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p.237
一〇・一一世紀のブルガールの町は、もっぱら王の居城のある首都として機能し、経済・文化活動の中心は内陸部のビルヤール(Bilyar)やスワール(Suwar, Suwaz)に移されたと考えられる(Kovalevskii, A. P. [1956]218, note 565b)。
p.239
V・ミノルスキー説によれば、ユーラーは、中世ロシア語文献中に見られる〈ユグラー(Yugra)〉のことで〈蛮人〉の意。
p.240
後代にオスチャク(Ostiak)と呼ばれた。一一世紀、スカンティナ・ノヴゴロド人たちは、ベチョラ川とウラル山脈との間のツンドラ地帯に住んでいたウグル系の人たちを〈ユグラーYughra〉と呼んでいたが、その後、ベチョラ川周辺の諸部族(おそらく、コミ・ズィリアン人)を征服したノヴゴロド人は、ユグラーの地に進出した(al-Marwazi,112-14;Abu Hamid,55-60,159,207-08,218-24,268-69,292-94,299-303,309-10;E. I. [1995]8/160-61,[2002]9/231-34;Nazami,A.[1998]32,86,110,158-60,181,202,213,250)。
p.245
当時、スワーズは、ブルガール王の支配に従属せず、その住民の主要部族であったチュワシュ族が自立した勢力を保っていた。おそらくスワーズは、チュワーシュ(Chuwash, Chuvash)の音を写している。
p.246
(149) ワイラグ(Wayragh)：ウィールグ(Wyrgh, Wiyrigh)、ワブラグ(Wabragh)とも読める。これをバイラーク(Bayraq)と読めば、トルコ語の〈旗〉の意。Z・V・トガン説では、ワイラグは古代トルコ語のブイルグ(buyrug)、ブイルク(buyruq)、もしくはブルク(burq,yoruk)のこと(Togan, Z. v. [1939]75, note 2;al-Kashghari, 1/378)。イブン・ルスタと『フドゥードHudud』は、ブルガール(ブルカール)王国に含まれる遊牧集団(asnaf, guruh)として、�．丱襯后璽蕁�(Barsula,Barchula)、�▲ぅ轡絅�ル(Ishkil,Ashgil,Asghil)、��ブルカール(Burkar)の三つの集団をあげている(Ibn Rustah, 141-42;Hudud.,162,320,461)。イシュキルは、後述のアスカルと一致するので、ワイラグはおそらくバルスーラー(ヴィル[ス]グ[ラー]=ヴィルグ=ワイラク)と同一名と考えられる。…
p.247
(152) アスカル王(Malik Askal)：おそらくエスケル(Eskel, Eshkel, Iskel)と読む。この名称は、明らかにイブン・ルスタと『フドゥード』が伝えるブルガール(ブルカール)族に属する三つの遊牧集団(asnaf,guruh,gurah)の一つのイシュキル(Ishkil,Asghil)もしくはアシュギル(Ashgil)と一致する(Ibn Rustah, 141-42;Hudud., 162,320,461)。
p.274
彼らは八世紀にはラドガ湖周辺を主な居留地として、イリメニ湖に近いノヴゴロドに移り、ドニエプル川沿いに下って、キエフ(クービヤ)に拠点を定めた。彼らは、九〇八年にビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを襲撃した。
p.278
ところが[ヒジュラ暦]三五八年に、ルース人はこの町[の財貨]を強奪し、さらにハズラーン、サマンダルおよび[ハザル・ユダヤ王国の首都]イティルまで至った」(Ibn Hawqal,15)、また「こうしたこと(ビーヴァーや貂などの北方産の毛皮取引)は、同じように三五八年まで続いていた。
p.279
イフランジィー(IfranjiFiranji)は〈イフランジュ(フィランジュ)のものに似た、イフランジュ製の、イフランジュ風の〉の意。イフランジュは西ヨーロッパ地方、もしくはフランク王国を指す。シャトブ(shatb)は〈切れ込み、切れ目、溝〉の意で、刃の縁に刻まれた溝のこと。したがって、刃の部分が板状に幅広く、フランク製の刀剣に似て、その縁に深い溝が刻まれた刀剣のこと(togan, Z. V. [1939]82, note 5)。あるいは〈フランク製の幅の広い刀剣〉の意味ともとれるが、ここではスカンディナヴィア・ルース人たちが用いた幅広い蛮刀の一種と考えられる(写真９を参照)。『フドゥード』は、ルース地方のクーヤバ(Kuyaba, Kiev)とウルターブ(Urtab, Erza'a)では高価な刀剣が製作され、とくにウルターブ製のものは、二つ折りにしなやかにたわむが、すぐに元の形に戻ると伝えている(Hudud., 159,434)。
