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2023年06月15日23:30
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シルクロード考古学研究 夏 だい グローバル科学文化出版 2022年01月25日
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ヴィヴィアン・ウエストウッドからオーブ柄の浴衣が登場、雪駄や扇子も
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p.305
一点目は、尼雅出土の裳の断片。白(現在、黄色く変色)の漢綺(14)を裁断してつくられたものである。漢綺の地紋は平織りである。経糸の本数は通常、緯糸の二〜三倍にあたる(原寸大の写真では、当該標本の密度は一平方センチあたり経糸六十六本に対し緯糸十八〜十九本となっている(15))。濃密な経糸に対し、緯糸はまばらであるため、織物の地紋のうえに経糸による帯状の畝があらわされている。紡織学では、これを「畦織」と呼ぶ(16)。紋様部分も経糸による表出だが(Wrap Patterned)、地紋と異なる組織で織られている。なお、漢代の単色のすかし文様には、おもにつぎの二つの組織法がもちいられている。
(1) 斜文によって文様を出す平組織〔Wrap twill(平地綾文綾)〕。すなわち、平織りの地紋を織るさい、経糸と緯糸の重なり方を「一たび上に、一たび下に」(交互に上下する)から、「三たび上に、一たび下に」〔3‥1斜文組織(経糸が緯糸に三本浮き、一本沈み、これを斜めに連続させる)〕に変更する。隣り合う二本の経糸と緯糸の組織顚が、階段状に斜めに進行し、ひとつづきに傾斜して対角線状をなすことによって文様があらわされる。
p.306
斜文組織の経糸が長く表面に出ることから、平地から浮かびあがった文様をなす。織物の裏面では、緯糸による同じ文様が呈される(図1、甲1と甲2)。織物の幅が長くはなく、経糸の本数も少ない、あるいは文様が複雑でない場合は、綜絖〔綜框、ヘルド。緯糸を通す杼道をつくるために経糸を連動させる用具〕を使用する必要がない。細い棒で経糸をひきあげて、杼の通る空間をつくればよいからである。だが、そうでない場合は、二枚以上の綜絖が必要となる。
たとえば、図1の織物を例にみてみよう。地紋には第1、2の綜絖二枚、文様には第3〜6の綜絖計四枚(図1、丙1または丙2の横の行)を使用する。通し方と提花法によって、文様の織り方は二通りに分かれる。丙(1)の通し方は、地紋と文様をわけて処理する方法である。提花のさい、文様を織りなす第3〜6綜絖のなかから、一枚のみをもちあげればよい。いっぽう、丙(2)の通し方だが、第3〜6綜絖から一枚、地紋を織りなす第1〜2綜絖からも一枚と、両方を同時に上下させなければならない。なお、文様を織りなすとき、丙(1)と丙(2)の綜絖通しの手順は同じである。
p.307
図1の文様を例にみてみると、織方図における杼口十五個の開口順序は、1、2、3、4、5、6、3、4、5、6、3、4、5、2、1となっている(図1、丙、織方図の解説を参照されたい)。これはあくまでも平織りであって、一部の経糸を長めに浮かせた平組織の変化形にすぎず、斜文組織〔綾組織〕ではない。よく知られるように殷商時代の出土品にすでに、平地にこの第(1)種のような、「経斜文」による菱文〔菱形の綾文〕がみられる(図2)(17))。漢代になってから、下記の第(1)種の「漢の綺組織」が盛行したが第(1)種のような綾組織経錦は、ロプノール(楼蘭遺跡)やアムール河沿い(居延烽燧)の漢代遺跡から出土している。唐にいたっても、この種の織り物はまだ織りつづけられた(18)。
p.308
