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2021年06月21日13:43

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「アポロンの地獄」

「アポロンの地獄」という映画を見た。この映画は50年ぐらい前に見た。映画の内容はほとんど忘れていたが、ギリシャ悲劇の「オイディプス王」を題材にしている映画で非常に不思議な映画だったという印象が残っている。

今回見直してみてやっぱり不思議な映画だ。
まず「オイディプス王」について少し書いてみると、作者はソフォクレスで紀元前5〜6世紀ごろ書かれている。ギリシャ悲劇として大変著名な作品だ。
あらすじは
 テーバイでライオス王と妃イオカステの間に生まれたオイディプスは預言者から”この子は父を殺し母と交わる”という神託をうける。そのため王は子供を殺し捨てるように命じる。
 命じられた召使は殺すに忍びなく子供を捨てる。捨てられた子供は拾われてコリントスの王に届けられる。
 王と王妃は神からの授かりものとして大切に育てる。長じて若者になったオイディプスは神殿で同じ”親を殺し母と交わる”という神託を受ける。
 コリントスの王と妃を本当の両親とおもっていたオイディプスはコリントスを出て故郷へ戻らないことにして旅に出る。
 旅の途中の道の辻で5人の従者を連れて馬車に乗った人物と出会い”物乞いは道をよけろ”と言われて争いになり、それを殺してしまう。(ライオス王が神殿に参拝した帰りだった。)
 さらに旅の途中でスフインクスと出会う。スフインクスは通りかかる旅人になぞかけをして解けなければ旅人を食べてしまう悪魔だ。オイディプスは謎を解きスフインクスを成敗する。
 (この謎はよく知られている”朝は4つ足で昼は2本足で歩き夕方は3本足となる生き物は?”というものだ。)
 テーバイでは王が殺されて不在のため、スフインクスを退治したものは妃をめとり王とするというふれがでていた、オイディプスはイオカステと結婚しテーバイの王となる。
 しかしテーバイで疫病がはやり、預言者からオイディプスのせいだと言われる。子供を捨てた召使を探し出し話を聞いたり、自分が旅の途中で人物を殺したことを思い出したりして事の真相を知る。そのことを知ったイオカステは首をくくって死ぬ。
 それを知ったオイディプスは何も真実を見なかった我と我が目をナイフで突き刺しめくらとなる。自分を宮殿から追放させ、娘アンチゴーヌに手を引かれ放浪の旅に出る。
 というものである。
 
映画は物語とだいたい同じだが少し違っているところもある。
映画は砂漠の民の仮面劇のように作られていて広大な舞台劇を思わせる。
音楽が日本の尺八と鼓のような音とリズムで目を閉じると日本の劇のような感じを受ける。

スフインクスは仮面をかぶった人物となっていてなぞかけでなく争って殺す。
プロローグは青い草原で生まれたばかりの子供に乳を飲ませるシーンに神託の言葉が重なる、途端に古代の場面に切り替わる。
最後のめくらになって放浪するとき手を引いていくのは私が昔読んだ本ではイオカステとの間にできた娘アンチゴーヌだったが映画では若者が手を引いていく。その途端場面は現代にかわりその二人は現代人となる。イタリアの町中をめくらの主人公が若者に手を引かれ青い野原に出る。始まりの野原だ。

映画監督はバレリオ・ズルリー二で彼の複雑な家庭環境を表しているとも言われている。
(貴族であった父を憎み、母を慕ったと言われている。さらに彼はゲイで最後の手を引く若者は彼の愛人だったともいわれている。)バレリオ・ズルリー二については彼の作品である「激しい季節」について以前少し書いたことがある。

この話はギリシャ悲劇として大変有名な作品なのでその題材はいろんな小説や映画、演劇でたくさん取り上げられている。
フロイトの「エディプス・コンプレックス」の語源でもある。

しかし避けようとして避けることができない運命を表した非常に救いのない話である。
誰でもがこのような救いのない運命を持ち合わせているのだろうか。

追加
アンチゴーヌについて調べてみたらオイディプスと放浪の後日談が同じソフォクレスの「アンチゴネー」として悲劇があった。
これもたくさん劇になったりしている。
オイディプスの手を引いて放浪する二人を描いた絵画もたくさんあった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B4%E3%83%8D%E3%83%BC#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Oedipus_and_Antigone_(Eckersberg).jpg



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