mixiユーザー(id:1833966)

2021年03月11日05:26

58 view

日本列島の山野に自生するクスノキ科のヤマコウバシはたった1本の母樹から生まれたクローンだった!

 単一ゲノムを持った植物は、クローン株と言い、有名な例にこれから花見の季節を迎えるソメイヨシノがある(写真)。
 これは、美しい花を大量に付けることから、人為的に栄養生殖で全国に植樹されたものだが、自然界でもクローンの株が単為生殖の結果、山野に自然に分布を広げた例のあることがこのほど、大阪市立大学、大阪府立大学、東北大学などの研究チームによって明らかにされた。

◎東北から九州まですべて同じ遺伝子構成
 山野に自生し、秋には美しく紅葉するクスノキ科のヤマコウバシ(山香ばし)である(写真=紅葉したヤマコウバシ)。漢字の和名のように、枝を折ると良い香りがする。
 研究チームは、全国のヤマコウバシがかつてたった1本の雌の木を始祖とするクローンであることを発見した。
 チームは、ヤマコウバシの親木や種子のサンプルを東北(宮城県)から九州(熊本県)にかけて広く集め、次世代シーケンサーによりDNA情報を解析したところ、種子の遺伝子型は母樹のものの正確なコピーとなっていた。そればかりか、日本中から広く集めたサンプル間で変異がほとんど見られないことも発見した。
 つまり日本中のヤマコウバシが、すべてが同じ遺伝子を持ったクローンであった。

◎日本列島ではすべて雌株だけ
 ちなみにヤマコウバシは、1本の木の花に雄しべと雌しべを持つ両性株ではなく、雄株と雌株が別々に存在する雌雄異株植物だ。雌雄異株植物として有名なのものに、街路樹に植えられているイチョウがある。
 実際、大陸に自生するヤマコウバシには、雄株と雌株がある。ところが日本では雄株は存在せず、雌株だけだった。そこで研究チームは、東北以南の全国のヤマコウバシを調べたわけだ。その結果が、ヤマコウバシは世界的にも極めて珍しい、直線距離にして1000キロを超える範囲に分布する大規模クローンだったわけだ。
 これは、日本のヤマコウバシという特異例のようで、近縁な雌雄異株種であるアブラチャン、クロモジ、ダンコウバイは、日本では雌雄両方の株が生育していて、同じチームのの調査で、自家受精や単為生殖を行わず、必ず雌雄の交配によって近交弱勢を避けていることが分かった。

◎絶滅せず、よくも全国に分布を広げられたものか!
 なぜこのようなことが起こったのか。
 単為生殖によってクローンの子孫を残す例は、動植物界でも広く見られる(16年8月22日付日記:「魚津の水族館で飼育するドチザメがメスだけで『出産』、ドチザメ初の単為生殖か;生物学」を参照)。
 極端な環境で周囲に異性株がない時、子孫を残すための窮余の策が単為生殖だが、出来た子や孫はすべて同一ゲノムとなり、環境変化や疾病に極めて弱い近交弱勢となりやすい。
 日本のヤマコウバシも、かつては雄株も存在していたのだが、何かの拍子で雄株が滅び、子孫を残すために雌株だけで結実する株が出来(写真=ヤマコウバシの実)、その実が鳥などに食べられて全国に広がったのだと思われる。
 それにしても絶滅せず、それどころか全国に分布を広げるなど、ヤマコウバシは生物のしぶとさを示す1つの例だある。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202103110000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(150):割り当てられた「ホテル」は枯れ木・枯れ枝を組み合わせたホームレスの的な小屋」

3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年03月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031