このように、文様デザインからみても、織技術からみても、漢の絹織物は殷商時代からの伝統を脈々と受け継いでいたことがわかる。平地綾文織を北朝から初唐にかけての絹織物の特徴と位置づけ、漢の綺はすべて下記の第(2)種組織(「経畦文」、あるいは「漢式組織」と呼ばれる)による文様表出ととらえる説もみられる(20)が、誤った見解だといえよう。
(2) 第二種の組織は、「漢式組織」とも呼ばれる(21)。斜文部分の、長く表面に出る経糸に隣りあうもう一本の経糸も、平織りにされている。つまり、文様となる経糸の横に平織りの経糸をつけくわえ、二本の経糸が織物の表面に、「ト」字形の文様を反復再現する。一見、斜文と平文を組み合わせた織り方のようだが、これはあくまで平織りであり、文様を出すために表に一部の経糸を浮き出しただけである。したがって、平組織の変化形のひとつと考えたほうが、より適切であろう。この織り方は、上記の(1)から改良されたものらしい。文様となる経糸の横に平織りの経糸一組をつけくわえることで、織物の堅牢性を増すことができ、かつ文様の見た目には影響をおよぼさない。織物の表面では、斜文組織の経糸が平組織の三倍の長さで浮き出ている。この長めの経浮糸は絹の性質上、いささかねじれが加えられただけで、広がると、隣り合う平織りの経糸がちょうどその下にきれいに隠れてしまう(図4、甲1)。一見、上記の第(1)種の綾組織のようだが、注意深く観察すれば、両者の違いははっきりとみてとれる。
いっぽう、織物の裏面をみてみると(図4、甲2)、三本の緯糸をへだてた平組織どうしは、経糸が真ん中(綾組織をつくる経浮糸の後ろ)にずれているため、裏面の緯浮糸が短くなり、第(1)種組織のような表裏同様の、緯浮糸による鮮明な文様を呈することができない。しかし、この織り方では織物はより丈夫に仕上がる。
なお、綜絖を使う場合、通し順は図4、丙に示されたとおりである。つまり、地紋を織るさいは第一、二枚を交互にひきあげ文様を織るさいは第一枚か第二枚を第n枚と交互に動かすのである。nとは、複数枚ある綜絖のどれかをさす。一幅の織物に必要な綜絖枚数、各枚の通し順、さらにそのつど第何枚をひきあげるかは、文様によって変化する。たとえば、図4(図4、丙)をみてみると、平組織をつくる第一、二枚のほか、もう二枚、すなわち第三、四枚の綜絖が必要である。
p.309
十四個の杼口の開口順序は、1、2を一回反復してから、3、1、2と4、1、2を一回反復、最後に3、1、2となっている。文様の場合、綜絖の通し順は図4、丙2のごとく、すなわち第一、二枚プラス第n枚で、それをひたすらくりかえし反復していけばよいのである(nとは、複数枚綜絖のどれかをさす)。
当該標本は、この第(2)種の組織に属する。図5に文様の一部が復元されている。主紋は大きな菱文で、菱形のなかに葉文が入っており、各菱文はハート形の葉文でつながっている。くりかえし文様(Pattern repeat)は、一文様あたりの縦幅が三・九センチで、復元されたあとは横幅が八・二センチとなっている。このような文様単位は計七十二個あり、経糸の残留本数が約五百本(図5では二百四十七本×二＝四百九十四本を示す)。漢代の素絹〔生絹〕の奥行きは、たいてい漢尺で二・二尺、すなわち五〇・三八センチである。実物資料では、四十五〜五十センチとなっている(22)。文様をもつ絹織物(漢綺と彩錦をふくむ)の場合、およそ三十五〜四十八センチと推定される。かりに標本の幅を四十センチとすると、経糸本数はおよそ二千五百本にものぼる。
p.310
この寸法と経数で複雑な文様を織るには、片手で挑花棒を使いながら、経糸をひきあげる方法だけでは間に合わず、綜絖を使わなければならない。経糸の密度が一センチあたり六十六本に達し、横ズレを防ぐために、「⺮扣子」〔筬、リード〕が使用されたと推測される(23)。当該標本の場合、おそらく筬羽に経糸二本を通したのだろう。写真と復元図をつきあわせてみると、文様をあらわす経糸にはたまに抜けたところがあり、そこでは隣りあう平組織の組織点の長い列だけがのこっている。当該標本では、このような織疵が二箇所みとめられる。
