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2023年12月16日21:18
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フランスの歴史 横浜みなとみらい 2023年第5回目12月10日（日）山手西洋館クリスマス展（中編）ＺＡＲＤのクリスマスタイムより フランスのクリスマス ブルゴーニュ公国の歴史 ジャンヌ・ダルク登場
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ZARDが発表した楽曲「クリスマスタイム」をモチーフにした12月10日（日）のみなとみらいの旅、中編第4章は、みなとの見える丘公園内のブラフ18番館で開催していたフランスのクリスマス展である。
前編 １２月１４日付 https:/
2024年に横浜市と姉妹都市締結65周年を迎えるリヨンと共に国内のブルゴーニュ公国の歴史、フランスとイギリスの王国が争い、ジャンヌ・ダルクも加わった百年戦争についても考察する。
以下 百年戦争関連日記
� ．ぅ�リスジョン王が署名したマグナカルタ 第１章 1 より https:/
�� フランク王国ピピンの寄進 １４世紀フランス王国による教皇のバビロンの捕囚について
第３章、https:/
�� 西ローマ帝国滅亡に関する日記
https:/
第4章 フランスのクリスマス ブルゴーニュ公国の歴史、2024年に横浜市とフランスのリヨンが姉妹都市締結65周年を迎える。
１から６段階に分けて紹介。
港の見える丘公園のブラフ18番館では、フランスのクリスマスの飾りつけが行われていた。１階の暖炉のある一室では、フラワー文字で「LYON」と表現している。
1．リヨン出身第４代ローマ皇帝クラディウス 聖ニコラス祭
神奈川県横浜市は、2024年にフランスの第二の都市リヨンと姉妹都市締結65周年を迎える。過去には両都市間で交流事業を行い、55周年、60周年の節目に、記念行事を開催した。両都市の共通点は、絹貿易で栄えたことにある。リヨンは、人口51万人、都市圏を含めると230万人に上る。（いずれも2017年の情報）ソーヌ川とローヌ川の合流地点に位置し、古代から河川舟運や陸運の要衝として発達した。古代ローマ帝国時代にはローマ属州ガリア・ルグドゥネンシスの首都ルグドゥヌムとして繁栄し、中世以降は絹糸・絹織物の交易・生産で栄えた。
以下 クラディウス ローマ人の物語（19）／第4代皇帝クラウディウスの善政と悲劇
2019年12月29日付 https:/
町の礎を築いたのは、初代皇帝アウグストゥスの腹心であるアグリッパだった。ルグドゥヌム（当時のリヨンの呼び名）を発端に、交通網を整備する。ガリア全域に広がる「アグリッパ街道」と呼ばれるローマ街道を建設し、輸送ルートを確保した。人の行き来が楽になり、毎年ガリア３州（ガリア・ルグドゥネンシス、ガリア・アクィタニア、ガリア・ベルギカ）の代表が集まるガリア人評議会を主催した。ローマ時代より、ガリアの政治的・軍事的・経済的な中心地に発展した。政治の中心として栄えた町に、第4代皇帝クラウディウスが生まれた。
病弱だったクラウディウスは、歴史家として過ごし、アテネやスパルタの都市国家を研究史尽くした。先代の３代皇帝カリグラが暗殺され、50歳で戴冠すると、歴史家として蓄えた知識が大きく役立った。国家破綻の危機から脱して、ブリタニア（現在イギリス南部）を征服し、領土拡大に成功する。指揮官として経験は乏しいとはいえ、後に皇帝となる戦略家ティトゥスの貢献により、遠征に成功した。政治面では、元老院の権限を認め、歴史家として研究しつくしたアテネやスパルタを模範にして、国づくりを勧めた。秘書官システムの導入、郵便制度の民間開放、新たな港の建設など、精力的に帝国統治を推進したクラウディウスは、ローマをアテネに並ぶ近代国家へ押し上げた。50歳以降に政治的手腕を発揮した皇帝は、財政の再建、行政改革に成功したものの、女性問題がこじれ、4番目の妻小アグリッピーナの毒殺により
、63年の生涯を閉じた。
クラディウスは演説家としても名高かった。紀元前48年に元老院での演説は、一部碑文に刻まれている。リヨン市内で１５２８年に見つかり、ローマが人類に残した最大の教訓と呼ばれた。
歴史家皇帝クラディウスを輩出したリヨンは、クリスマスは一段とにぎわう。イブに近づくにつれて、中心街がライトアップされ、「光のショー」が行われる。
写真＝リヨン市サンジャン大聖堂 掲載元 ＡＸＩＳ 2018年11月6日付 https:/
リヨンを含め、フランス国内では12月6日に、クリスマス前のもう一つの大事な祝典が開かれていた。お祭の背景には、守護聖人サン・ニコラの誕生日にある。1477年に2つの地方の守護聖人として、人々から崇められてきた。
以下 SORTIRA PARIS 2023年12月6日 参考
聖ニコラスは、実在した人物である。聖者として奉られた分けは、バーリのニコラスとしても知られるマイラのニコラス司教の布教活動にある。時は3世紀、現在のトルコの南に位置するリキアに生まれ、投獄された後、数年間の流刑を余儀なくされ、343年12月6日に亡くなった。キリスト教信者であったミラのニコラスは、ディオクレティアヌス帝によって迫害された。
彼は死後にも多くの信者に影響を及ぼした。地球上で起こる様々な奇怪な出来事が、ミラのニコラスの力によるものと理解されるようになった。伝説として語り継がれるのは
肉屋に殺された3人の子供が息を吹き返した出来事である。3人の子供の命を奪った肉屋についても、不思議な逸話がある。聖ニコラスの見回りに同行し、言うことを聞かない子供たちを懲らしめた。肉屋は、人々の行いを善か悪か、判断する「審問官」の役割を果たす。対して、マイヤのニコラスは 子供や学童、独身者や囚人の守護聖人となった。
