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2019年06月02日20:32

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単純な脳、複雑な「私」[読書日記728]

題名:単純な脳、複雑な「私」
著者:池谷 裕二(いけがや・ゆうじ)
出版:講談社
価格:1200円+税(2013年10月 第3刷発行)
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脳科学者の池谷裕二さんが、母校(静岡県立藤枝東高等学校)の後輩たちに講義した「『脳』と『心』」に関する講演をまとめた本です。
裏表意の惹句を引用します。
“最先端の脳科学を読み解くスリリングな講義
ベストセラー『進化しすぎた脳』の著者が、母校で行った連続講義。
私たちがふだん抱く「心」のイメージが最新の研究によって次々と覆されていく――。
「一番思い入れがあって、一番好きな本」と著者自らが語る知的興奮に満ちた一冊。”

目次を紹介しましょう。
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 はじめに
 第一章 脳は私のことをホントに理解しているのか
 第二章 脳は空から心を眺めている
 第三章 脳はゆらいで自由をつくりあげる
 第四章 脳はノイズから生命を生み出す
 おわりに
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各章から印象に残ったところを引用します。
【第一章 脳は私のことをホントに理解しているのか】から。
“赤ちゃんの脳はおおよそ400グラムくらい。それが成長とともに大きくなって、だいたいみなさん(高校生)くらいまでの年齢には大人の脳のサイズになって、それ以降は安定します。生まれてから3倍くらいの大きさになっています。
 ただし、それ以降でも、一部の脳部位はまだまだ成長することが10年ほど前に発見されました。大人になって成長する脳部位は2ヵ所ありまして、一つは前頭葉で、もうひとつは基底核だったのです。
 ということは、話をあえて卑近な例に引き寄せますと、私たちが学習したり、人生で経験したりすることの意義は、基底核、つまり「直観力」を育むという側面があるのではないか、と私は思いたいんです”(94p)。

【第二章 脳は空から心を眺めている】から。
“身体と魂の関係については、さらに仰天するような刺激実験がある。(略)
 (脳の)角回を刺激する。ベッドに横になっている人の右脳の角回を刺激するんだ。すると何が起こったか。
 刺激された人によれば「自分が2メートルぐらい浮かび上がって、天井のすぐ下から、自分がベッドに寝ているのが部分的に見える」という。(略)
 幽体離脱なんていうと、オカルトというか、スピリチュアルというか、そんな非科学的な雰囲気があるでしょ。でもね、刺激すると幽体離脱を生じさせる脳部位が実際にあるんだ”(190p)

【第三章 脳はゆらいで自由をつくりあげる】から。
“2003年にヒトゲノム・プロジェクトが完了した。ヒトのDNAは全部で30億塩基対あって、それがほぼ完全に解読された。
 そして、蓋を開けてみたら、ヒトの遺伝子は2万2000くらいしかなかった。これは専門家による予測よりはるかに少なかったし、他の動物との比較でいえば、ネズミとほぼ同じなんだ”(207p)

【第四章 脳はノイズから生命を生み出す】から。
“「脳」は身体の中ではエネルギー消費の多い臓器だ。重量でいえば、脳は体重のわずかに2%にすぎないけれど、エネルギー消費はなんと全身の20%以上になる。
 そんなデータを見ると「脳は大食漢である」かに思えるよね。でも具体的な数値で見ると、実際に使用しているのは、1日400キロカロリーにすぎないんだよ”(366p)

著者は本書の図や動画を特別サイトに挙げています。
http://bluebacks.kodansha.co.jp/books/9784062578301/appendix/

このサイトにある動画を紹介して締めくくります。
http://bluebacks.kodansha.co.jp/books/9784062578301/appendix/brain-move01/
[解説]
ピンク色の斑点が円状に整列している。1ヵ所が消えていて、それがグルグルと回転している。
しかし、中央の+印を凝視すると、ピンク色の斑点の上を緑色の斑点が回転しだす。
さらに+印を見続けると、ピンク色の斑点が目の前から消えてしまって、緑色の斑点だけが回り続ける。
とても不思議な錯視。(35p)

「そんなバカな」と動画を見に行って、本当にピンクの斑点は見えなくなった時には驚きました。
そして、著者が述べている「知覚されたら存在する」=「知覚されないものは存在しない」について、深く同意しました。

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池谷 裕二(いけがや・ゆうじ)※2013年時点の著者紹介
1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学系研究科准教授。
海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探求をつづける。
日本薬理学会学術奨励賞、日本神経科学学会奨励賞、日本薬学会奨励賞、文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。
主な著書に『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』(ともにブルーバックス)、『脳はなにかと言い訳する』(新潮文庫)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社)などがある。

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