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2023年12月08日11:47

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話題作『ゴジラー1.0』

新しくできたススキノの東宝シネマズすすきの<Dolby Cinema>で鑑賞。迫力ある映像と音を体感できた。昭和のゴジラを描いているというので期待して観たのだが、それなりに面白かったものの、やはり物足りなさは残った。

いちばん気になったのは、ゴジラがご都合的すぎるのだ。前半は、闇夜に海のなかから突然現れ、島の人間たちを蹴散らし、海でのバトルは『ジョーズ』のように水棲怪獣として背ビレが迫力ある描写になって迫ってきていた。銀座上陸と襲撃では、VFXによる見事な臨場感。人々が逃げまどい、電車が破壊され、浜辺美波が水中に転落する場面や爆風など見どころたっぷりだった。間近に迫るゴジラが描かれていた。だが、人間たちのゴジラ殲滅作戦の立案からしばらく出てこない。そして、都合よく作戦準備が整ったあたりに出てきて、上陸して地方の家々を破壊していたところを神木隆之介の見せ場を作るために飛行機で海へと誘導される場面があまりにもご都合主義的な感じがした。あっさり海へと誘導されていくゴジラは、なんだか飼い馴らされた怪獣みたいでゲンナリ。1機しか飛んでいないハエみたいな飛行機を追いかけて日本海溝まで連れて行かれ、まんまと海に沈められるのは、ゴジラの圧倒的怖さ、理不尽さ、迫力を奪うものだった。

ゴジラが「原子爆弾の放射能により変異的に生まれた巨大生物」であるならば、原爆(核兵器)を象徴しており、人間の罪が生み出したとも言える存在である。『シン・ゴジラ』は明らかに東日本大震災と原発の放射能汚染を連想させていたが、ゴジラには戦争、原爆、巨大な自然災害などの隠喩を宿命づけられている。巨大な自然への畏怖、人間にはコントロールしえない圧倒的な力がこれまでも描かれてきた。その存在の宿命的な悲しさが今一つ感じられないのだ。それは私の勝手なゴジラへの欲張りな思いだろうか。

戦争で死ねなかった悔恨を抱えた神木隆之介や、生き残った人々の戦争の傷跡やトラウマから脱け出すために、それぞれの「戦争」を終わらせるために、ゴジラとの闘いが描かれていた。戦争の負の感情を全て体現し、ゴジラを海に沈めることが、死者たちへの鎮魂になっていた。それが最後の人々の敬礼になって表現されていた。死者たちの魂を鎮めるために、ゴジラを海の底に沈める必要があったのだろう。特攻や死を賛美することなく、「生きること」を命題にしていたのは良かったと思うが、戦争を清算するためにゴジラが都合よく使われているような感じがした。人間が敵わない畏怖の対象としての自然の圧倒的な力、さらに人間が生み出した原爆という恐怖そのもの体現であるはずのゴジラの存在が、なんだか軽く感じられたのが残念である。キノコ雲や黒い雨、そしてゴジラが放つ放射線熱線や皮膚の再生などの示唆的な表現はあったが、放射能の恐怖はそれほど感じられなかった。続編につながるかと思われる浜辺美波の首筋に見えた傷跡には少しドキリとさせられたが、もう少し放射能の被害と恐怖を強調しても良かったのではないか。

過剰な悔恨ではなく表情を失った神木隆之介や、昭和的な美人を演じた浜辺美波は好演していたと思うが、佐々木蔵之介や吉岡秀隆の芝居は、やや大げさで鼻についた。


2023年製作/125分/G/日本
配給:東宝
監督・脚本・VFX:山崎貴
製作:市川南
エグゼクティブプロデューサー:臼井央、阿部秀司
企画:山田兼司、岸田一晃
撮影:柴崎幸三
照明:上田なりゆき
録音:竹内久史
特機:奥田悟
美術:上條安里
VFXディレクター:渋谷紀世子
編集:宮島竜治
音楽:佐藤直紀、伊福部昭
キャスト:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介
☆☆☆3

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