2．フランク王国時代へ遡る
ニコラスの生誕日の1477年は、歴史の転換点となる年だった。アルザスとロレーヌ地方は、古代ローマ帝国に属していた。西暦395年にテオドシウス帝の時代に、息子たちによって東西分割される。アルザスとロレーヌ地方は、ホノリウスが収める西ローマ帝国に含まれていた。西暦476年に、ゲルマン民族の傭兵オドアケルによって、西ローマの帝冠は、東ローマに贈られ、事実上滅亡する。イタリア半島の勢力図は、ゲルマン民族が優勢になった。西暦481年に、ゲルマン系サリ族のメロヴィング家クローヴィスがフランク人の各部族を統一する。ガリア（後のフランス）北部にフランク王国を建国した。7世紀前半に、宰相だったカロリング家のピピンが、ネウストリア分国の戦いに勝利し、領土を獲得する。その息子カール＝マルテルによって、周辺諸国を次々と屈従させる。宰相として軍の識見を持つ。王国の実権はメロヴィング家からカロリング家へ取って代わった。西暦732年、ピレネー山脈を超えて、アキテーヌ地方のバイヨンヌとボルドーを手に入れ、北上を続けた。西暦732年に、配下に置いたアキテーヌ公の要請により、イスラムのウマイア王朝と現フランス中部のトゥール・ポワティエにて、7日間に渡る激しい戦いを演じた。敵将の騎兵隊アブドゥル＝ラフマーンの戦死により、イスラムの脅威を排除する。西暦751年に戴冠し、カロリング朝を創設する。西暦800年にその子カールが戴冠し、ローマ王の称号を得る。カロリング朝の時代フランク王国は領土拡大により、それぞれ地域の主である公に一定の権限を与えていた。封建制度が続いたことにより、分権社会だった。カール大帝の後を継いだ2代目のルイが亡くなると、3人の兄弟により、分割統治された。西暦843年のヴェルダン条約に基づき、東はロタール一世、中はルートヴィヒ、西はシャルルが継承した。
写真 掲載元 帝国分裂4-ヴェルダン条約、メルセン条約 2017年9月29日付け
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続く855年のプリュム条約により、中フランク王国は、ロタリンギア、プロヴァンス、イタリアに再分割され、さらに870年のメルセン条約でロタリンギアとプロヴァンスが西フランク王国と東フランク王国に吸収された。カロリング家の王位は三国で世襲制度の下、安定したように見えた。後継者問題が起こり、875年にイタリアで、911年には東フランクで、987年には西フランクでそれぞれ断絶した。西フランクでは、新たにパリ伯ユーグ＝カペーが、王位を継いだ。いわゆるフランス王国の始まりである。フランスの元となった西フランクは、2度目のメルセン条約により、後に神聖ローマ帝国になる中フランクの一部の領土を獲得する。第2次ゲルマン民族の大移動により、現在フランスの海岸線ノルマン地方は、統制が及んでいなかった。西暦911年にはロロが率いるノルマン人が北西の海岸を拠点に、内陸へ進軍した。パリへ迫るにつれて、当時のカペー朝の国王シャルル３世は、和平に向けて働きかけた。ロロに対して、キリスト教に改宗することを条件にノルマン地方の領有を認めたのである。ノルマンディ公国の領主としての地位を与え、争いを回避した。ロロの５代後、ノルマンディー公ウィリアム（フランス名ギョーム）は、西暦1066年にノルマン＝コンクェストによってイングランド王となり、ノルマン朝を開くこととなる。
フランス国内では、アンジュー公国やブルゴーニュ公国を始め、地方勢力が台頭した。ブルゴーニュ公国は、後にフランス王国とイギリス王国の間で起こった百年戦争の勝敗を左右する存在になった。カペー朝時代は王権が弱かったものの、続くブルゴーニュを治めたヴァロワ家では、地方勢力を集約した。
3．ブルゴーニュ公国誕生、ワインの生産について
ブルゴーニュはワインの生産地、キリスト教信仰と生産は深いかかわりがあった。クリュニー会とシトー会の2つの宗派により、ブルゴーニュの銘醸畑は開墾される。クリュニー会は、西暦909年、または西暦910年に、アキテーヌ公ギョーム一世が、ブルゴーニュ南部マコン北西20ｋｍに位置するクリュニーの地に創設したベネディクト派の修道会である。世俗化したキリスト教会の改革を掲げていたものの、規模の拡大につれて、政治の場にも介入した。
創設時の回帰を掲げたのはベネディクト派の修道会、シトー会である。禁欲的で、模範元首である。ニュイ・サン・ジョルジュ東の荒地に、ロベール・ド・モレーム（後の聖ロベルト）が創立した修道会である。シトー派は、白い修道服を身にまとう。
明るくて華美なクリュニー派と禁欲的なシトー派、体質が全く異なる2つの修道会がブリュゴーニュの中心だった。
ヴァロワ家＝ブルゴーニュ公となった経緯は、1356年のポワティエの戦いにある。ヴァロワ家のフランス王ジャンが捕虜になると、同じ身の末子のフィリップに公領を与える約束をしたのである。1364年、ジャン王の後継者シャルル５世は、先代の約束を履行した。ジャンの末子のフィリップにブルゴーニュを継承させ、公の地位を与えた。ヴァロア家系ブルゴーニュ侯家の成立である。
フィリップは、公の地位のみでは満足せず、領土拡張を狙った。フランドル地方伯家のマルグリットと結婚し、戦わずにして領土獲得を試みた。１３８４年、フランドル伯の死去により、妻マルグリットに相続権が渡った。マルグリットの夫フィリップには、婚姻時共同所有との約束が交わされていた。新たにブルゴーニュ公のネーデルラント全域の制覇まで視野に入れ、中世フランス最大の封建領主となった。
ワインの生産にも後世に影響を与えた。フィリップ公は、ガメイの栽培を禁じ、ピノノワールのみ育てるように政令を出した。ピノノワール単一品種のワイン栽培に特化したのである。
詳細 修道院やワイン栽培について フランスワインノキ ブリュゴーニュ地方の歴史 2021年11月14日付
