水曜、仕事の後、109シネマズ湘南で、
「余命10年」。
これは、「新聞記者」、「ヤクザと家族 The Family」の藤井道人監督が、2017年に逝去した小坂流加が、自らの闘病を題材に書き上げた同題の恋愛小説を映画化したもの。
小松菜奈と坂口健太郎のW主演。
数万人に一人の不治の病にかかり、余命10年と告げられた20歳の茉莉は、2年間の入院の後に退院――自宅で、余生のような日々を過ごす事になる。そんなある日、中学の同窓会で和人と再会。和人は生きることに迷い、自分の居場所を見失っていた。
数日後、和人が自殺未遂を起こして病院に担ぎ込まれた事をきっかけに、二人の距離は少しずつ縮まって……
この映画、よくある「闘病もの」の1本ではあるが、硬派の藤井道人監督が手掛けるだけに、単なる“お涙頂戴映画”にはなっていないのは好印象。
藤井道人監督は注目の若手監督で、最近は映画だけでなくTVドラマも手掛けるなど、引く手数多の大人気で、そのせいか、本作も異様な程の豪華キャストだ。出演者は、主役級がごろごろしており、数カットしか登場しない端役にまで名の知られた俳優を起用……茉莉の大学の友人A、カフェで集まって相づち打つだけの役に、注目の三浦透子を起用しているのはさすがに勿体なくないか?
ただ、私自身は、藤井道人監督をそれほど評価している訳ではない――勿論、藤井監督ならではのカットがある、特徴ある映画監督だとは思うが、映画表現の為に、リアリティや説得力を犠牲にする悪癖が気になってしまう――だが、本作は原作あり、と言う事で、そうした悪癖が抑えられているのもよかったと思う。
小松菜奈は、さすが、と言う感じ。撮影期間は断続的に1年に及び、しかも順撮りしていないので、役に入り込むのが難しかったろうに、映画を支える確かな存在感を発揮している。クランクアップ時にはへとへとになっていた、と言うのにも納得だ。
また、リリー・フランキーや、松重豊ら、ベテランもいい味を出しており、そうした脇役までしっかりキャラが立っているのもいい。
惜しいと思ったのは、せっかく1年間もの時間をかけた割には、映像の幅がない事――春と言えば桜、夏には海と花火、秋は落ち葉で、冬は雪……映像自体は綺麗に撮られてはいるものの、いささか工夫がないな、と。
執筆を続ける茉莉の季節感を、机に飾られた花や小物で表現をする繊細さを、もっと見せて欲しかったように思う。
また、茉莉が撮り溜めていたビデオを死を目前にして、ひとつずつ消して行くシーン……そんな大事な思い出を世の中から消し去ろうとする想いと、最後に消せなかった映像……と言うのは、正に映画ならではの感動となり得る場面にも思えたが、これがあっさり流されてしまって肩透かしを食らった感じ。
確かに“お涙頂戴映画”になってはいないけれど、それでも、映画には感情を揺さぶるシーンがあって欲しいのだ。
勿論、小松菜奈と、美しい映像、それに物語が揃えば、映画としては成立するけれど、これはちょっと“薄味”に感じるなぁ……
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