p.294
ハザル・ユダヤ王国の場合と同じように、ルースの王権は聖なる王(ハーカーン)とそれを補佐する国家の政務・財務や軍事を執る副王(ハーカーン・バフ)の〈二王制〉であった。
p.301
王は、彼らの言語では〈イリク(Yilik, Ilek)〉と呼ばれ、また〈バーク(Bak, bek)〉とも呼ばれる。
p.303
中国史料には、可汗、合罕、可寒と記された。ハーン(khan)、ハン(khan)、カーン(qan)は、ハン(khang)、アン(ang)、ウン(ung)に同じで、その原義は〈王〉のこと(Redhouse, J. W. [1921]826;E. I. [1978]4/9151010)。ハガーン、カガーンが時にはハーン、カンともいわれるのは、ガ(gha)が前のハ(kha)に吸収されたためで、テュルク語やモンゴル語においても、しばしば見られる発音上の現象と考えられる。また、とくにテュルク系民族の間で使われたハーン、またはハーカーンは、ハーネ・ハーン(khan-i khan)、すなわち〈王のなかの王、至高の王(malik a'zam)〉の意味とされ、その場合、神の力が宿るシャマン的な役割を担う〈神聖王〉を指した。…この信仰では、神の力がどのくらいの期間、宿り続けるかを自分で明言しなければならず、老いて神の力が失われると殺害される、いわゆる「王殺し」の慣行があった。
p.306
バフは、八世紀のテュルク語によって記された「オルホン碑文(突厥・ウイグル碑文)」に現れるバグ(bag)に同じで、〈主人、君主、領主、貴族、神、亭主〉を指す称号。ベグ(beg)、ベイ(bey)、ベク(bek)、ビー(bi)、ピグ(pig)、ペ(peh)など、さまざまな方言形が見られた。一説によると、テュルク語のバグの語源は、もともと中世イラン語のバグ(bag)からの借用語で、サーサーン朝の王たちの称号の一つともいわれる。古い語系はバガ(baga)、〈神聖の、神である〉の意。因みに、バグダードは、バグ・ダード、つまり〈神の場所、聖域〉の意。「オルホン碑文(突厥・ウイグル碑文)」の中では、複合形としてバグ・ラル(bag-lar〈主人の命令〉)がホドゥン(hodun〈一般民衆〉)と対応して用いられているが、同時にバグは高位・高官の階級の中の、第二次的階級、副王、副官、代理人の意味にも用いられた。…ハザルの神聖王(ハーカーン)を補佐する王、つまり国家の実務・実践の王はハーカーン・バフの他に、イシャー(Isha)、イーシャーフ(Ishah)、もしくはイリク(yilik)、イーレク(ilek)、シャド(shad,chad)などの別の名称で呼ばれた。
p.307
イブン・ルスタの伝えるイーシャーもしくはイーシャーズ(ishadh)は、おそらくアバ(aba)とシャド(shad)の合成語アブシャド(abshad)の変形であり、〈シャド・ハザル族のバフ(バグ)〉を意味する。シャド、シャス(shath)、チャト(chat,shat)は、ハザル族の王統を受け継ぐ血族集団に関する特殊名称と思われる。J・マルカルトは、これをイーシャーズ(ishadh)、アルシャド(al-shad,al-sad)と呼んだ(Marquart, J. [1903]24-47;Dunlop, D. M. [1954/1967]29,59,106n.)。また、イリク、イーレクについては、ヤークートがその名称を伝えており、カラハン(アフラースィヤーブ)朝代に用いられた称号イーレク・ハーン(Ilek-Khan)に同じであろう。因みに、イリクはトルコ語のイルク(ilk)で、〈第一の〉の意。
p.308
Z・V・トガン説では、クンドル(K-n-d-r)はマジャール語のキュンドュ(Kundu)、キュンダ(Kunda)に同じで、王族の称号の一つ。ザヤスコヴィスキーは、これをコンドゥル(kondur)と読み、〈首長、裁判官〉の意と解釈した(Togan, Z. V. [1939]260;Zajaczkowski[1947]33;Dunlop, D. M. [1954/1967] note 92)。しかし、これは前出のグッズ(オグズ)族の間で用いられた称号クーザルキーン(Kudharkin)に同じで、〈トルコ王の副王(khalifat malik al-Turk)〉の意(一一九頁)。
p.309