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一国の主と変わらないブルゴーニュ公は、領土拡大につれて、近隣公国との争いに発展する。真っ先に対立したのはオルレアン公国だった。西暦１４０４年、フィリップの後を継いだジャン（サン＝プール、無畏公）は、オルレアン公ルイと緊張関係が切れて、争いになる。ブルゴーニュ派の頭領となり、オルレアン・アルマニャック派とは犬猿の仲だった。百年戦争さなか、王権が弱かったフランスでは、公国同士で領土を巡る攻防が繰り広げられていた。戦争の発端まで遡ると、イギリス王国とフランス王国の間の領土問題にある。西暦1337年、イギリス国王エドワード３世が、フランス王位の継承権を主張して、ヴァロワ朝のフィリップ６世に挑戦状を発したことにある。西暦1340年に始まり、1453年まで断続的に続いた。当時カペー朝のシャルル4世が、男子を残さず、死去したことにより、後継者問題が起こっていたのである。兄弟も既に亡くなっていたことにより、従兄弟にその座が巡ってきた。ルーツが異なる従兄弟から三人が候補に上がった。フランスの三部会は、フランス王国生まれを考慮し、フィリップ＝ド＝ヴァロワを後継者に任命した。フィリップ６世として即位に伴い、王の座はカペー朝からヴァロワ朝へと受け継がれた。
4．百年戦争へ
写真 掲載元 歴史まっぷ 百年戦争とバラ戦争に関する系図
百年戦争の発端は、実に複雑だった。フランス王国内の自治権を与えられた公国が、イギリス王国の支配下にあったことにある。西暦1140年にフランス王国内のノルマンディー公5代目ウィリアムが、イギリスの亡きエドワード3世の後を継ぎ、イギリス＝ノルマンディー朝の成立が発端である。イギリス王が、フランス王国内に所領を持つことになったのである。西暦1154年に成立したプランタジネット朝のヘンリ2世もアンジュー、ノルマンディー、アキテーヌを領有していた。フランス王国の所領内において、イギリス王国側は従う義務がある。王権を強化するイギリスとフランスの間でも緊張関係が続いていた。両国の間を取り持ったのはローマ教皇だった。カトリックの権威である教皇は、互いの言い分を聞き、解決を目指していた。13世紀にイギリス王ジョンは、フランス王フィリップ2世の計略にはまり、土地を失う事態に陥っていた。ジョンは、男子の跡継ぎがなく、妻と離婚裁判にゆれていた。当時8歳といわれているアングレーム伯爵の娘イサベラを言いくるめて、新たに婚姻関係を結んだことに対して、裁判で訴えられていた。出廷を拒むジョンへの制裁として、フィリップ2世は土地を取り上げたのである。ノルマンディーやアンジューは、フィリップ2世に忠誠を誓うことにより、無傷で配下に置いた。ジョン王がフランス王国内で所有する土地は、ロワール川以南の地域のみにとどまった。失地王の名を着せられたジョンは、教皇に救いを求めていた。大司教の人事を巡って、異を唱えたことにより、破門宣告を受けた。対仏戦争による戦費が嵩み、諸侯からも見放された。西暦1215年にロンドン近郊にて、大憲章（マグナ＝カルタ）に署名をさせられる。法に基づいて諸侯が、王権を監視するようになった。自暴自棄になったジョンは、王としての矜持を保つべく、失地回復を目指し、1214年にアキテーヌへ出兵した。ヴーヴィーヌの戦いで、フィリップ2世に敗れ、残る土地は、ギエンヌのみになる。
写真 掲載元 百年戦争当時の英仏関係: クレシーの戦い, ポワティエの戦い,アザンクールの戦い
世界の歴史まっぷ
イギリス王国とフランス王国の間では、話し合いによる解決は程遠かった。両者武力衝突により、土地の奪い合いが起きていた。調停役のローマ教皇においては、フランス王国によって力ずくでねじ伏せられ、ローマからアヴィニョンへと移転させられていた。1378年には、教会大分裂が起こっていた。ローマ教皇を支配下に置いたフランスは王権を強化する。対してイリギス側はフランスに従う気はなく、失地回復を掲げることにより、戦争は避けられない状況になっていたのである。
ブルゴーニュ公国は、イギリス王国の味方についた。きっかけは、アルマニャック派との対立にある。領土を巡って、互いに譲り合えなかった。アルマニャック派とは、アルマニャック伯が主導するオルレアン公国のことを指す。１４１９年にはジャンが、フランス王国ヴァロワ朝側に立ったアルマニャック派によって謀殺される。後にフィリップ（ル＝ボン、善良王）がブルゴーニュ公国を継承した。百年戦争に関する対応は、当初中立を表明し、様子見だった。戦況はイギリス有利に働いた。１４２８年、イギリスが、オルレアン・アルマニャック派に推されたシャルル７世をオルレアンに包囲する。シャルル7世は、聖女として語り継がれるジャンヌ・ダルクとの繋がりが深い。神のお告げを聞けるとうわさされた一介の農家の貧しい娘だったジャンヌとシノン城で面会した。彼女の言葉から、信頼を寄せ、軍の指揮官として派遣する。百年戦争において、劣勢に立たされる中、１４２９年５月にオルレアンはイギリス軍から解放された。勝利によって、民衆からも信頼を得ると、１４２９年７月、ランス大聖堂で正式に戴冠式（塗油式）を挙行した。ランスはフランク王国のクローヴィスが国王として塗油され、歴代のフランス王と同じく聖なる王に列なることとなった。
余勢を駆って、ジャンヌはパリを目指して進軍した。防備は固く、攻略には難航する。
