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2022年04月29日21:12

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「レア・セドゥのいつわり」アルノー・デプレシャン

フランス映画らしい映画だ。アルノー・デプレシャンは、『クリスマス・ストーリー』『ルーベ、嘆きの光』ぐらいしか見ていないので、まだこの監督の特徴がよく分からない。現代アメリカ文学の巨匠P・ロスの小説「いつわり」を映画化した要注目作だが、日本未公開でWOWOWの放送が初公開。

レア・セドゥ演じる美しい人妻が、イギリス在住のアメリカ人作家フィリップ(ドゥニ・ポダリデス)と関係を持ち、その二人の会話でほとんど占められる映画。フィリップは、ほかにも何人か愛人がいるが、それぞれの女性との会話をもとに小説を書いた。女性たちに様々な質問を繰り返し、ひたすら聞く。情事を繰り返し、フィリップのもとにやってくるイギリス人女性、レア・セドゥが魅力的に描かれている。会話以外ほとんど描写はない。情景描写も人物の背景を説明する場面もない。ひたすら男女の情事の前後の会話が続く。だから映画はほとんどが彼の仕事部屋。密室的な映画だ。わずかに外で二人が会うときの店や、電話で会話する病室や妻に攻め立てられる自宅が描写される。裁判で作家が女性蔑視、女性差別表現を糾弾される場面もある。

二人の饒舌な会話はフランス人らしい。日本人なら、こんな男女の会話は成立しない。ましてや恋する男女の会話だけで映画が成立するなんて驚きだ。元になった原作小説が、地の文がなく会話だけで成り立っているらしいのだが。二人はお互いにパートナーがいて、それぞれの家庭を壊そうとは考えていない。その微妙な男女の距離感が面白い。さらに、二人の身振りや触れあい、身体的な表現、演出が素晴らしい。レア・セドゥのエロティックな脚の仕草や情熱的に部屋に入ってきて服の下が裸だったり、口や顔を触る手とその触られる表情など、見ているだけでその場に居合わせるような気分になってくる。

男と女の触れあいを描いてきたフランス映画の伝統に連なる作品と言えるだろう。

2021年製作/103分/フランス
原題:Tromperie
監督:アルノー・デプレシャン
製作:パスカル・コーシュトゥー
脚本:アルノー・デプレシャン ジュリー・ペール
撮影:ヨリック・ル・ソー
美術:トマ・バクニ
編集:ロランス・ブリオー
音楽:グレゴワール・エッツェル
キャスト:レア・セドゥ、ドゥニ・ポダリデス、アヌーク・グランベール、エマニュエル・ドゥボス、レベッカ・マルデール
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