いっぽう、当該標本のくりかえし文様単元の緯糸は七十二本。上記の組織図と綜絖引上図に示されたように、奇数の緯糸を第一綜絖の杼口に通し、偶数の緯糸を複数枚ある綜絖の杼口のどれかに通す。つまり、当該標本を織るには、第一、二枚のほかに三十六枚、合計三十八枚の綜絖が必要なのである。『三国志』「杜虁伝」に、当時の綾機には、五十〜六十枚の綜絖が取り付けられていると記されている(24)。これだけの数であれば、足踏みペダルだけでもちあげることは、ほぼ不可能である。地紋を織る第一、二綜絖(すなわち「前綜」)は、座っている職工が足踏みで操作し、のこりの数十枚の提花綜は、もうひとりの職工が織機のそばあるいは花楼そらひき装置〔空引機。文織用の装置〕の上に立ちながら、順にひきあげていかなければならない。複雑な構造をもつ近代の提花機〔ジャガードによって文様を織りだす織機〕とはくらべられないだろうが、当時においてすでに上記のような簡単な提花装置が使用されていたと推定される。後漢・王逸(西暦二世紀)撰「機婦賦」に出てくる織機も、かような提花機の一種であろう(25)。
上記のような「漢式組織」をもつ漢綺は、ロプノール(26)、ノインウラ(27)とシリアのパルミラ(28)で発見されている。
p.311
なかでも、パルミラの発見例はきわめて重要である。というのは、地中海沿岸にあるこの古代遺跡は、「シルクロード」西端に位置する交易都市であったからである。一九三三年と一九三七年に同遺跡の古墓から、「漢式組織」をもちいたすかし文様の綺が数点出土した。これらの墓は、西暦八三年から二七三年にかけて埋葬されたものである。中国から輸入された絹織物であることを否定する意見も出されているが、機織り技術や文様からして、後漢かその直後に中国で織られた輸出品にちがいない。
ラィースター(R. Pfister)氏は一連の標本を分析したうえで、織り方の特徴から「漢式組織」と名づけた。その文様は、図6、図7に示したとおりだが、尼雅の後漢墓から出土した絹織物と絵のモチーフも題材もきわめて相似するといえよう(尼雅の出土品にも鳥獣文がみられる(29))。大きな特徴のひとつは、菱形文である。文様部分の「漢式組織」は斜文組織と似ており、経糸と経糸の交差点が斜めに進行し、複数方向の斜線を組み合わせて菱文をなしている。漢代の菱文にはいくつかの変形があり、よくみられるパターンのひとつは、菱形の両側に口の開いた小さい菱形文がひとつずつ付加された図案である。
p.312
そのかたちは、両耳のついた漢代の漆杯と相似する。これはいわば、古文献に出てくる「七綵杯文綺(30)」の「杯文」であろう。このような菱形文の組み合わせは、信陽と長沙の楚墓で出土した東周時代の絹織物にすでにみとめられ(31)、戦国や漢初期の銅鏡にも同様の文様がもちいられている。樹葉形や柿蔕形の文様もまた、漢の銅鏡にしばしばみられる図案である(32)。
…
漢錦の文様は、色とりどりの経糸によって表出される。その織り方は、「経糸で文様を出す平織りの複様組織」(Warp-Patterned compound cloth weave)〔複様平組織経錦〕と呼ばれる(33)。すかし文様の漢綺とはふたつの共通点がみられる。
(一) 平織りであること。
(二) 経糸による文様表出(文様はともにト字形の反復単位によって構成される)。
いっぽう、おもな相違点のひとつは、漢錦は複様組織(すなわち「複合組織」)を使用し、二組かそれ以上の経糸と一組の緯糸をたがいちがいに織りあげていく。経糸はその働きによって、「表経」〔表に出る経糸〕と「裏経」〔裏に隠れる経糸〕に分かれる。表経の一組が表に長く浮き出て、裏経の浮点のうえにかぶさり、織物の表面からそれがみえないようにしている。文様の配色に応じて、一本の経糸が表に出たり(表経)、裏に出たりする(裏経)。