兼ねてより、フランスから独立を狙っていたブルゴーニュ公国は、決断を下した。1430年5月23日にコンピエーニュ包囲戦でジャンヌ＝ダルクを捕らえて、1万エキュでイギリスに売り渡した。戴冠したシャルル7世は、なぜ救わなかったのか、今なお歴史家の間で様々な見解が寄せられている。目的を果たしたシャルル7世が、もはや用済みと判断したのか、または部下を含め取り巻きによって、救出の代償は大きいと説得された可能性がある。悲劇の戦士ジャンヌは、ルーアンの宗教裁判にかけられ、1431年に火刑に処される。イギリスへ肩を持ったことにより、ブルゴーニュ公国の運命が決する。本来はフランスを裏切り、制裁を受ける立場だった。シャルルは、穏便に対応し、1435年にブルゴーニュ公フィリップとの間で「アラスの和約」を結び、内乱を終結させた。条約には、イギリスとの同盟の破棄、戦いの協力が盛り込まれていた。ブルゴーニュ公フィリップは、自らの立場を守るため、応じる。百年戦争の終結に向けて、シャルルは、ブルゴーニュ公フィリップと共に、イギリス軍へ怒涛のごとく攻撃する。１４３６年にはリシュモン元帥率いるフランス軍がパリに入城する。形成は一気に変わり、1450年にはノルマンディを、１４５３年にはギュイエンヌを奪還し、カレーを除いてほぼフランス本土からイギリス軍を撤退させた。百年戦争終結に伴い、シャルル７世は勝利王として後世に名を刻んだ。ブルゴーニュ公国は、シャルル7世の王権強化に伴い、従属を強いられる。イギリスへ加担した経緯から、制裁を受け入れる立場に変わりない。
5. ブリュゴーニュ公国 滅亡へ
百年戦争の終わりに伴い、フィリップの次のブルゴーニュ公シャルル（ル＝テメレール、突進王、勇胆王、大胆王ともいう）は、フランス王国内で弱い立場だった。反旗を翻して、当時のルイ１１世との戦いに挑み、長年の悲願だった公の立場からの独立を図る。フランス側には、傭兵としてスイスからも借り出されていた。ブルゴーニュ戦争（１４７４〜７７）は、ブルゴーニュ公国 対 フランス王国、スイス盟約者同盟、ローレヌ公国である。突進公の異名を持つシャルルは、１４７７年ナンシーの戦いにて、命を落とした。戦いはフランス王国の大勝利、ブルゴーニュ公国は、百年戦争により、イギリス側からフランス側へ寝返ったとはいえ、敗戦国のような立場だった。フランス王国からの独立は悲願だったのである。中フランクが元となった神聖ローマ帝国からの離脱を図るスイス盟約者同盟を味方につけたフランス王国が終始優勢に進めていた。敗者となったブルゴーニュ公国は、消滅の道を歩む。ナンシーで戦死したシャルル突進王には、男子がなく、後継者が途絶えたのである。娘マリーが遺産を相続し、夫ハプスブルク家のマクシミリアン１世がブルゴーニュ公領（ブルゴーニュとフランドル）を収めた。政略結婚により、神聖ローマ帝国を収めるハプスブルク家は、オーストリアから、西ヨーロッパの中枢部、ブルゴーニュとフランドルに勢力を拡大することとなった。
ハプスブルク家が治めた神聖ローマ帝国は、1618年から1648年に渡った三十年戦争により、プロテスタント連合軍との戦いで敗れ、弱体化する。当時フランス王ルイ13世の時代、宰相として実権を握ったリシュルーは、ウェストファリア条約により、アルザス地方を獲得する。ブルゴーニュ戦争でフランス王国の勝利の立役者となったスイス盟約者同盟は、はれて独立国として認められた。
フランスの宮廷において、高級感のあるブルゴーニュワインが、宴会で出されるようになった。貴族たちは、こぞってブドウ畑を買い上げ、農民達を働かせ、収穫物を手に入れていた。時のコンティ公ルイ・フランソワ一世は、ブルゴーニュの畑の所有に特別な思いを持った。類15世の寵姫として政治の場で発言していたポンパドール夫人から、分けてもらったのである。コンティ公は苦労の末に獲た喜びはひとしおだった。彼の名前にちなみ、現地の畑を「ロマネ・コンティ」と呼ぶ。
写真＝ブルゴーニュのワイン畑 掲載元 WINEWHAT 2016年12月12日付
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ブリュゴーニュの畑は、貴族の管理化に置かれ、農民達は搾取される存在だった。1789年のフランス革命により、農地改革が行われた。
教会や貴族に専有されていた葡萄畑は、農業に従事していた市民にも分け与えられた。大規模から、小規模農業に変わり、ひとつの区画が縮小する。従って、造り手（ドメーヌ）も小規模な家族経営が中心になった。
収穫逓増の法則に従うと、一人一人が小さい土地を耕すよりも、規模の拡大により、生産性が高まる。より効率化を目指して、ブルゴーニュではネゴシアン制度が発展した。
ネゴシアンとは、ぶどうもしくは醸造されたワインを買い上げ、瓶詰め以後の作業をおこなう大規模経営の商人のことをさす。醸造後ワインを瓶詰めし、日付を記録したラベルを貼り、倉庫に保管する。飲み頃になると、倉庫から取出し、品質を見極めたうえで、市場へ出荷する。ワイン業界において、「ネゴシアンもの」は、大量生産品の同義語的に使われる傾向がある。ネゴシアンが一定規模の以上のワインを生産するに当たり、いくつかの小さなドメーヌの収穫物を混ぜ合わせ、味を確かめる。すると、味が良くなるという。土地や葡萄を知り尽し、かつ効率的に造られたネゴシアンもののワインは、土地特有の風味が漂う。生産効率も高く、コストパフォーマンスに優れている。
詳細 世界有数のワインの生産地 ブリュゴーニュワインの歴史 2017年4月7日付
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温暖な気候に恵まれ、世界的にワインの生産地として知られるブルゴーニュは、北海道の美瑛を彷彿とさせる、なだらかな丘が続く。豊かな資源を求めて、神聖ローマ帝国の後継国家となるドイツの占領を受けたこともある。第1次大戦、第2次大戦と、ドイツの配下に置かれたものの、連合国のイギリスやアメリカによって開放され、2度に渡る大戦後、フランス共和国に返還された。
写真＝アルザス地方のコルマールのクリスマス 掲載元 Noel en Storasbourg
