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2023年08月31日06:50

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2023年08月のうた

夕日


夏のゆうぐれ
水のなかにいるように、おもわれる
この手をさしのべ
夕日に手が、とどいたなら
ひきよせ
夕日と水のなかへ沈んでゆこうと思う。



ひとのちえをみても


ひとのちえをみても
ちっともえらいとはおもわないが
あおぞらやゆうやけや
いきものをみていると
うつくしくりかいできるようなきがする
じぶんのいきてきたわけが。



日をみる


日をみる

日をみている
悲しい意味を考えたが
わからない
けれどもきょう
てのひらをじっと
みつめている
心ない
心をつよく感ずる。



入り日をゆるす


入り日を ゆるす
静寂(しじま)に水を打つのは
哀しかろ

入り日を ゆるす
涙を流しながらあたける子よ
もう、よしなよ

鬼はやめよ
帰ろ。



八月の十日間


八月の
最初の十日間を
ぼくは無意味に暮らした
美味しいものを
すこしだけ食べた
それから誰かを
すこしだけ好きになった
さして声をあげずに暮らした
雨を見ていた
苦るしい
苦るしい
晴れの日も 雨
曇りの日も 雨
雨だけを 見ていた。



骨の肉


骨ばった指よ
浮きたった手の甲の静脈よ
細い 腕(かいな)よ
細い 骨の肘よ
肋よ
背(そびら)に生えている死よ。



骨のような樹


さんぽ道に
骨のような樹が立っている
真冬でも 真夏でも
骨でしかない 樹
骨の樹を視ていると
樹もわれをみつめている
真実の目に見抜かれている。



声の本


声の本
歌声の本
絶叫の本

声の本
ひとり言の本
囁きの本

声の本
夜深けの
問わず語りの本。



樹の白さ



樹の白さ
真っ黒な樹の白さ
あれは
夕焼けの白い雲

樹の白さ
あの白さの真っ黒さ。



雲が、淋しい


さびしい
雲が 淋しい
はりさけそうな 空
空が淋しすぎて
気が変になりそう。



風鈴のしじま


さみしい
壁が
けがれている
自身の襯衣(シャツ)まで
けがれている
自身の声も、
疎外人は みな残らず
けがれている。



淋しいから


淋しいから
生きていようと思った
淋しい から
木の葉でも
なんでも構わず
食べたかった。



山々


美しい山々が
星々のむこうに見えている。



生きることは


生きることは
つま先立ちで歩くことではないし
そもそもが背伸びすることでも無い
あるがままでいい
やさしいものになれ
心からなりたいものになれ
周りをけがさず自らを清めよ
少女よ、そんなにひとを妬(ねた)むな
心をよごすな。



星、欲し


星、欲し
星を手ににぎる

そんなこと
飽きるほど星を見
思っただけ。



湖(美しいくに)


泣きもせず
笑いもせぬ
なみだは涸れてしまい
そのしずくの淋しみ
温かみだけが胸に残されている
湖(うみ)を見ていると
羨ましい
どうしてこんなに
美しいくになのだろう。



美しい夢


独りっきりの
こほろぎよ
私は美しい夢をみたよ
湖の汀に
鳴いている
やさしいてふてふの夢をみたよ。



うたうからだ


バレエダンサーのからだはうつくしい
そして醜く皺だらけになって怒る
闘う
バレエは闘いだ
花だ
生きてゆく樹だ
生命であり
死でもあり
満ちては虧けてゆく
それは呼吸のように光がもえるほどに
影がわきたつ。



都市計画された街路を


日ざかりが紅く燃えるような血を噴きだすようだ
血まみれの路上を
ぼくはよろよろとまっすぐ歩けない
血のような太陽と
血のような都市計画された街路と
そこを往かねば生きてはゆかれない怖ろしさを
ただ地面に脚を突き刺すように歩んだ。



自画像


その画の男性は裸身だった
なのに性器は最初から消し去られ
歯を食いしばっていた
デッサンは大きく狂っていて
すでに写生画の体裁をなしていない
髪は側頭部に生えているだけで
そこ以外はすべて禿げあがっている
眼球は大きく見開かれているにもかかわらず
右目と左目は違う方を向いている
口はへの字だが左は大きく垂れ下がっている
鼻は無く ただ穴だけが開いている
頸は細長く元から千切れそうにみえる
手脚は大きくゆがみ
すでにあるべき形を成していない
この画を描いたのは外ならぬ僕である
表題は「裸の私」
自身が描いたのに見たくないつらい画だ
心の悲鳴を聴いた
何故こんなものを描いたのか
自身にもわからない。



ただ


ただよえる 美醜の
そのはざまに
生きながら斃れていった人物のその
生涯の一部が切りとられてある
大きな国の大草原と
小さなくにの巨なる樹の末
ぶるぶると小さく波打った線
誰なのだこれを描こうとしたのは
誰もいない病室に
生きていた痕跡。