緯糸は一組だけだが、役割によって「交織緯」(binding weft「明緯」とも)〔織るための緯糸、「絵緯」とも)と夾緯(interior weft、文様のための緯糸、「絵緯」とも)に分かれる。漢錦のもう一つの特徴は、すかし文様の漢綺とちがい、地紋と文様にそれぞれ異なる組織を使うのではなく、一種の組織のみによって織られ、経糸の色の組み合わせによって文様をあらわすことである。緯糸は地紋と同色で、たいてい織物の裏に隠れている。したがって、漢錦の色彩は、緯糸の色とはまったく関係しないのである。
p.313
たとえば、二色錦は、二つの色の経糸二組を使う。図8の甲と乙は、その組織図と断面図である。図のなかでは、緯糸の二つの働きは、それぞれ細線と太線によって表示されているが、じっさいは同じ杼に巻きつけられた一本の糸である。奇数の緯糸(緯糸Cをふくむ)は交織緯で、図の左下隅のように、すべての経糸と交差して平組織をつくる。対して、偶数の緯糸(緯糸Dを含む)は偶数は夾緯で、表経と裏経のあいだにはさまれており、組織全体のなかで経糸と交差せず、もっぱら模様を織りだすための糸である。夾緯は、この二色経糸二組を交互に表に出したり、裏に隠したりして文様を表出すると同時に、文様をなす経浮き糸をのばし、織物をより丈夫に織り上げる働きをすることから、別名「花紋緯」〔絵緯〕とも呼ばれる。
経糸にはAとBの二色があり、当該図ではA(1〜8)が黒、B(�機銑�)が白で表示される。経糸は、AとBの糸を一本ずつよりあわせたものを一組となす(1と�機�2と�兇箸いα箸濆腓錣司�)。一組の経糸では、文様の色を変えるとき以外は一本が表経となり、三度表に出たあと、一度裏にまわり〔「三たび上に、一たび下に」〕、再度織物の表に長い浮き糸として出ている。もう一本は裏経となり、表には浮点としかあらわれない。この浮き糸は浮点は、ト字形の単位をなしている(図8、丙1)。これは上述したすかし文様の綺の文様をつくりあげる、いわゆる「漢式組織」のト字形の単位とも類似する(34)。
丙2と丙3をみると、地紋の表経と裏経の基礎組織は、3‥1と1‥3の斜文組織(綾組織)ではなく、いぜんとして平組織を採用しているとわかる。すまり、これは夾緯(横行の2と4)をうちこんだ、平組織の変形のひとつにすぎない。交織緯(横行の1と3)にかぎっていえば、あくまで一般の平組織なのである。このように、漢錦は平織りの「複様組織」であり、裏経の浮点の長い浮き糸の下に隠れている。表経と裏経が交錯すると、織物の裏面では前者は浮点となり、後者は三度裏に出たあと、一度表にまわり、長い浮き糸となって前者の上にかぶさる。このように二色漢錦の表裏は色彩は逆だが、同じ文様を呈するのである。
p.314
色の入れ替わるところでは、関連の経糸が緯糸二本だけを通過し、浮き糸となる。このやや短めの浮き糸は文様におうじて、織物の表に出たり(図8、乙1、縦断面図第7-�珊圓侶仍�)、裏に隠れたりする(同上、第8-�執圓侶仍�)。そのため、隣りあう二列の、文様をなす経糸と対応する組織点の間隔は、2でも1でもよいのである。これに対し、すかし文様の綺の「漢式組織」はすべて、2となっている。
このようにして織り上げられた漢錦は、文様の輪郭がやわらかくてなめらかである。それにくらべ、漢綺の場合、輪郭線はややぎこちなく、細かいギザギザ状となっている。漢錦に流れたなびく雲文やきめ細やかな文様がふんだんにみられるのも、かような技術の改良があったからである。したがって、漢錦の織り方をすかし文様の綺の「漢式組織」から発展した技術ととらえる説もあるが(35)、じっさいはこのように、両者は同時代においてまったく異なる技法によって織られた織物である。なお両者のうち、漢錦のほうがより人気が高かったらしい。
p.315
二色漢錦は、つぎのような織り方によって織られたと考えられる。