フランス大使館によると、12月6日にアルザスとロレーヌ地方では、無事に聖ニコラ祭が開催された。ブルゴーニュ戦争の行方を決した舞台ナンシーでは、花火が打ちあがり、街中でパレードが行われる。子供たちにはお菓子が贈呈された。キリスト教文化が根付くフランスは、2024年にパリ夏季オリンピックの開催を控える。ヨーロッパの民主主義国家として、近隣諸国と協力しながら、経済活動を続けていく。
前編 １２月１４日付 https:/
2024年に横浜市と姉妹都市締結65周年を迎えるリヨンと共に国内のブルゴーニュ公国の歴史、フランスとイギリスの王国が争い、ジャンヌ・ダルクも加わった百年戦争についても考察する。
以下 百年戦争関連日記
� ．ぅ�リスジョン王が署名したマグナカルタ 第１章 1 より https:/
�� フランク王国ピピンの寄進 １４世紀フランス王国による教皇のバビロンの捕囚について
第３章、https:/
�� 西ローマ帝国滅亡に関する日記
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第4章 フランスのクリスマス ブルゴーニュ公国の歴史、2024年に横浜市とフランスのリヨンが姉妹都市締結65周年を迎える。
１から６段階に分けて紹介。
港の見える丘公園のブラフ18番館では、フランスのクリスマスの飾りつけが行われていた。１階の暖炉のある一室では、フラワー文字で「LYON」と表現している。
1．リヨン出身第４代ローマ皇帝クラディウス 聖ニコラス祭
神奈川県横浜市は、2024年にフランスの第二の都市リヨンと姉妹都市締結65周年を迎える。過去には両都市間で交流事業を行い、55周年、60周年の節目に、記念行事を開催した。両都市の共通点は、絹貿易で栄えたことにある。リヨンは、人口51万人、都市圏を含めると230万人に上る。（いずれも2017年の情報）ソーヌ川とローヌ川の合流地点に位置し、古代から河川舟運や陸運の要衝として発達した。古代ローマ帝国時代にはローマ属州ガリア・ルグドゥネンシスの首都ルグドゥヌムとして繁栄し、中世以降は絹糸・絹織物の交易・生産で栄えた。
以下 クラディウス ローマ人の物語（19）／第4代皇帝クラウディウスの善政と悲劇
2019年12月29日付 https:/
町の礎を築いたのは、初代皇帝アウグストゥスの腹心であるアグリッパだった。ルグドゥヌム（当時のリヨンの呼び名）を発端に、交通網を整備する。ガリア全域に広がる「アグリッパ街道」と呼ばれるローマ街道を建設し、輸送ルートを確保した。人の行き来が楽になり、毎年ガリア３州（ガリア・ルグドゥネンシス、ガリア・アクィタニア、ガリア・ベルギカ）の代表が集まるガリア人評議会を主催した。ローマ時代より、ガリアの政治的・軍事的・経済的な中心地に発展した。政治の中心として栄えた町に、第4代皇帝クラウディウスが生まれた。
病弱だったクラウディウスは、歴史家として過ごし、アテネやスパルタの都市国家を研究史尽くした。先代の３代皇帝カリグラが暗殺され、50歳で戴冠すると、歴史家として蓄えた知識が大きく役立った。国家破綻の危機から脱して、ブリタニア（現在イギリス南部）を征服し、領土拡大に成功する。指揮官として経験は乏しいとはいえ、後に皇帝となる戦略家ティトゥスの貢献により、遠征に成功した。政治面では、元老院の権限を認め、歴史家として研究しつくしたアテネやスパルタを模範にして、国づくりを勧めた。秘書官システムの導入、郵便制度の民間開放、新たな港の建設など、精力的に帝国統治を推進したクラウディウスは、ローマをアテネに並ぶ近代国家へ押し上げた。50歳以降に政治的手腕を発揮した皇帝は、財政の再建、行政改革に成功したものの、女性問題がこじれ、4番目の妻小アグリッピーナの毒殺により
、63年の生涯を閉じた。
クラディウスは演説家としても名高かった。紀元前48年に元老院での演説は、一部碑文に刻まれている。リヨン市内で１５２８年に見つかり、ローマが人類に残した最大の教訓と呼ばれた。
歴史家皇帝クラディウスを輩出したリヨンは、クリスマスは一段とにぎわう。イブに近づくにつれて、中心街がライトアップされ、「光のショー」が行われる。
写真＝リヨン市サンジャン大聖堂 掲載元 ＡＸＩＳ 2018年11月6日付 https:/
リヨンを含め、フランス国内では12月6日に、クリスマス前のもう一つの大事な祝典が開かれていた。お祭の背景には、守護聖人サン・ニコラの誕生日にある。1477年に2つの地方の守護聖人として、人々から崇められてきた。
以下 SORTIRA PARIS 2023年12月6日 参考
聖ニコラスは、実在した人物である。聖者として奉られた分けは、バーリのニコラスとしても知られるマイラのニコラス司教の布教活動にある。時は3世紀、現在のトルコの南に位置するリキアに生まれ、投獄された後、数年間の流刑を余儀なくされ、343年12月6日に亡くなった。キリスト教信者であったミラのニコラスは、ディオクレティアヌス帝によって迫害された。
彼は死後にも多くの信者に影響を及ぼした。地球上で起こる様々な奇怪な出来事が、ミラのニコラスの力によるものと理解されるようになった。伝説として語り継がれるのは
肉屋に殺された3人の子供が息を吹き返した出来事である。3人の子供の命を奪った肉屋についても、不思議な逸話がある。聖ニコラスの見回りに同行し、言うことを聞かない子供たちを懲らしめた。肉屋は、人々の行いを善か悪か、判断する「審問官」の役割を果たす。対して、マイヤのニコラスは 子供や学童、独身者や囚人の守護聖人となった。
2．フランク王国時代へ遡る
