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2023年04月30日07:50

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先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません![読書日記932]

題名:先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!
著者:小林 朋道(こばやし・ともみち)
出版:築地書館
価格:1,600円+税(2023年1月 初版発行)
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鳥取環境大学の教授:小林朋道さんの「先生!シリーズ」最新刊を読みました。
「先生!シリーズ」は1巻目の『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』から始まり、今作が17巻目とのこと。2007年からなので16年間続いているわけですね。

表紙の惹句を紹介します。
“脱走ヤギは働きヤギに変身し、
 逃げ出した子モモンガは自ら"お縄"になり、
 砂丘のスナガニは求愛ダンスで宙を舞う……

 自然豊かな大学を舞台に起こる
 動物と人間をめぐる事件の数々を
 人間動物行動学の視点で描く”

目次は次の通りです。
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 はじめに
 真無盲腸目の動物とKjくんの話
 ヤギの体毛の夏毛と冬毛
 ヒキガエルで新しい対ヘビ威嚇行動を見つけた
 Okくんは自分のニオイでヤギの脱走経路を発見した!
 シジュウカラは生きたシカやキツネから毛を抜いて巣材に使うようだ
 クルミが逝った日
 ニホンモモンガの子どもは家族のニオイがわかる!
 千代(せんだい)砂丘には驚きと発見があふれている!

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印象に残った文章を引用します。
なお、本書では目立たせたい文章をゴシック体にしています。以下の引用文ではゴシック体部分を《 》で示します。

【ヤギの体毛の夏毛と冬毛】から、ヤギが懐く人と離れていく人について。
“ヤギたちが近づいていく人もいれば、明らかに離れていく人もいる。特にヤギが反応を示さない人もいる。そしてその《ヤギたちの行動の違いにはしっかりした理由がある》と、私はこれまでの経験から推察している。
 《ヤギたちは学習するのだ。》自分たちに近寄って痒いところ(自分ではかけないところ)をかいてくれたり、穏やかな声で語りかけてくれたりする人と、荒っぽく接してくる人を。
ヤギは人の顔や声を識別できると私は感じている(ヒツジでの実験はすでに行われており、ヒツジが人の顔を認識することは証明されている)。”(50p)
⇒犬も明らかに人の顔を認識しますね。

【ヒキガエルで新しい対ヘビ威嚇行動を見つけた】から、ヒキガエルに餌のダンゴムシを与えた時の行動。
“最初の実験では、《ダンゴムシを一匹》(一匹だ!)餌容器に入れて様子をみる。
ヒキガエルは、動きまわるダンゴムシに反応し、餌容器のところまで歩いてきて、容器のなかで動きまわるダンゴムシをじーーっと見ている。そして少しして、《電光石火、舌を出してダンゴムシをパクッと食べる。》(略)
 では、《八匹ほどのダンゴムシ》を餌容器に入れたらどうなるだろうか。
もうヒキガエルは "群れ" のように動きまわるダンゴムシたちを前に、固まってしまう。どうにもこうにもねらいを定めようがないからだ(ろう)。
これが、《餌になりやすい、そして、隠れることもあまりできない動物たちが群れやすい理由》ではないか、と思っている。”(75〜76p)
⇒この実験が本書のタイトルになっています。

【Okくんは自分のニオイでヤギの脱走経路を発見した!】から、交通事故で死んだ動物を調べるために小林先生が採った作戦。
“さっそく、私はネットで調べ、廃棄物処理を管理する行政の部署に電話をかけてみた。すると、Okくんの予想どおり、動物死体の直接チェックは無理だと言われた。死体の保存や手続きが難しいから、といった理由だったと記憶している。
でも一つだけわかったことがあった。それは《「動物死体の直接チェックは法令で禁止されているわけではない」ということだ。
そうか。《だったら……》、次に私が考えたのは、長年、県の廃棄物関係の研究所に勤められていて、数年前にわが大学に移ってこられた廃棄物処理の超専門家、Mk先生に頼る、という《 "寄らば大樹の陰" 作戦》だ。”(85p)
⇒交通事故で死んだ動物の死体が「廃棄物処理」されることは法律で定められているそうです。

【シジュウカラは生きたシカやキツネから毛を抜いて巣材に使うようだ】という米国の論文について。
“ 日本でもよく目にするシジュウカラ科の小鳥たちは、生きて動いている
  アライグマや眠っているキツネの体に飛び乗って体毛を引き抜いて巣材
  として使う。
 イリノイ大学のジェフリー・ブラウン教授らが発表し、国際科学雑誌「エコロジー」(2021)に掲載された論文をもとに書かれた記事で、論文のなかで教授は、多くのシジュウカラの仲間が行なっているのだろう、と述べている。”(109p)
⇒この情報をツイートしたところ、6000くらいのリツイート、18000の「いいね」があったそうです。

【千代(せんだい)砂丘には驚きと発見があふれている!】
“「レック」とは、たくさんの雄が、ある場所に集まって、雌に対して求愛行動を行なう、言わば《 "集団求婚場" 》である。雄が求愛の誇示行動を行ない、雌が近くを歩き回って "品定め" をするのだ。
レックは、鳥類で知られている現象であるが、私の目には、スナガニたちの集まりが、このレックのように思えたのだ。”(181p)


締めくくりに、【真無盲腸目の動物とKjくんの話】から、小林先生がご自分の記憶力について書かれている文章を引用します。
“私は、もともと記憶力に大きな問題(興味のあることは細部にわたるまで覚えているのだが、そうでないことは覚えられない)を抱えているところに加え、覚えておかなければならないことがいっぱいある。”(38p)
私事で恐縮ですが、私も“興味のあることは細部にわたるまで覚えているのだが、そうでないことは覚えられない”性質(たち)なので、小林先生に強くシンパシーを感じました(苦笑)。

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小林 朋道(こばやし・ともみち)
1958年岡山県生まれ。岡山大学理学部生物学科卒業。京都大学で理学博士取得。
岡山県で高等学校に勤務後、2001年鳥取環境大学講師、2005年教授。
2015年より公立鳥取環境大学に名称変更。
専門は動物行動学、進化心理学。
著書に『利己的遺伝子から見た人間』(PHP研究所)、『ヒトの脳にはクセがある』『ヒト、動物に会う』(以上、新潮社)、『絵でわかる動物の行動と心理』(講談社)、『なぜヤギは、車好きなのか?』(朝日新聞出版)、『進化教育学入門』(春秋社)、『身近な野生動物たちとの共存を全力で考えた! 動物行動学者、モモンガに怒られる』(山と溪谷社)、『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』をはじめとする「先生!シリーズ」(今作第17巻)と番外編『先生、脳のなかで自然が叫んでいます!』、および『苦しいとき脳に効く動物行動学』(以上、築地書館)など。
これまで、ヒトも含めた哺乳類、鳥類、両生類などの行動を、動物の生存や繁殖にどのように役立つかという視点から調べてきた。
現在は、ヒトと自然の精神的なつながりについての研究や、水辺や森の絶滅危惧動物の保全活動に取り組んでいる。
中国山地の山あいで、幼いころから野生生物たちとふれあいながら育ち、気がつくとそのまま大人になっていた。1日のうち少しでも野生生物との"交流"をもたないと体調が悪くなる。自分では虚弱体質の理論派だと思っているが、学生たちからは体力だのみの現場派だと言われている。
ツイッターアカウント@Tomomichikobaya

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