歳はとりたくないもの。最近は指紋もほとんど消失し脂質も減少したのか指先の感覚が鈍感になってしまった。いろいろなものをつかみ損ねたり、時にはレジで重なった1万円札を指先で2枚と見分けられず支払ってしまうことさえある。
大隅の特産品の一つカタスコ(キンヘリアトバ)がいる。夜間タブの新しい立ち枯れに飛来し樹幹部を走る。戸田さんが良い立ち枯れを見つけ、待っていると次々と飛来する。問題はその先で、樹幹部を走るためネットを下にあててムシを落とそうとしてもなかなかうまくいかず、まず逃げられてしまう。しかし意外と飛んで逃げたり落下することは少なく、走って逃げるようだ。そこでネットを外した長竿で少し上の部分をつつくとだんだん下の方へ下りてくるので手掴みで採集することができる。不運に落下してもしばらくするとまた木によじ登ってくる。
その時私は地上1mほどの高さで分岐した股の間に立ち、右手で長竿を操り、左手にネットを持って対峙し、首尾よくカタスコを手づかみにした。直前の1頭は指先からツルリと滑り落ちてしまったので今回は慎重を期す。さて菅瓶(フィルムケースを使用)に収納する…が、ふたがうまく閉まらない。おろおろしているうちに手の中のフィルムケースがツルっと滑って足元に落下。間の悪いことに足元で弾んで立ち枯れの根本付近まで転がり落ちてしまった。慌ててフィルムケース拾い上げたとき中身は空っぽ。一晩かけて採集した虫のすべてを厚く積もった腐葉土の上にばらまいてしまった。懐中電灯の明かりの元必死の捜索で大型のムシのいくつかは回収できたが、ほとんどのムシは回収不能。情けなくて涙が出そうになった。
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