ニコラスの生誕日の1477年は、歴史の転換点となる年だった。アルザスとロレーヌ地方は、古代ローマ帝国に属していた。西暦395年にテオドシウス帝の時代に、息子たちによって東西分割される。アルザスとロレーヌ地方は、ホノリウスが収める西ローマ帝国に含まれていた。西暦476年に、ゲルマン民族の傭兵オドアケルによって、西ローマの帝冠は、東ローマに贈られ、事実上滅亡する。イタリア半島の勢力図は、ゲルマン民族が優勢になった。西暦481年に、ゲルマン系サリ族のメロヴィング家クローヴィスがフランク人の各部族を統一する。ガリア（後のフランス）北部にフランク王国を建国した。7世紀前半に、宰相だったカロリング家のピピンが、ネウストリア分国の戦いに勝利し、領土を獲得する。その息子カール＝マルテルによって、周辺諸国を次々と屈従させる。宰相として軍の識見を持つ。王国の実権はメロヴィング家からカロリング家へ取って代わった。西暦732年、ピレネー山脈を超えて、アキテーヌ地方のバイヨンヌとボルドーを手に入れ、北上を続けた。西暦732年に、配下に置いたアキテーヌ公の要請により、イスラムのウマイア王朝と現フランス中部のトゥール・ポワティエにて、7日間に渡る激しい戦いを演じた。敵将の騎兵隊アブドゥル＝ラフマーンの戦死により、イスラムの脅威を排除する。西暦751年に戴冠し、カロリング朝を創設する。西暦800年にその子カールが戴冠し、ローマ王の称号を得る。カロリング朝の時代フランク王国は領土拡大により、それぞれ地域の主である公に一定の権限を与えていた。封建制度が続いたことにより、分権社会だった。カール大帝の後を継いだ2代目のルイが亡くなると、3人の兄弟により、分割統治された。西暦843年のヴェルダン条約に基づき、東はロタール一世、中はルートヴィヒ、西はシャルルが継承した。
写真 掲載元 帝国分裂4-ヴェルダン条約、メルセン条約 2017年9月29日付け
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続く855年のプリュム条約により、中フランク王国は、ロタリンギア、プロヴァンス、イタリアに再分割され、さらに870年のメルセン条約でロタリンギアとプロヴァンスが西フランク王国と東フランク王国に吸収された。カロリング家の王位は三国で世襲制度の下、安定したように見えた。後継者問題が起こり、875年にイタリアで、911年には東フランクで、987年には西フランクでそれぞれ断絶した。西フランクでは、新たにパリ伯ユーグ＝カペーが、王位を継いだ。いわゆるフランス王国の始まりである。フランスの元となった西フランクは、2度目のメルセン条約により、後に神聖ローマ帝国になる中フランクの一部の領土を獲得する。第2次ゲルマン民族の大移動により、現在フランスの海岸線ノルマン地方は、統制が及んでいなかった。西暦911年にはロロが率いるノルマン人が北西の海岸を拠点に、内陸へ進軍した。パリへ迫るにつれて、当時のカペー朝の国王シャルル３世は、和平に向けて働きかけた。ロロに対して、キリスト教に改宗することを条件にノルマン地方の領有を認めたのである。ノルマンディ公国の領主としての地位を与え、争いを回避した。ロロの５代後、ノルマンディー公ウィリアム（フランス名ギョーム）は、西暦1066年にノルマン＝コンクェストによってイングランド王となり、ノルマン朝を開くこととなる。
フランス国内では、アンジュー公国やブルゴーニュ公国を始め、地方勢力が台頭した。ブルゴーニュ公国は、後にフランス王国とイギリス王国の間で起こった百年戦争の勝敗を左右する存在になった。カペー朝時代は王権が弱かったものの、続くブルゴーニュを治めたヴァロワ家では、地方勢力を集約した。
3．ブルゴーニュ公国誕生、ワインの生産について
ブルゴーニュはワインの生産地、キリスト教信仰と生産は深いかかわりがあった。クリュニー会とシトー会の2つの宗派により、ブルゴーニュの銘醸畑は開墾される。クリュニー会は、西暦909年、または西暦910年に、アキテーヌ公ギョーム一世が、ブルゴーニュ南部マコン北西20ｋｍに位置するクリュニーの地に創設したベネディクト派の修道会である。世俗化したキリスト教会の改革を掲げていたものの、規模の拡大につれて、政治の場にも介入した。
創設時の回帰を掲げたのはベネディクト派の修道会、シトー会である。禁欲的で、模範元首である。ニュイ・サン・ジョルジュ東の荒地に、ロベール・ド・モレーム（後の聖ロベルト）が創立した修道会である。シトー派は、白い修道服を身にまとう。
明るくて華美なクリュニー派と禁欲的なシトー派、体質が全く異なる2つの修道会がブリュゴーニュの中心だった。
ヴァロワ家＝ブルゴーニュ公となった経緯は、1356年のポワティエの戦いにある。ヴァロワ家のフランス王ジャンが捕虜になると、同じ身の末子のフィリップに公領を与える約束をしたのである。1364年、ジャン王の後継者シャルル５世は、先代の約束を履行した。ジャンの末子のフィリップにブルゴーニュを継承させ、公の地位を与えた。ヴァロア家系ブルゴーニュ侯家の成立である。
フィリップは、公の地位のみでは満足せず、領土拡張を狙った。フランドル地方伯家のマルグリットと結婚し、戦わずにして領土獲得を試みた。１３８４年、フランドル伯の死去により、妻マルグリットに相続権が渡った。マルグリットの夫フィリップには、婚姻時共同所有との約束が交わされていた。新たにブルゴーニュ公のネーデルラント全域の制覇まで視野に入れ、中世フランス最大の封建領主となった。
ワインの生産にも後世に影響を与えた。フィリップ公は、ガメイの栽培を禁じ、ピノノワールのみ育てるように政令を出した。ピノノワール単一品種のワイン栽培に特化したのである。
詳細 修道院やワイン栽培について フランスワインノキ ブリュゴーニュ地方の歴史 2021年11月14日付
