去年の芥川賞候補にもなった古市憲寿著「平成くんさようなら」
この小説には、安楽死が合法化された日本に生きる平成生まれのカップルが出てくる。彼らはとってもクールで合理主義で、人と人の関係性さえデータや数値に置き換えるアスペルガー症候群的。そんないかにも平成生まれの若者アルアルの中にも、やっぱり感情のある人間なんだなとほっとする場面も出てくる。
基本はラブストーリーなのだが、安楽死という重いテーマについての問題提起が小説の核になっている。生と死をどうとらえるか。生きる目的なく生きながらえることに意味はあるのか。
ストーリーは今上天皇の退位が決定した一昨年あたりから始まって、元号が変わる今年の5月までの展開になっていて実にタイムリー。厳密には安楽死が合法化された日本ってのはＳＦになるのだが、彼らの日常に登場する事物やブランド名、著名人などの名前もリアルなので、あたかも現在進行形であるように感じられる。
ちょうど小説を読んだあとに、今回の人工透析をめぐる報道を知った。
「人工透析中止＝死」という認識の中、本人に意志決定させるのは安楽死を選ばせるのと同じようなシステムだなと思う。
自ら安楽死を選んだ場合であっても、時間が経過するうち、あるいは決行直前に恐怖のあまり？心変わりするということも大いにあり得る。
当該女性も、亡くなる直前に透析中止を撤回したい旨の意思表示をしていたという。だってまだ44歳。しかし透析再開は間に合わず亡くなったという。
小説では安楽死と自殺は同義語のようなものだと表現していたが、長寿と貧困が蔓延する今の日本に、決して避けては通れないテーマだと思う。
■人工透析せず死亡、他にも複数 福生の病院、都が調査
(朝日新聞デジタル - 03月08日 12:06)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5529066
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