駈けずらかった
きょう ぼくは
星空をみて そこから逃げだした
夢なのか 現実なのか
うつし世なのか あの世なのかもわからなかった
夢中で夜みちを駈けずり 夜霧を抜けだしていった
理由なんかない ただ逃げたかった
途中曠野の野茨に からだをむしられ
傷だらけになったけれど 目をつむって耐え
いつしか傷ついた脚を 引きずりながら駈けずっていった
そして夜があけるころ ぼくは駈けるのをやめた
そこは何もない 海だったからだ
ぼくは海を見 風のなかにいて
苦しんでいた
そこに誰がいるのかもわからなかった
誰に何をどう云ったらいいのかもわからず
途方に暮れていた
ぼくは波打ちぎわに一つのびい玉をみつけた
何の役にも立とうでもない ぶざまなびい玉だった
ぼくはあんまりそれが無意味で
無力なみっともないびい玉だったために
ぼろぼろと
ただぼろぼろと意味のないたわごとを呟いては
泣いているのだった。
指田悠志
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