ibid., pp.90-91)にも見え、そこには[vidya]datti salyaとあるから、sau ... salyaの書式に現れるsauは、各州に在地の(あるいは任命された)sauとは別のsauであったらしい。…Vijaya Sangrāma父子が中国に行って帰国できなかったときに、コータン国の国政を司った'Amacha Khemegはそのような職にあった大臣であったと考えられる, cf. Emmerick 1967, p.59。
p.89
その州(本稿では仮に六城州と呼ぶ)の抜伽(Birgamdara?)が本貫であったらしい。彼の直属の上司はspāta Vimaladattaやspāta Budadattaのであろう。…
…当該の文書ではDedūsaは、Gaysātaのspātaではなくauva-hamdastaであったとある。
p.90
　なおpe'maおよびペルシア語のpašmと同じ語源のソグド語pšmは、ベルリンにある未発表の仏教文書So 10200(8)に在証される。そこではソグド語のš'w pšmが原典の「黒羊毛」(『大正』22巻p.1025b-c)に対応している。
p.91
液量の単位khaは漢語の「升」に由来するsamgaと相補分布をなす事が知られている, cf. Skjærvø 2002, p.lxxvi.
p.102
ここで問題になっている時代では、銭はmūraと呼ばれていて、開元通宝に代表されるような中国式の銅銭であった。…
…税銭を徴収する官はコータン語でmūrahamgaと言ったが、これは独立した官職ではなかったらしくauva-hamdastaからspātaへと昇進したGaysāta(傑謝)のSīdakaは、SI P 103.37(SDTV Ⅲ, pp.150-151)ではArrtaiとともにmūrahamgaと呼ばれている。(8)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986953326&owner_id=5160461
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986961035&owner_id=5160461

米政府が中国企業3社を輸入禁止リストに追加、新疆ウイグル自治区での強制労働関与で
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=63&from=diary&id=7584284

　米国国土安全保障省（DHS）が、新疆ウイグル自治区での強制労働への関与が認められる中国企業3社を新たに「ウイグル人強制労働防止法（UFLPA）」の事業者リストに追加し、米国への輸入禁止の対象としたことを9月26日に発表した。今回の発表により、同リストの指定企業は計27社となった。

　ウイグル人強制労働防止法は、2021年12月に米バイデン政権下で成立し、2022年6月21日から施行。製品が強制労働で生産されたものではないことを明白に証明できない限り、新疆ウイグル自治区での生産品および事業者リスト記載企業の生産品の米国への輸入を禁止している。
　今回リストに追加されたのは、新疆中泰グループ（Xinjiang Zhongtai Group）、新疆天山毛紡（Xinjiang Tianshan Wool Textile）、新疆天棉基業紡織（Xinjiang Tianmian Foundation Textile）の3社で、いずれも新疆ウイグル自治区に拠点を置く繊維関連製品の製造・販売企業。
　国土安全保障省のアレハンドロ・N・マヨルカス（Alejandro N. Mayorkas）長官は「我々は利益を上げるために強制労働を行い、個人の人権を乱用する企業を容認しない。国土安全保障省とバイデン政権は、引き続きこれらの企業を訴追して虐待された人々の権利のために闘い、中国によるウイグル人強制労働の撲滅に向けて取り組んでいく」とコメントしている。

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