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2023年10月15日08:47

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ここちよさの建築[読書日記956]

題名:ここちよさの建築
著者:光嶋 裕介(こうしま・ゆうすけ)
出版:NHK出版
価格:700円+税(2023年5月 第1刷)
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マイミクさんの読書日記で知った本です。
建築家の知り合いがいるので、興味を持って手に取りました。

目次は次の通りです。
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 はじめに
 第1章 そもそも建築って何?
 第2章 建築を読み取ろう
 第3章 身体で空間を感じよう
 第4章 ここちよい住まいのつくり方
 建築をもっと知るための23冊

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印象に残った文章を引用します。

【はじめに】から。
“ここちよさとは自分の身体的な感覚の一つです。一人ひとり顔が違うように、ここちよさも人によって異なります。また自分にとってのここちよさは、わかったり、わからなかったりもします。逆に違和感や不快感はよくわかるものです。コインの表と裏のような関係と言えます。”(7p)
 ⇒たしかに、「ここちいい」という感覚より「違和感・不快感」は感じやすい気がします。

【第1章 そもそも建築って何?】《建築は人の映し鏡》からアメリカの作家ソロー(1817〜62)が二〇代後半に湖畔の小屋で自給自足の生活を送ったエピソードの説明。
“僕は常々、「建築は人の映し鏡である」と思っています。森の小屋がソローという人間の映し鏡であるように、みなさんの住んでいる建築は、みなさん自身の現在の姿であると考えることができます。同じように、都市の高層ビル群は、天へと昇る飽くなき欲望をもつ社会の映し鏡です。”(26p)
 ⇒私は高層ビルがあまり好きではないのですが、もしかするとそういった「欲望」を感じるからかもしれません。

【第2章 建築を読み取ろう】《モダニズム建築の登場》から、有名なモダニズム建築について。
“モダニズムは約一〇〇年前に始まった建築の潮流で、ドイツのデザイン学校バウハウス、オランダの美術運動デ・ステイル、建築家ではフランスのル・コルビュジェ(1887〜1965)、ドイツのミース・ファン・デル・ローエ(1886〜1969)などがその代表として名前が挙がります。
 モダニズムの特徴は、伝統的な装飾を廃し、機能性や合理性を追求したところにあります。シンプルで真っ白で、均質的な建築です。”(42p)
 ⇒「モダニズム」という言葉を読んで、学生時代の授業を思い出しました。

【第3章 身体で空間を感じよう】《違和感を大事にする》から、本書の核心である「ここちよさの建築」について。
“空間のスケールを意識しながら、自らの感覚を点検し続けること。ここちよく感じる/感じないという自分なりの反応をその都度たしかめること。そうした小さな感覚を自分の中にストックしていく。それはまさに、空間との対話を通して自分自身の身体を知っていくことにつながるのです。(略)
 空間が働きかけてくるものを自分の感覚でしっかり受け止めて、検証し、自分の環世界を丁寧に育てていく。「私が好きなのはこういう空間で、こうした環境がここちよい。だからもっとこうしよう」と身のまわりの環境を工夫しながらつくっていく。自分の身体と空間を手入れしていく。”(80〜81p)
 ⇒著者は自分が「自分の身体感覚と向き合う」と学んだのは、“合気道の稽古を続けているから”(73p)と書いています。

【第4章 ここちよい住まいのつくり方】《ここちよさの七つの条件》から、著者が考えるここちよさの条件。
“一つ目の条件は、ホッとする空間をつくることです。ホッとするとは、心から落ち着いて、身体的にも気持ちがいい、不快感のない状態のこと。それは、森の中を散策して木漏れ日を浴びるあの感じ。あるいは、温泉に入ったときのあの感じ。言い換えると「癒やし」ということになります。”(83p)
 ⇒その他の条件は次のようになります。2)好きな物を集める, 3)思いを馳せる, 4)何かしたくなる, 5)変化する, 6)愛着をもつ, 7)他者を招く

建築の良さについて、「ここちよさ」というアプローチで考えた(あるいは感じた)ことはありませんでした。
自宅(マンション)を含めて、この本で提唱されている方法を様々な建築で試してみたいと思いました。

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光嶋 裕介(こうしま・ゆうすけ)
1979年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。建築家。一級建築士。合気道参段。
早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、同大学院博士前期課程修了。2021年、同大学院博士後期課程修了。博士(建築学)。
ドイツの建築設計事務所で働いたのち2008年に帰国し、独立。神戸大学特命准教授。
建築作品に内田樹氏の道場兼自宅《凱風館》、《旅人庵》、《森の生活》、《桃沢野外活動センター》など。
著書に『これからの建築 スケッチしながら考えた』『つくるをひらく』(ミシマ社)、『建築という対話 僕はこうして家をつくる』(ちくまプリマー新書)『増補 みんなの家。 建築家一年生の初仕事と今になって思うこと』(ちくま文庫)など。
ホームページ:www.ykas.jp
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