畏れよ


壁ではない
割れた硝子でもない
千切られた肉片でもない
花でもない
光でも暗黒でもない
畏れよ
己れにうまれよ
つくれ、より自身になるように
自身になるように なれ
畏れよ。



うわあ


夜空が あかるい
ことばが 昏い
いつまでも そこにいる淋しさ
花のさびしさ
花に死なれてゆく
  一輪挿しをおもう。



燈台


稲田がうつくしく風を吹かせ
はしっこなんぞは
夜ふけであれすっかり頭をたれて
ひしひしと穂を軋ませている
星の夜でもないのに其処らが明るく
まるで稲がみずからを光らせているかのよう
何が光っているのかぼくには分らない。



狐狸貉


まだ福祉の寮に入所したばかりのころ
寮へ帰る途中で 道に迷ったことがあった
早くしないと夕食の時間になってしまう
われの焦りがそうさせたのか
よく理解できないが
近道を行こうと思ったのがいけなかったのだ
いつまでたってもいつもの道に出ない
気がつくとまた同じ場所に来ている
人っ子ひとりいない
そこは保育園の前だった
よく知っている場所だったのに
それでも何故か迷子のまま
われはさ迷いつづけた
いま思ってもおそろしいわけではなかったが
あのまま夕間暮れのうすやみを
迷っていたらと思うとぞっとする。



すけっち


下手でいい
心がこもっていれば
しろつめくさの三枚の葉が
たとえゆがんでしまっても
そこに心があれば
それは詩も同じくだ
心を込め
言葉を決めつけず慎重に選んでゆけば
いずれあることばに辿りつく。








ぼくは言葉を捜す
はぐれてしまったわが子を捜すように
ゆ、ゆ
ぼくはだれなのだろう
その答があるだろう場所を
ぼくはけんめいに捜す。



亡霊


エレベーター・ホールに
亡霊がいる
階段のうえにも戦争の亡霊が立っている
どこの国の
どこの建物にも立っている
たいせつに愛して差し上げねばならない。



性能


生きて、生きて、
水音をくぐらせる
物音に物音をかさねる
物音を砕く
辿らせ、問いかける
僕は「何か言いたまえ」と詰問される
追いつめられる
だが
自身は口をもたず
応える性能を持たない。



いのち


ぼくが生れてきたのは何のためなのか
そのことを窺い知るために
そしてそれを一つの作品にするために生きてきたのか
わかりません
納得していないからぼくは生きてゆくのです
納得などできるわけがない
出口が最初から無い迷宮だとしたなら
ぼくはここに尽きてゆくのです
それが自身の宿命ならば、怖くはありません。



無言と無知


限りなくものを云うひとがいる
何にも云わないひともいる
始終無言で
ものごとを
あらゆる事象を
無言と無知でもってつらぬこうとする。



壊れた世界


或るこどもは言った
「絵のなかにある何かに見られているような」
ある子は怯え ある子は黙して語らなかった
大人はいろいろなことを言うけれど
結局表層的なことしか言うことができない
それが何であるのか
摑めそうでいて摑めず
言葉にしたくともできないのだ
アートとはそういうものだ
言葉にできそうでいてできない何か
そこにある確かな何かを描きだそうとする作業だ
画中の あるものは黙り
あるものは悶絶している
意志をもったものと
狂ったもの
見ただけで
何も言わなかったものだけが
もちえた 怒りでも憎しみでも哀しみでもない
或る感情
それこそがここに描かれているのだ
何も言うまい。



天の川


生と死と 地獄の
そのすえに
天の川がよこたわっている。



とこしなえ


空のすえに
小石がころがっている。



私の個性


無知蒙昧がわたしの個性
ぼくのつづるものは
こどもが壁にえがくらくがきだ
こどものらくがきと同じものなのだから
こどもをばかにするのと同じ論調で
わたしをばかにすればいい。



そこに湖を感ずる


そこに湖(うみ)をかんずる
月を感ずる
清んだ水がさらに澄もうとする
さすればもう
水は限りを越え
どんな霊魂になろうとするだろう。



恋する地球


うつくしい 世・界だ
恋する樹々、恋する雲、
恋する山、恋する海、
そして、恋する地球
神々はみな恋をして
風に吹かれる。



現世(うつしよ)


権力、横暴、と
恋する夜空と
どちらが尊いだろう。



明星


夜明け、明けの明星よ
地球も
たとえば金星から見たなら
あんなにちいさくても
光っているだろうか
輝く星・地球
其れを思うとぼくは
うれしくてたまらないのだ。



其処(そこ)


雲が輝いている
つまり〈あのひと〉が
其処にいる ということだ。



草の心


草の心をもっと知りたい
むしっても むしっても 生えてくる
その草を 私は
自身の母のように 思っている
草は 悲しみにみちていて だけどつよい
母はいまこの草となって 私をみている。



ゆたかな、壁


ゆたかな 壁
大きな声はつまらない
尊いのはささやきだ
ささやきは 胸に沁みる。


指田悠志
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