まず、二色の経糸から一本ずつとりだしよりあわせて一対または人そろえ(表経と裏経)にして、綜絖の杼口に通す。綜絖には、織るための「考証結果」と文様を織りだす「提花綜」に二種がある。「交織緯」は二枚の綜絖(「前綜」とも)からなり、偶数の経糸(2-�供�4-�犬覆�)を第1綜絖に通し、奇数の経糸(1-�機�3-�靴覆�)を第2綜絖に通す。一方、「提花綜」の枚数と各枚の通し方は、織物の文様(36)によって変化する。たとえば、図8の場合は、第3〜7の提花綜計五枚を使用する。
提花綜の通し方は交織綜と異なり、各対の表経と裏経のうち、奇数も偶数も同じく、表経の一本のみを通す。どの色の経糸を通すかは、文様によって変化する(図8、丁1)。機織りのさい、交織綜(かりに二枚とする)はたいてい、提花綜と職工の座のあいだに取り付けられており(そのため、「前綜」とも呼ばれる)、職工がそれを足踏みペダルで操作する。しかし、提花綜の枚数が多数にのぼると、もうひとり補助の職工が必要である。この提花綜は、一般的に、枠のある綜絖は使用せず、提花用の各種の糸(drawcords)をひとつの糸たばに巻きつけて、文様を織りだしたと推測される。綜絖と同じ働きをすることから、叙述の便宜上、本稿ではこのような「挑花棒」を、「綜」と称する。
一本目の交織緯を通すとき、第一綜絖(交織綜)、二本目の交織緯(図8では夾緯をひきあげる。緯糸三本ごとに、同じ順序で綜絖通しを一回くりかえす。それを図8でみると、第1、5、9、13、17の緯糸は第一綜絖、第3、7、11、15の緯糸は第二綜絖を使い、平組織を織り上げていく。なお交織緯を通すたびに、「交織綜」をさげて「提花綜」をもちあげ、夾緯を一本うちこむことになっている。
無文単色の織物の場合、夾緯を入れるさい、同色の表経を同時にぜんぶひきあげなければならない。図8でいうと、第3(黒)または第4(白)綜絖をあげることになる。第2、4、6の緯糸はそろって黒であることから第3綜絖を、第8、10の緯糸は白であることから第4綜絖を、それぞれ動かす。
p.328
文献には、魏の時代の織機は五十〜六十枚の提��と五十六〜六十の躡をもっていると記されており、多いときには百二十躡にも達したという(76)。この「躡」は「鑷」とも言い、「⺮聶」と書くときもあるが、提花〔ジャガード〕用の装置とみられ、おそらく提花綜をひきあげる糸たばをさし、足ぶみペダルのことではなかろう。
というのは、足ぶみペダルの躡だとすると、六十枚ないし百二十枚あるとは考えられないからである。漢錦をつくるには、後世のような提花機をとりつけた織機が必要だったのである。…
…
ヨーロッパで提花機がいつごろにあらわれたかの問題をめぐっては、いまだに定説をみない。七世紀説、六世紀説(77)などがあり、あるいははやくも三世紀頃に、ペルシア、ビザンツ、シリアやエジプトにおいてすでに簡単な提花機が使われており、十三世紀末に改良されてから広く流行しはじめたという見解も出されている(78)。
中国からのもうひとつの影響として考えられているのは、織機の足ぶみペダルの発明である。前述したように、漢の画像石に描かれた簡略な織機には、すでにペダルがついている。これに対し、ヨーロッパでは十二世紀から十三世紀にかけて、ようやく織機にペダルが取り付けられたのである(79)。
p.329
西アジアとヨーロッパでは、古くから垂直型織機が使用されており、エジプトは初期こそ水平型であったが、のちになって前者に切り替わった。垂直織機に足ペダルをつけるのは困難であり、ペダルを最初に発明したのは、水平機をつかう中国であったと推測される。…
…
古代西アジアの織技術は、斜文組織(平組織もみられるが)と緯糸による文様表出法であった。中国から養蚕法と提花機の技術をとりいれてからも、文様図案の面では古くからの伝統を守りながら、錦の織り方はいぜんとして従来の緯糸による文様表出と斜文組織〔綾組織緯錦〕を踏襲した。
p.334