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一国の主と変わらないブルゴーニュ公は、領土拡大につれて、近隣公国との争いに発展する。真っ先に対立したのはオルレアン公国だった。西暦１４０４年、フィリップの後を継いだジャン（サン＝プール、無畏公）は、オルレアン公ルイと緊張関係が切れて、争いになる。ブルゴーニュ派の頭領となり、オルレアン・アルマニャック派とは犬猿の仲だった。百年戦争さなか、王権が弱かったフランスでは、公国同士で領土を巡る攻防が繰り広げられていた。戦争の発端まで遡ると、イギリス王国とフランス王国の間の領土問題にある。西暦1337年、イギリス国王エドワード３世が、フランス王位の継承権を主張して、ヴァロワ朝のフィリップ６世に挑戦状を発したことにある。西暦1340年に始まり、1453年まで断続的に続いた。当時カペー朝のシャルル4世が、男子を残さず、死去したことにより、後継者問題が起こっていたのである。兄弟も既に亡くなっていたことにより、従兄弟にその座が巡ってきた。ルーツが異なる従兄弟から三人が候補に上がった。フランスの三部会は、フランス王国生まれを考慮し、フィリップ＝ド＝ヴァロワを後継者に任命した。フィリップ６世として即位に伴い、王の座はカペー朝からヴァロワ朝へと受け継がれた。
4．百年戦争へ
写真 掲載元 歴史まっぷ 百年戦争とバラ戦争に関する系図
百年戦争の発端は、実に複雑だった。フランス王国内の自治権を与えられた公国が、イギリス王国の支配下にあったことにある。西暦1140年にフランス王国内のノルマンディー公5代目ウィリアムが、イギリスの亡きエドワード3世の後を継ぎ、イギリス＝ノルマンディー朝の成立が発端である。イギリス王が、フランス王国内に所領を持つことになったのである。西暦1154年に成立したプランタジネット朝のヘンリ2世もアンジュー、ノルマンディー、アキテーヌを領有していた。フランス王国の所領内において、イギリス王国側は従う義務がある。王権を強化するイギリスとフランスの間でも緊張関係が続いていた。両国の間を取り持ったのはローマ教皇だった。カトリックの権威である教皇は、互いの言い分を聞き、解決を目指していた。13世紀にイギリス王ジョンは、フランス王フィリップ2世の計略にはまり、土地を失う事態に陥っていた。ジョンは、男子の跡継ぎがなく、妻と離婚裁判にゆれていた。当時8歳といわれているアングレーム伯爵の娘イサベラを言いくるめて、新たに婚姻関係を結んだことに対して、裁判で訴えられていた。出廷を拒むジョンへの制裁として、フィリップ2世は土地を取り上げたのである。ノルマンディーやアンジューは、フィリップ2世に忠誠を誓うことにより、無傷で配下に置いた。ジョン王がフランス王国内で所有する土地は、ロワール川以南の地域のみにとどまった。失地王の名を着せられたジョンは、教皇に救いを求めていた。大司教の人事を巡って、異を唱えたことにより、破門宣告を受けた。対仏戦争による戦費が嵩み、諸侯からも見放された。西暦1215年にロンドン近郊にて、大憲章（マグナ＝カルタ）に署名をさせられる。法に基づいて諸侯が、王権を監視するようになった。自暴自棄になったジョンは、王としての矜持を保つべく、失地回復を目指し、1214年にアキテーヌへ出兵した。ヴーヴィーヌの戦いで、フィリップ2世に敗れ、残る土地は、ギエンヌのみになる。
写真 掲載元 百年戦争当時の英仏関係: クレシーの戦い, ポワティエの戦い,アザンクールの戦い
世界の歴史まっぷ
イギリス王国とフランス王国の間では、話し合いによる解決は程遠かった。両者武力衝突により、土地の奪い合いが起きていた。調停役のローマ教皇においては、フランス王国によって力ずくでねじ伏せられ、ローマからアヴィニョンへと移転させられていた。1378年には、教会大分裂が起こっていた。ローマ教皇を支配下に置いたフランスは王権を強化する。対してイリギス側はフランスに従う気はなく、失地回復を掲げることにより、戦争は避けられない状況になっていたのである。
ブルゴーニュ公国は、イギリス王国の味方についた。きっかけは、アルマニャック派との対立にある。領土を巡って、互いに譲り合えなかった。アルマニャック派とは、アルマニャック伯が主導するオルレアン公国のことを指す。１４１９年にはジャンが、フランス王国ヴァロワ朝側に立ったアルマニャック派によって謀殺される。後にフィリップ（ル＝ボン、善良王）がブルゴーニュ公国を継承した。百年戦争に関する対応は、当初中立を表明し、様子見だった。戦況はイギリス有利に働いた。１４２８年、イギリスが、オルレアン・アルマニャック派に推されたシャルル７世をオルレアンに包囲する。シャルル7世は、聖女として語り継がれるジャンヌ・ダルクとの繋がりが深い。神のお告げを聞けるとうわさされた一介の農家の貧しい娘だったジャンヌとシノン城で面会した。彼女の言葉から、信頼を寄せ、軍の指揮官として派遣する。百年戦争において、劣勢に立たされる中、１４２９年５月にオルレアンはイギリス軍から解放された。勝利によって、民衆からも信頼を得ると、１４２９年７月、ランス大聖堂で正式に戴冠式（塗油式）を挙行した。ランスはフランク王国のクローヴィスが国王として塗油され、歴代のフランス王と同じく聖なる王に列なることとなった。
余勢を駆って、ジャンヌはパリを目指して進軍した。防備は固く、攻略には難航する。
兼ねてより、フランスから独立を狙っていたブルゴーニュ公国は、決断を下した。1430年5月23日にコンピエーニュ包囲戦でジャンヌ＝ダルクを捕らえて、1万エキュでイギリスに売り渡した。戴冠したシャルル7世は、なぜ救わなかったのか、今なお歴史家の間で様々な見解が寄せられている。目的を果たしたシャルル7世が、もはや用済みと判断したのか、または部下を含め取り巻きによって、救出の代償は大きいと説得された可能性がある。悲劇の戦士ジャンヌは、ルーアンの宗教裁判にかけられ、1431年に火刑に処される。イギリスへ肩を持ったことにより、ブルゴーニュ公国の運命が決する。本来はフランスを裏切り、制裁を受ける立場だった。シャルルは、穏便に対応し、1435年にブルゴーニュ公フィリップとの間で「アラスの和約」を結び、内乱を終結させた。条約には、イギリスとの同盟の破棄、戦いの協力が盛り込まれていた。ブルゴーニュ公フィリップは、自らの立場を守るため、応じる。百年戦争の終結に向けて、シャルルは、ブルゴーニュ公フィリップと共に、イギリス軍へ怒涛のごとく攻撃する。１４３６年にはリシュモン元帥率いるフランス軍がパリに入城する。形成は一気に変わり、1450年にはノルマンディを、１４５３年にはギュイエンヌを奪還し、カレーを除いてほぼフランス本土からイギリス軍を撤退させた。百年戦争終結に伴い、シャルル７世は勝利王として後世に名を刻んだ。ブルゴーニュ公国は、シャルル7世の王権強化に伴い、従属を強いられる。イギリスへ加担した経緯から、制裁を受け入れる立場に変わりない。
