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2020年08月04日08:45

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『 イップ・マン 完結 』


うやく、『 イップマン 完結 』を観た。mackさんの日記に触発されてイップ・マンシリーズにのめり込み、近隣のシネコンではすでに上映が終わっていたのだが、ユーミ・ザ・ヘラートさんの後押しもあって川崎109へ遠征。やはり、劇場の大きなスクリーン、大音響で観るイップ師匠の活躍は格別だった。このような素晴らしい映画に邂逅できたことをお二人に感謝申し上げる。

 1964年、香港。イップ・マンは町の医師から癌であることを告げられ、化学療法を受けられる近代的な病院を受診することを薦められるが、同じ頃、次男チンが学校で喧嘩沙汰を起こしていた。校長と面談したイップ・マンはチンがこれまでもたびたび問題を起こしており退学処分が妥当であると通告される。校長はアクティブなチンにとって香港より、海外留学で思い切り力を試す方が良いのではないかと勧められ、折しも、弟子の李小龍(ブルース・リー)が出場する空手大会の招待券と航空券を手にしたことから、弟子の試合を観覧するついでに次男チンの留学先の学校を探すために渡米を決意する。サンフランシスコで李小龍の試合を観戦したイップ・マンは圧倒的な強さを見せる弟子の成長を喜ぶと共に、多くの弟子達から慕われ尊敬される李小龍の姿を誇らしく思うのだった。

 次男チンの留学先には地元の有名私立高校を選んでいたが、入学を認めてもらうには地元の名士の紹介状と中華総会の推薦状が不可欠で、イップ・マンは香港時代の友人に伴われ、中華総会に案内される。中華総会は地元で武館(道場)を開く中国拳法の師匠たちで構成されていた。香港時代の仲間であるロウ師匠は喜んでイップ・マンを会長ウー師匠他メンバーに紹介したが、彼らは必ずしもイップ・マンを歓迎しなかった。それは、中華総会のルールを破り、「 西洋人に中国拳法を紹介し指導する 」李小龍(ブルース・リー)の行為を不快に思っていたからだ。師匠として、李小龍の行為をやめさせるなら留学のための紹介状を書こうというウー師匠の申し出をイップ・マンは断るのだったが・・・。

 自分の命が燃え尽きようとしていることを悟ったイップ・マンが次男チンの留学先として相応しい場所であるかを見極めるために出かけた異国の地で、彼は新たなトラブルに巻き込まれていく。それは、移民としてアメリカを「 新しい故国 」と選びながらも根強い差別に苦しむ同胞達を救い、中国人としての誇りを守るための戦いであった。

 以下、ネタバレを含む。








 イップ・マンの異国での物語は、大きく二つの流れで展開する。ひとつは、イップ・マンが校長との面談のため訪れた有名私立高校で、白人の同級生たちから暴行されているところを彼が見つけて助けた女子高生ルオナンのパートだ。彼女はチアリーディング部のリーダーのポジションを勝ち取ったことで白人女子部員の嫉妬を買い、彼女の訴えで集まった男子高校生達から集団で暴行を受けていた。イップ・マンが仲裁に入ったことでルオナンがライバルの女子高生を突き飛ばし、ライバルは手にしたハサミで自らの顔を傷つけてしまう。自宅に泣き帰ったライバルは母親に「 同級生の中国人に襲われた 」と訴え、母親は夫に「 危険な移民達をこの国から追い出して!」と要求。移民局の幹部であった父親はルオナンの父親が中華総会の会長であることを知り、不法移民の罪をでっち上げて、中華総会メンバー全員を逮捕して国外退去処分にしようと企てる。

 もうひとつは、李小龍の弟子で海兵隊員の中国系アメリカ人ハートマン軍曹のパートだ。彼は李小龍の実践的な拳法を習得することは海兵隊の職務を遂行する上で助けになると考えて、将軍に中国拳法の導入を提案する。しかし、新兵教育係のバートン軍曹は「 空手こそ最強の徒手格闘技 」と信じていたため、ハートマンの動きが気に入らない。ハートマンが中秋節の日に中国拳法演武の撮影をして将軍にプレゼンテーションすると知ったバートン軍曹は空手の指導教官コリンを送り込む。演武のステージで中国拳法を叩きのめし、空手こそが最強の格闘技であることを証明するためだった。

 今回は「 殺しのプロ 」である海兵隊員の空手が相手で、対決シーンはこれまでとはかなり様相が異なっている。「 反則無視、相手が倒れるまで戦う 」実戦的なルールであることと、とにかく体格差・体力差が大きい。そうでなくとも、本作では今まで以上に寡黙なイップ・マンが描かれ、否応なく老いを感じるのだ。老境の上、身体は癌に蝕まれているので、さすがのイップ・マンも大苦戦である。倒されても倒されても、立ち上がるイップ師匠の姿には感動する。

 イップ・マンシリーズの魅力とは何か。一重に「 清廉にして高潔なドニー・イェン演じるイップ・マンの品格 」にあると言って良い。彼はこれまでも差別や不公正のために戦ってきたが、『 イップ・マン 完結 』には興味深い描写があった。それは、高校でいじめにあっていたルオナンを助ける際に鉄の扉に左腕を挟んで傷めてしまったイップ・マンがルオナンの父親ウー師匠と戦った時のことである。戦いの最中、左腕の痛みを気にするイップ・マンに気がついたウー師匠は「 古傷でも痛むのか 」と自分の左腕を背中に回し、片手でイップ・マンと相対したのだ。イップ・マンも傷めた左腕を背中につけ、二人は右腕と蹴りの応酬で戦った。対して、終盤。イップ・マンと戦ったバートン軍曹は彼が左腕を傷めていると気づくや、徹底的に左腕を攻撃する。バートンの執拗な攻撃を受けて、一度は倒れて動けなくなったイップ・マンだったが、再び立ち上がると怒涛の反撃に出る。そして、勝負が見えた時点でイップ・マンは止めを刺さずに寸止めをするも、バートン軍曹には彼の恩情は通じない。なおも攻撃を続けるバートンにイップマンは止めを刺すのだった。このあたりの対比が実に面白かった。

 これで、完結。イップ師匠の新しい物語を観ることができなくなるのは本当に寂しい。

 ありがとう、イップ師匠。 ありがとう、ドニー・イェン。
 そして、さようなら。


■過去日記「イップ・マン 葉問」
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