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2024年01月25日12:11

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『アンネの日』by serial number

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毎公演、
事実を「事実」とし、ソコに深く切り込みながら
人間の心に深くしみいる物語を舞台に載せてくれる脚本家「詩森ろば」さん。
彼女が主宰するこの劇団の芝居が大好きでずっと観てきている。

今公演は、
女性にとっての必須アイテム、「生理用品」を、
女性開発者たちが、本当に自分たちの役に立ち、かつ、体に悪影響をもたらさない製品の
開発のために奮闘する物語。
初演時大きな評判となり、詩森さんが「芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞した
代表作の再演である。

実際の開発現場等に取材しながら、
初潮から始まり閉経まで、女性だからこその辛さ、
また、生理にまつわる喜びを、
全員女性という出演者たちで描いたこの作品。
再演では、一企業の製品開発の物語でありながら
現在のフェニズムにまでリサーチし、さらに内容はブラッシュアップ
されたそうで、期待して出掛けて行った。


2024、1/14(土) @ ザ・スズナリ
14:00〜(135分)
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すっかり下北沢が、カオスの街 から こじゃれた街 に変わってしまっても
ここは変わらず、演劇史上の遺物の様相で居てくれて、ホッ!
少し手を入れた(らしい?)外観は、きっと
お役所から建築物の安全上の危険を指摘され補強したのだろう。
それでも入口を入ると昔のまま。
狭いロビーを通り客席に向かう。

舞台には椅子が8脚。
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開演
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8人の女性が、過去、初潮の日の体験を語り始める。

その流れから舞台は「今」へ。
アネモネコーポレーション開発部では、
チームリーダー津和苑子(林田麻里)とサブリーダー土井加奈子(李 千鶴)が
社内のコンペ企画「大人の自由研究」に参加することに!
開発部の女性開発者たちに営業企画部の精鋭も加わり
薄さ、吸収力などはもう改善の余地の無い生理ナプキンを
この先どう開発し、他社の製品と差別化し競うか?をテーマに。
そこで挙がったのが自然素材のナプキン。
しかし、
石油化合物を取り除いたそれは、コスト的にも厳しく、
何より機能性に劣り、悪戦苦闘を強いられる。
そこにトランスジェンダーの島村理央(真田玲臣)が参加したいとやってくる。
生理用ナプキンの開発をするなか、同じ企業に働きながら知らなかった
お互いの生理の事情や人生について知り合いながら、
暖かくも強い関係を女性たちは築いていく。

ところで、
単純計算で、女性は9年間分の時間を生理に捧げるとか。(驚いた!)
その時間、体に触れるナプキン。
素材から体内に吸収される化学物質は本当に安全なのか?
そんな科学的な問題を数字を挙げて突き詰めていく傍ら
日本社会の中の女性の立場にまで切り込み、
その先、トランスジェンダーの存在を異分子としない社会を実現するには?
という課題も投げかける。

女性と生理に、
本当に様々な角度から本気で真摯に取り組んだ秀作。

色々な場面で、自分が生きてきたあれこれと重なる部分が
心に沁み入って、目を潤ませられた。




アフタートーク 16:20〜(20分)
>7年前の初演と今公演とに出演して変わったことは?
・自分の変化で、脚本の読み込み方が変わった。
・子供を得て母親の目線で作品を見、また、閉経についても深く考えるように。
※初演時開幕前に妊娠が分かった葛木 英さん。
 最悪の事態の覚悟をもって出演を決めたとのこと。
 皆さんに気を遣ってもらったそうだ。(役者魂!すごい!!)
 今公演、その子が観劇に来て感無量とのこと。
>台本を読んで?
・未来の理想的な社会実現に前向きに取り組む気になった。
・理央がセンシティブでしんどい。
・自分も舞台から離れても敏感になっていた。
>初演時再演ではこうなっていて欲しいという想いを書いたが、
・当時より状況は後退しているかも。
・けいこ→脚本解釈→けいこ 皆で解釈に時間を使ったことが新鮮。
・かつて自分を分かって!と脚本を書いたが、この何年か
 戯曲の原点に立ち戻り、脚本の解釈が必要だと感じた。
>トランスジェンダーの理央の切なさ、社会と戦う強さ、
 しかしその強さの裏に弱さがあり、演者が負けそうになることも。
・始め、仲間であるべき7人が敵、社会が敵、
 しかし理央の戦いが社会を変える。
・人はただ全てで「その人」!
>作品全体について
・演じ続けられて欲しい作品。
・数年後に演るとまた変わる。社会も変わる。
・区別はあるが差別のない社会に!
・そのあたり、作家はよくわかっていない。
>生理とはネガティブなだけ?
・生理が女性の体を守っている。
・生理を切望するトランスジェンダーも居る。
・産める年齢が上がるってどうなの?
・産まない自由も認められるか?
そして、全ての人が居心地の良い社会とは?
という大命題に詩森さんは向かって行く。

背景の造形物はナプキンの素材となる「綿」を意識した現代美術、だそうだ。



<演劇> 240102
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