5. ブリュゴーニュ公国 滅亡へ
百年戦争の終わりに伴い、フィリップの次のブルゴーニュ公シャルル（ル＝テメレール、突進王、勇胆王、大胆王ともいう）は、フランス王国内で弱い立場だった。反旗を翻して、当時のルイ１１世との戦いに挑み、長年の悲願だった公の立場からの独立を図る。フランス側には、傭兵としてスイスからも借り出されていた。ブルゴーニュ戦争（１４７４〜７７）は、ブルゴーニュ公国 対 フランス王国、スイス盟約者同盟、ローレヌ公国である。突進公の異名を持つシャルルは、１４７７年ナンシーの戦いにて、命を落とした。戦いはフランス王国の大勝利、ブルゴーニュ公国は、百年戦争により、イギリス側からフランス側へ寝返ったとはいえ、敗戦国のような立場だった。フランス王国からの独立は悲願だったのである。中フランクが元となった神聖ローマ帝国からの離脱を図るスイス盟約者同盟を味方につけたフランス王国が終始優勢に進めていた。敗者となったブルゴーニュ公国は、消滅の道を歩む。ナンシーで戦死したシャルル突進王には、男子がなく、後継者が途絶えたのである。娘マリーが遺産を相続し、夫ハプスブルク家のマクシミリアン１世がブルゴーニュ公領（ブルゴーニュとフランドル）を収めた。政略結婚により、神聖ローマ帝国を収めるハプスブルク家は、オーストリアから、西ヨーロッパの中枢部、ブルゴーニュとフランドルに勢力を拡大することとなった。
ハプスブルク家が治めた神聖ローマ帝国は、1618年から1648年に渡った三十年戦争により、プロテスタント連合軍との戦いで敗れ、弱体化する。当時フランス王ルイ13世の時代、宰相として実権を握ったリシュルーは、ウェストファリア条約により、アルザス地方を獲得する。ブルゴーニュ戦争でフランス王国の勝利の立役者となったスイス盟約者同盟は、はれて独立国として認められた。
フランスの宮廷において、高級感のあるブルゴーニュワインが、宴会で出されるようになった。貴族たちは、こぞってブドウ畑を買い上げ、農民達を働かせ、収穫物を手に入れていた。時のコンティ公ルイ・フランソワ一世は、ブルゴーニュの畑の所有に特別な思いを持った。類15世の寵姫として政治の場で発言していたポンパドール夫人から、分けてもらったのである。コンティ公は苦労の末に獲た喜びはひとしおだった。彼の名前にちなみ、現地の畑を「ロマネ・コンティ」と呼ぶ。
写真＝ブルゴーニュのワイン畑 掲載元 WINEWHAT 2016年12月12日付
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ブリュゴーニュの畑は、貴族の管理化に置かれ、農民達は搾取される存在だった。1789年のフランス革命により、農地改革が行われた。
教会や貴族に専有されていた葡萄畑は、農業に従事していた市民にも分け与えられた。大規模から、小規模農業に変わり、ひとつの区画が縮小する。従って、造り手（ドメーヌ）も小規模な家族経営が中心になった。
収穫逓増の法則に従うと、一人一人が小さい土地を耕すよりも、規模の拡大により、生産性が高まる。より効率化を目指して、ブルゴーニュではネゴシアン制度が発展した。
ネゴシアンとは、ぶどうもしくは醸造されたワインを買い上げ、瓶詰め以後の作業をおこなう大規模経営の商人のことをさす。醸造後ワインを瓶詰めし、日付を記録したラベルを貼り、倉庫に保管する。飲み頃になると、倉庫から取出し、品質を見極めたうえで、市場へ出荷する。ワイン業界において、「ネゴシアンもの」は、大量生産品の同義語的に使われる傾向がある。ネゴシアンが一定規模の以上のワインを生産するに当たり、いくつかの小さなドメーヌの収穫物を混ぜ合わせ、味を確かめる。すると、味が良くなるという。土地や葡萄を知り尽し、かつ効率的に造られたネゴシアンもののワインは、土地特有の風味が漂う。生産効率も高く、コストパフォーマンスに優れている。
詳細 世界有数のワインの生産地 ブリュゴーニュワインの歴史 2017年4月7日付
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温暖な気候に恵まれ、世界的にワインの生産地として知られるブルゴーニュは、北海道の美瑛を彷彿とさせる、なだらかな丘が続く。豊かな資源を求めて、神聖ローマ帝国の後継国家となるドイツの占領を受けたこともある。第1次大戦、第2次大戦と、ドイツの配下に置かれたものの、連合国のイギリスやアメリカによって開放され、2度に渡る大戦後、フランス共和国に返還された。
写真＝アルザス地方のコルマールのクリスマス 掲載元 Noel en Storasbourg
フランス大使館によると、12月6日にアルザスとロレーヌ地方では、無事に聖ニコラ祭が開催された。ブルゴーニュ戦争の行方を決した舞台ナンシーでは、花火が打ちあがり、街中でパレードが行われる。子供たちにはお菓子が贈呈された。キリスト教文化が根付くフランスは、2024年にパリ夏季オリンピックの開催を控える。ヨーロッパの民主主義国家として、近隣諸国と協力しながら、経済活動を続けていく。
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