よく知られるように古代の西アジア地域では、おもな織物の素材は亜麻〔リネン〕と羊毛であった。亜麻の染色がなかなか難しいことから、多色系の織物にもっぱら羊毛が使用された。羊毛は繊維が短く、毛糸によりあわせなければならない。こうしてできあがった毛糸は絡まりやすく、かつまとまりにくいため、経糸として使用する場合、織密度をおさえたうえできつく張らなければならない。いっぽう、毛糸の緯糸は柔らかくするためにゆるめによりあわせ、張りつめられた経糸に巻きつけ、さらに筬か刀で緯糸をつよく打ち込む。そうして、織地に緯糸による浮文があらわされる。文様もまた、緯糸を使って表出する。古代中国では、上質な織物の素材に絹生糸が使用されていた。絹生糸は繊維が長く(糸繰りの長さが八百〜千メートルにも達する(95))、かつ丈夫で色つやもよい。織機にかけられたとき、密度が高くてもあまり絡まない。しかも、いささかねじれをくわえるだけで、あるいはそのまま絹生糸を経糸に使用しても、強度が均一で、経糸にもってこいの素材であった。そのため、中国の絹織物は経糸が濃密であるのに対し、緯糸の織り目がやや荒く、かつ表にあらわれない「平組織経錦」なのである。…
…だが、伝統の相違からか、あるいは絹の性質についてじゅうぶんな理解がなされていなかったためか、中国では撚りのない、あるいはいささかねじれをくわえただけの絹経糸が使用されていたが、西方ではつねに絹経糸に強い撚りをかけられていた。つまり、従来の緯糸による文様表出法をつらぬき、漢錦における経緯の役割を完全に逆転させたのである。最初こそ平組織漢錦をつくっていたが、やがて斜文(綾)組織緯錦へと移行していった。
さて、斜文組織〔綾組織〕は、中央アジアや西アジアにおける織物技術のもうひとつの特徴である。これらの地域では、古くから平組織もつくられていたが、比較的早い段階から斜文組織に切り替わった。
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ヴィヴィアン・ウエストウッドからオーブ柄の浴衣が登場、雪駄や扇子も
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「ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル（Vivienne Westwood RED LABEL）」が、ブランドの代名詞とも言えるオーブ柄を配した浴衣の新作を発売する。6月9日からヴィヴィアン・ウエストウッド仙台店、熊本鶴屋店、岩田屋店、ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル各店などで、6月下旬からヴィヴィアン・ウエストウッド公式オンラインストア、ゾゾタウンで取り扱う。価格は税込4万9500円。
新作の浴衣では、幾何学的な模様のアートワーク「DIAGONAL ORB」をデザインに採用。洗いざらしのような柔らかな手触りを表現した帯が付属するほか、袖にはブランド独自のパターン「ウィッチィズ シェイプ」を取り入れ、日本の伝統服にブランドのアヴァンギャルドな感性を融合させた。
そのほか、日本の伝統から着想を得たアイテムとしてシャークソールの雪駄（1万9800円）やシルクの扇子（7700円）、伝統的な型染め「注染」を用いた手ぬぐい（4950円／全て税込）も展開する。
■Vivienne Westwood RED LABEL 浴衣発売日：2023年6月9日（金）取り扱い店舗：ヴィヴィアン・ウエストウッド仙台店、熊本鶴屋店、岩田屋店、ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル各店、ウエストウッド レッドレーベルコンセプトストア各店、ヴィヴィアン・ウエストウッド公式オンラインストア、ゾゾタウン ※公式オンラインストア、ゾゾタウンは6月下旬発売
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