(10) ジャーウシーギル(Jawushighir)：ジャーウシュは、明らかにテュルク語のチャーウーシュ(chawush)、チャウシュ(ca'ush)に同じで、〈布告者、使者、前ぶれ、軍曹、軍の下士官〉の意(Dozy R. [1927]1/168-69;Redhouse, J. W. [1921]711;E. I. [1965]16)。おそらくチャーウシー・ギーラーク(chawushi-ghirak)、もしくはチャーウシェ・ギル(chawush-i ghir)と読み、〈軍司令官〉のこと。Z・V・トガンは、これをジャーウリシャギル(Jawlishagir)と読み、カラ・ハーン朝時代に用いられたジャウリー・ベク(Jawli Bek, Chawli-Bek)とジャグリー・ベク(Jagri Bek, Chagri-Bek)の二つの称号が合わさったものと考えた(Togan, Z. V. [1939]261)。ザヤスコヴィスキー説では、ジャラシュギリ(jarashgir)と読み、ヤラシュ(yarash, jarash)とギル(gir)の合成語で、〈満足する仲裁者、裁決者〉の意。一方、D・M・ダンロップは、正しくはチャーヴシュ・ウイグル(Chavush Uigur, Jawshyghr)のことで、おそらく〈ウイグルの隊長、元帥〉であると推測した(Zajaczkowski[1947]34-35;Dunlop, D. M. [1954/1967]38,111)。
p.311
当時、チーク材がはるばるインドからハザルまで運ばれていたことは、興味深い。
p.312
一説では、イティルをアストラハーン(Astrakhan)と同じ位置であるとするが、この説は受け入れ難い。…ヒジュラ暦三〇(六五〇)年頃、サルマーン(スライマーン)・ブン・ラビーア・アルバーヒリー(Salman [Sulayman] b. Rabi'a al-Bahili)の時代に、アラブ・ムスリム軍の攻撃を避けるため、ハザルの首都はカフカースに近いサマンダル(Samandar)からアーティル(アティル)に移された。
p.313
また別説によれば、ハザルの首都はアーティルの以前にはカフカースのバランジャル(Balanjar)にあった(al-Mas'udi, Murj., 1/211-12;al-Mas'udi, Tanbih.,62)。
p.331
そして、ハーミド・ブン・アルアッバースの補佐として宰相職を事実上代行したのは、ジャッラーフ家出身のアリー・ブン・イーサー・ブン・ダーウード・アルジャッラーフ('Ali b. 'Isa b. Da'ud al-Jarrah)であった。
ロシアで一般公開イベント「ウラル戦車フェスティバル」開催 約5000人が来場
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=159&from=diary&id=6257615
ロシア、ウラル山脈の東に位置するチェリャビンスク地域で2020年10月3日（現地時間）、地域住民との交流イベント「ウラル戦車フェスティバル」が開催されました。イベントではT-72B3Mなど現役の装甲戦闘車両のほか、第二次世界大戦終結75周年を記念して動態復元されたT-34戦車、IS-3戦車なども展示されています。
この「ウラル戦車フェスティバル・戦車町（タンコグラード）のパンツァー」は、地域住民と軍とが交流し、相互理解を深めるもの。日本での自衛隊駐屯地解放行事や航空祭と同じ目的の広報イベントです。
チェリャビンスクはロシア最大級の重工業地帯で、第二次世界大戦中はドイツ軍の侵攻により疎開した軍需工場が加わり、主力戦車のT-34やロケットランチャーなど数多くの兵器が作られました。中心都市のチェリャビンスクは「戦車の町（タンコグラード）」の別名で知られています。
イベントでは、T-72B3M戦車など現役の装甲戦闘車両に加え、大祖国戦争（第二次世界大戦の独ソ戦）終結75周年を記念して動態復元されたT-34戦車やIS-3戦車、ISU-152自走砲といった歴史的な車両20両以上が参加。静態展示で実際に乗ることもできます。
展示だけでなく、大祖国戦争当時の戦闘を再現する「リナクトメント（reenactment）」も実施。兵士らは再現された当時の軍服を着て、戦車とともに小銃を撃ちながら進軍する様子を実演しました。
このほかにも、戦車の卓越した操縦技術を見せる「戦車のバレエ」や、T-72B3M、BTR-80、BTR-80AMなどによる装備品パレードも行われました。来場者は戦車の華麗な動きに拍手を送ります。
また、会場には自衛隊の広報行事と同じく、志願者予備軍に対する説明会コーナーも開設されています。資料を前に募集官が説明する様子は、日本の自衛隊イベントと変わりませんね。
ロシア軍の発表によると、このイベントに来場した地域住民は約5000名とのこと。陸上自衛隊の駐屯地開放行事と変わらないくらいの人々が詰めかけたそうです。
＜出典・引用＞
ロシア国防省 ニュースリリース
Image：ロシア国防省
（咲村珠樹）
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